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暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。
番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、
印象に残った“推し”をコレクションしていきます。

青木源太・足立梨花 Sunday Collection

暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、印象に残った“推し”をコレクションしていきます。

2023.10.29

未来に続く! 日本ASEAN友好協力50周年



今でこそ、身近な存在となっている東南アジアの食や観光地ですが、そこに至るまで様々なストーリーがありました。
今回は、「未来に続く! 日本ASEAN友好協力50周年」というテーマで深掘りしました。


青木  「ASEAN」という言葉はニュースなどでよく聞きますね。
Association of Southeast Asian Nationsの頭文字をとってASEAN。
日本語では「東南アジア諸国連合」と言い、東南アジア地域の平和と経済成長を目的として1967年の8月に設立されました。
当初の加盟国はインドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、シンガポールの5か国でしたが、その後、ブルネイ、ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジアが加盟して、現在は10か国です。
足立さんは、東南アジアのこれらの国々に対して、どんなイメージを持っていますか?

足立  私は、写真集の撮影でフィリピンに行ったりするんですが、きれいな海がいっぱいあるので、観光で行くイメージがあるのと、食べ物については、タイカレーやシンガポールライス、ベトナムの生春巻きやフォーとか、結構、好きな人も多いですよね。コンビニでも売っていますし、馴染んできていますよね。
なので、観光地としても、食の文化としても身近だと思います。

青木  各国のレストランも、東京のみならず、地方都市に行ってもありますもんね。
日本の食文化に溶け込んでいますよね。
また日本は料理だけでなく、多くの食材も東南アジア各国から輸入していますよね。
例えば、日本が輸入しているバナナやパイナップルの、およそ8割から9割はフィリピン産、エビのおよそ4割は、ベトナム、インドネシア、タイからの輸入です。

足立  スーパーで、フィリピン産、インドネシア産を見掛けるのは日常ですよね。

青木  お菓子やインスタント食品などに幅広く使われているパーム油も、ほぼ、ASEAN諸国からの輸入です。
それから、「食」以外では、タイヤや日用品などに使われる天然ゴムもそうですし、ちょっと意外なところでは、ドライヤーや冷蔵庫、エアコン、電子レンジなどの家電製品の輸入も近年は増えているそうですよ。

足立  それは意外でした。
こうして改めて聞くと、私たちの暮らしの中のASEAN率、とっても高いですね。
逆に、ASEAN各国の方々にとって、日本はどうなんですかね?
身近に感じてくれているのか気になるところです。

青木  もちろん、身近に感じてくれているようで、やはり日本の漫画や、アニメなどのポップカルチャーは大人気ですし、それがきっかけになったかたも多いかもしれませんが、日本語を学びたい人も非常に多いそうです。
2022年にASEAN諸国で行われた世論調査では、9割以上が日本と「友好関係にある」、日本は「信頼できる」、という回答だったそうですよ。

足立  それはうれしいですね!
でも、漫画やアニメ人気だけで、信頼してくれているわけじゃないですよね?

青木  そうなんです。日本とASEAN諸国が現在のような友好関係にあるのは、50年という長い歴史の中で、お互いに協力し合い、関係を深めてきたからなんです。
ここからはスペシャリストに伺っていきましょう。
外務省アジア大洋州局地域政策参事官の富山未来仁さんです。

足立  富山さん、今年は「日本ASEAN友好協力50周年」ということですが、仲良くなるきっかけがあったんですか?

富山  はい。日本とASEANの関係は、1967年のASEAN設立からまだ間もない1973年に、合成ゴムの輸出問題をめぐり、対話を始めたのがきっかけです。
実は、日本が世界で初めてASEANと対話を開始した国なんです。

足立  そうなんですか?

青木  少し歴史を振り返りますと、西欧諸国を中心とした国々による植民地支配の波は、19世紀にアジアにも押し寄せ、ASEAN諸国も、タイを除いて例外ではありませんでした。そしてASEAN諸国は、第二次世界大戦後、独立を果たします。
その後、東西冷戦を背景に、地域で協力する動きが活発になり、ASEANが設立しました。
ASEANとの対話が開始された当時、ASEAN側は、戦後日本の経済的影響力の急速な拡大を脅威と感じていたようですね、富山さん。

富山  当時はそういった感情もあったと思います。
しかし1977年、当時の福田赳夫総理が東南アジア諸国を歴訪して、他国に先駆けて日本ASEAN首脳会議を開催し、最後の訪問地フィリピン・マニラで福田総理は、「日本は軍事大国にならない」「ASEANと『心と心の触れあう』関係を構築する」「日本とASEANは対等なパートナーである」という三つのASEAN外交原則を明確に示しました。

足立  ASEANにとっては、日本が対等に話し合える初めてのパートナーになったんですね。

富山  そうなんです。これをきっかけにして、日本はASEANにとって最も重要な対話国の一つとなって、過去50年にわたりアジア太平洋地域の平和と安定、発展と繁栄のために、緊密な協力関係を築いているんです。この良好な日本ASEAN関係は、日本の平和・繁栄のために不可欠ですし、今、お互いが共通して抱える気候変動やデジタル化、AIをめぐる課題などに取組む上でもとても重要なものです。

青木  足立さん、この写真を見てください。
これは、カンボジアの通貨である500リエル紙幣なんですけれども、何か気付きませんか?

足立  大きな橋が真ん中にあって、右側の下の方に日の丸がありますね。

青木  そうなんです! カンボジアのお札には日本の国旗が描かれているんです。
何故かというと、この紙幣には、二つの橋が描かれていますよね。
実は、日本がODA・政府開発援助を通じて、技術や資金を援助して造った橋で、「きずな橋」「つばさ橋」と日本語の名前で呼ばれるほど親しまれているんですよ。

足立  現地でも「きずな橋」「つばさ橋」と日本語で呼ばれているんですか! それはすごい!

青木  それぞれメコン川に架かる橋なんですが、「つばさ橋」の方は、ベトナム、カンボジア、タイを結ぶ国道1号線の橋で、この道路は、東南アジアの経済発展に、非常に重要な役割を担う路線にも関わらず、以前は、メコン川により分断されていて、フェリーでしか渡る手段がなかったんです。
そのため、繁忙期にはフェリーに乗るまで7、8時間待ちのこともあり、非常に不便だったんですが、「つばさ橋」のお陰で、わずか5分で渡れるようになりました。

足立  8時間と5分の差は大分ありますよね!

青木  経済発展につながりますよね。
日本は他にも、カンボジアの世界遺産である「アンコール・ワット遺跡群」の保存や修復に、資金や技術の支援を行っています。単に資金を援助するだけでなく、カンボジアの方々と一緒に修復活動を行うことで、遺跡を守るカンボジア人の専門家の養成も行い、遺跡の保存と修復に貢献しているんです。

足立  専門家を養成するって、橋のように分かりやすく目に見えるものではないですが、着実にASEANの成長につながることですよね。

青木  そうですね。ここからは、あまり知られていない日本とASEANの協力事例や交流についても、深掘りしていきます。

足立  富山さん、日本とASEANの協力事例、他にはどういったものがあるのか教えてください。

富山  はい。今から10年前、日本ASEAN友好協力40周年に当たる年に、日本とASEAN諸国は、改めて協力関係を深めて行くことを表明し、様々な取組を進めてきました。その一つが、国際交流基金による「HANDs!プロジェクト」です。
このプロジェクトは、防災・環境教育に関心を持つ各国の若者を、「未来の防災」を背負って立つ人材に育てる研修事業です。

青木  アジアはその気候や地形の特性上、世界のおよそ3分の1の自然災害が発生する地域です。災害件数はこの10年で1,350件を超え、およそ16億人を超える人が被災しています。ところが、地域によっては避難訓練さえなく、災害に立ち向かう術を知りません。こうした状況を踏まえ、自然災害対策を国や地域ごとだけで行うのではなく、アジア全体の課題としてとらえ、知識を共有し、さらに、人々が興味を持つような手法で伝えていこうとスタートしたのが、「HANDs!プロジェクト」なんです。

富山  2014年から17年の4年間にかけて、毎年およそ25人の若者を選抜し、フィリピン、インドネシア、タイ、日本で研修プログラムを実施し、彼らが帰国後に企画・実施した13件の事業などを支援しました。
この研修事業で育成した若者はおよそ100名。
国や言葉、バックグラウンドに捕らわれず、防災・減災のユニークなアイディアをいくつも生み出し、着実にアジア各国に防災教育を根付かせています。

足立  自然災害から身を守るには事前の備えなどの知識が必要ですから、アジア全体で防災教育を充実させることは、とても意義のあることですね。

青木  富山さん、他に同じく国際交流基金による「日本語パートナーズ派遣事業」というものもありますよね。

富山  はい。「日本語パートナーズ派遣事業」は、日本語教育が行われているアジアの国々に日本人を派遣し、現地校の授業をサポートする取組です。
2014年から現在までに、東南アジアの国々を中心に、台湾、中国なども含む12の国と地域に、およそ2,800名の日本語パートナーズを派遣しています。

足立  どういったかたが日本語パートナーズとして派遣されるんですか?

富山  日常英会話ができることなどの要件はあるんですが、広く一般から公募され、日本語教育の知識や経験は求められません。応募は大学生などの若者も多く、書類や面接による選考を通過すると、4週間ほどの派遣前研修を経て、1年未満派遣されます。

足立  日本語教育の知識や経験は必要ないんですね。

青木  そうなんです。日本語パートナーズは、現地の中学や高校に派遣されて、現地の日本語教師のサポートをするのが大前提なので、専門知識は必要ないんです。

足立  では、日本語パートナーズに期待されているのは、どういうことなんですか?

青木  それは、「生きた言葉と文化を届けること」ということですよね、富山さん。

富山  はい。言葉や文化は人から人、口から口へと伝えることが大切です。
今はインターネットを活用すれば、日本から日本語を教えることは容易にできます。
でも、やはり生身の日本のかたが現地の学校で言葉や文化を教えれば、その人の人となりを含め、日本らしさをリアルに伝えることができます。

足立  確かに、実際に交流すれば、日本人の国民性のようなものが自然に伝わりますね。

青木  逆を考えてもそうですよね。私たちが海外の国のことを知りたいときに、その国のかたと話をするということは大きいですよね。

富山  また、例えばインドネシアなどは、国土が広く島が多いため、地域による教育格差の問題を抱えています。その点、日本語パートナーズは、各地の島や地方にも派遣されるので、現地の人々にとって貴重な存在なんです。

青木  日本語パートナーズのメリットは、現地だけでなく、日本にもありますよね。

富山  はい。
日本語パートナーズのミッションには、現地の言語を習得し、文化を理解して、帰国後にも継続してその経験を広く発信することも含まれます。
帰国後に、技能実習生として派遣先国から来日する方々をサポートする会社に勤めているかたもいます。来日した彼らとスムーズに会話できるのも、彼らにどのように日本語や日本文化を伝えれば良いのかが分かるのも、現地の人や文化への理解を深めたお陰だそうです。

足立  来日した方々の日本での勉強や暮らしが、スムーズにいくようにサポートしてもらえるのは、私たちにとっても大きなメリットですね。
この日本語パートナーズ派遣事業は今後も続いていくんですか?

富山  はい。
国際交流基金の宣伝ばかりとなりましたが、こうした「心と心」の交流は、日本語パートナーズだけではありません。
例えば外務省は、アジア大洋州の国・地域の優秀な若者に、日本に対する関心と理解を得てもらうため、「JENESYS(ジェネシス)」という交流事業も行っており、2007年以来、4万7,000人の日本とASEAN諸国の若者が参加しています。
日本とASEAN諸国の緊密な関係の基盤となってきた活動を、今後も更に推進していきたいと考えています。

富山  今年は日本ASEAN友好協力50周年の節目の年です。
12月16日から18日までの3日間は、東京で日本ASEAN友好協力50周年特別首脳会議が実施されます。この会議では新たな協力のビジョンを共同で打ち出し、関係を更に強化していきます。ASEANとのつながりを高めるため、政府だけでなく、一人一人の皆様がASEANの人々とふれあい、共に課題に取り組み、新しいものを作っていくことが最も大切だと思っています。是非、この機会に、改めてASEAN諸国について理解を深めていただければと思います。

足立  学校で習ったはずなんですが、今日、改めて話を聞いて、「ASEANにとって日本が対等に話し合える初めてのパートナーになった」ということに驚きました。だからこそ50年間も友好関係が続いたこと、そして良い関係が今も続いていることに気付いて、うれしい気持ちになりました。

青木  私は、未来に向けてということで、12月16日から18日までの3日間、東京で日本ASEAN友好協力50周年特別首脳会議が実施され、新たな協力のビジョンを共同で打ち出し、関係を更に強化していく。
50周年を迎えましたが、この先60周年、80周年、100周年と、この深い関係がずっと友好に続いてほしいですね。


【 関連リンク 】
・パンフレット「日本とASEAN」 / 外務省
 https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/pub/pamph/j_asean.html

・日本ASEAN友好協力50周年特設ページ / ASEAN日本政府代表部
 https://www.asean.emb-japan.go.jp/itpr_ja/special-page.jp.html