暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。
番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、
印象に残った“推し”をコレクションしていきます。
暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、印象に残った“推し”をコレクションしていきます。
より良いモノや食品を一目で確認できるJASマークに新たな表示ができました。
今回は、「定番だけじゃない! 多様化するJASの世界」というテーマで深掘りしました。
青木 JAS(ジャス)はJapanese Agricultural Standardsの頭文字をとってJAS。
日本語では日本農林規格と言います。足立さんもJASマークは知っていますよね?
足立 もちろん、知っています。丸にアルファベットでJASと書いてあるマークですよね。いろんな食品に付いてますよね。
青木 そうですね。ただ、食品だけではないんです。
JASマークは、住宅などに使われる木材製品や畳の表面に使われる畳表、レストランの看板などに付いているものもあるようです。
足立 そうなんですね。知っているつもりだったけど、私もまだまだですね。
青木 JASというのは、食品や飲料、油、農産物、林産物、畜産物、水産物、こういった製品の品質や成分などの基準を、農林水産大臣が定める国家規格です。
国が認めた第三者機関がチェックして認証されると、その証として、製品にJASマークを表示することができます。
では、足立さん、ここに「ウインナーソーセージ」と「フランクフルトソーセージ」があるとします。
その違いは何だと思いますか?
足立 難しいですね。「ウインナーソーセージ」と「フランクフルトソーセージ」の違い。
色ですか? 「ウインナーソーセージ」の方が濃い色をしているイメージです。
青木 答えは、「太さ」又は「使われている腸の種類」なんです。
ソーセージは、家畜の肉などを加工してひき肉にし、調味料などを加えて練り合わせ、家畜の腸などに詰めて調理したものです。
その代表的なものが「ウインナーソーセージ」と「フランクフルトソーセージ」で、ウインナーは、羊の腸を使用したものか、製品の太さが2センチメートル未満のもの。
フランクフルトは、豚の腸を使用したものか、製品の太さが2センチメートル以上3.6センチメートル未満のものです。
ちなみに、「ボロニアソーセージ」というものもありまして、こちらは牛の腸を使用したものか、太さ3.6センチメートル以上のものです。
足立 こんなに細かく決められているのは初めて知りました。太さの違いだけじゃなく、詰める腸の種類にも違いがあるんですね。
青木 そうなんです。このように、種類ごとに材料などが定義されていると、国内市場に出回る食品・農林水産品の品質や仕様を一定の範囲や水準にそろえることができますよね。それでJASができたんです。
足立 いつ頃からあるんですか?
青木 JASに関する法律が初めて制定されたのは、戦後5年がたった1950年です。
戦後間もない頃は市場に粗悪品が出回っていたため、それらを排除し、品質を一定の範囲にそろえる平準化が求められていたんです。
足立 つまり、私たちが安心してお買い物ができるようにJASができて、JASマークが表示されるようになったんですね。
青木 法律が制定された当初の目的はそうだったんです。
でも、その後、時代は変化し法律は改正を繰り返し、JASは徐々に進化しました。
今では、平準化を目的とするJASだけでなく、農薬や化学肥料に頼らない作り方をした食品などを対象とする「有機JAS」や「特色JAS」も登場しているんです!
足立 特色JAS?
青木 初めて聞く言葉がでてきましたね!
ここからは、農林水産省 大臣官房 新事業・食品産業部 食品製造課 基準認証室長 進藤友寛さんと一緒に深掘りしていきます。
足立 進藤さん、有機JASは分かりますけど、特色JASって、何ですか?
進藤 時代に合わせた法律改正によって、JASの対象は「品質・仕様」だけでなく、「製品の生産や流通プロセス」「事業者による製品の取扱方法」「事業者の経営管理の方法」などにも拡大しました。
例えば令和2年に制定した、持続可能性に配慮した「たまご」と「とりにく」についてのJASは、国内品種の鶏(にわとり)に、国産の米をエサとして与えることで海外依存度を下げるとともに、鶏のふんを肥料として活用するなど、「たまご」と「とりにく」が国内で持続的に生産できるよう配慮した規格です。
また、ヘルシー志向の方などに人気の大豆を肉のように加工した「大豆ミート食品類」などもあります。
つまり、特色JASとは、このような高い付加価値やこだわりのある製品を対象にした、特色のある規格のことを言います。
足立 なるほど。もしかしたら無意識に、スーパーなどで手に取っているかもしれないですね。
進藤 規格に適合していると認証されれば、その内容が一見して分かる標語付きの特色JASマークを表示することができます。この5年で新たに30の規格が制定されており、そして、認証される事業者も増えてきていますので、製品をお店で手に取る機会など、目に付く機会も多くなってきていると思います。
青木 このほかには、例えば「製品の生産プロセス」の特色JASに、「熟成ソーセージ類」というものがあります。
具体的には、熟成ソーセージの定義はソーセージとほぼ同じ内容なんですが、これに加え、「原料の肉を低温で3日間以上熟成させること」という生産方法の基準が設けられたんです。
そして、認証された事業者が、この基準に従って製造した熟成ソーセージには、こちらの特色JASマークを表示できるんです。
足立 今、目の前に特色JASマークがあるんですが、定番の丸JASマークと違って、富士山と太陽を組み合わせたデザインにJASの文字が書いてあって、そのマークの右下に「熟成」と書いてあります。
このマークが表示されていれば、国が品質やこだわりの作り方を認証した熟成ソーセージということなんですね。
青木 この特色JASマークにもこだわりがありそうですよね。
足立 でも、どうして新しい特色JASマークを作ることになったんですか?
進藤 はい。先ほども話題に上っていましたが、JAS法がスタートした当初は、「食品・農林水産品の品質の平準化」、これがJASの目的でした。
しかし、70年ほどたった今、品質はおおむね向上していて、市場のニーズは品質以外の価値や特色にまで多様化しています。
青木 また、積極的な海外展開が求められている今、事業者は、食文化や商慣習が異なる海外の取引相手に、馴染みのない日本産の製品の品質や特色、事業者の技術や取組などを説明し、証明する機会も増えているといいます。
進藤 そのため、これからのJASは、食品・農林水産分野の競争力強化に向けて、事業者や産地の創意工夫を活かして、多様な価値・特色を戦略的に見える化し、差別化にも活用しやすい枠組みにしていくことが必要です。
こうした背景の中で、様々なJASを作ることができるようにしました。
足立 つまり、事業者などの創意工夫を、国内や海外の消費者やバイヤーなどにアピールしやすくするために、特色JASなどの様々なJASが誕生しやすくなったってことですね。
青木 そうなんです。そして2017年の法改正では、JASの対象を拡大しただけでなく、さらに、事業者や団体などが、新たなJASを提案しやすいように、手続きの整備も行ったんですよね。
進藤 はい。それにより、先ほどもお話しましたが、この5年で新たに30規格が制定されておりまして、JASは現時点で従来の規格と合わせて92規格あります。
足立 新しい規格、どんなものがあるのか、気になりますね。
青木 ここでは、新たに制定された特色のあるJASをピックアップして深掘りしていきます。まずは、こちら!
「ベジタリアン・ヴィーガンJAS」
足立 ベジタリアンやヴィーガンの方に関係するJASができたんですね?
青木 そうなんです。ベジタリアンやヴィーガンの方は、欧米諸国を中心に毎年増加傾向にあるそうで、2018年度は訪日外国人およそ3,000万人のうち、167万人ほどがベジタリアンやヴィーガンでした。ところが、日本には専門店がまだ少ないんです。
それに、食材を変更してもらいたくても、柔軟に応えてくれる飲食店は少ないそうで、こうしたことが課題になっていたんです。
足立 日本観光を楽しみたくても、食事のことがネックになって、思う存分観光できないケースもあったかもしれませんね。
青木 そこで、ベジタリアン料理やヴィーガン料理を提供するお店をすぐに見付けられるように、インバウンドを見据えた規格として、「ベジタリアン・ヴィーガンJAS」が制定されたんですよね、進藤さん。
進藤 はい。これはベジタリアン料理やヴィーガン料理を提供する飲食店を対象として、その管理方法を定めたJASです。規格の内容を簡潔にご紹介しますと、「使用してはならない食材や添加物」「ベジタリアンやヴィーガンに適さない食材や添加物の混入を防ぐ対策」「情報の提供方法」などを、明確に規格化しているんです。
足立 情報の提供って、具体的にはどんなことですか?
進藤 一口にベジタリアンやヴィーガンと言っても、食べられる食材はまちまちです。
そのため、料理に使われている食材や添加物について、お客さんにしっかりとお伝えすることなどを定めています。
足立 なるほど。それなら、お料理を選びやすいですね。
進藤 飲食店が認証されると、ベジタリアンやヴィーガンなどと書かれた特色JASマークを、お店の看板やメニューなどに表示することができます。
それにより、ベジタリアンやヴィーガンの方々にとっては、お店を探しやすくなると思いますし、逆に飲食店の方は、ベジタリアンやヴィーガンの方々にお店の特色をアピールしやすくなります。
青木 是非、飲食店の方々には、積極的に「ベジタリアン・ヴィーガンJAS」の認証を取得してほしいですね。
では、もう一つ、新たな特色JASをご紹介しておきましょう。
それは「ノウフクJAS」です!
足立 ノウフクって、農福連携のことですか?
この番組でも取り上げたことがありますね。
青木 はい。農福連携とは、障害のある方が農業分野で活躍することを通じて、自信や生きがいを持って社会参画を実現していく取組のことです。
農福連携に取り組むことで、障害者の就労や生きがいづくりの場を生み出すだけでなく、担い手不足や高齢化が進む農業分野において、新たな働き手の確保につながる可能性もある取組です。
足立 どちらにとってもWin Winな素晴らしい取組だなと思った記憶があります。
青木 そこで、ノウフクの取組を多くの方に知ってもらうことを目的として、ノウフクJASが制定されました。
進藤 ノウフクJASは、障害者が携わって生産した農林水産物や、これらを原材料とした加工食品の生産方法の基準を定めた規格です。
例えば、「主要な生産行程に障害者が携わっていること」や「障害者が携わった主要な生産行程を回答できること」などの基準が定められています。
青木 事業者が認証されると、その事業者が、基準に基づいて生産した農作物や製品などに、カタカナで「ノウフク」と書かれた特色JASマークを表示することができます。
進藤 これにより、障害者が生産に携わった食品であることが一目で分かるので、人や社会、環境に配慮した消費行動、いわゆるエシカル消費を望む方々の商品選びに役立てていただくことができます。
足立 私たちがノウフクJASの表示があるものを積極的に購入すれば、農福連携の取組を応援することにもつながりますし、普及の後押しもできますよね。
青木 そうですよね。ですから、スーパーなどでノウフクJASマークを見付けたときには積極的に手に取ってほしいですね。また逆に、農福連携の取組をされている事業者の方々には、積極的にノウフクJASの認証を取得していただきたいです。
進藤 JASは、食品や農林水産品の品質や生産方法などの特性を、適切に評価するための国家規格です。
事業者にとっては製品の品質やこだわり、特色のある取組などをアピールすることに役立ちます。また、消費者にとっては「確かなもの」「求めているもの」を購入する際の判断基準として役立ちます。
是非、進化しているJASについて理解を深め、暮らしに役立てていただければと思います。
足立 今日の話を聞いて、普段の生活の中で特色JASを意識していなかったことに気付きました。特色JASは、高い付加価値やこだわりのある製品を対象にした特色のある規格ということで、見付けてみたいなと思いました。
青木 私は、今日いくつかご紹介した特色JASの中でも特に気になったのがノウフクJASです。農福連携は、障害のある方の社会参画を実現していく、素晴らしい取組のことですので、このノウフクJASの表示があるものを積極的に購入して、農福連携の取組を応援したいなと思いました。
【 関連リンク 】
・JAS / 農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/jas/