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暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。
番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、
印象に残った“推し”をコレクションしていきます。

青木源太・足立梨花 Sunday Collection

暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、印象に残った“推し”をコレクションしていきます。

2023.07.23

森のある暮らしを守る! 森林環境税



私たちに多くのことを恵んでくれる森林。その森林を支え、守るのは、私たちです。
今回は、「森のある暮らしを守る! 森林環境税」というテーマで深掘りしました。


青木  日本は国土面積のおよそ7割が森林である森林国であるということは、足立さんも、よくご存知ですよね。

足立  はい。確か、世界でもトップクラスなんですよね。

青木  そうなんです。国土面積に占める森林面積の割合、これを森林率と言いますが、日本の森林率の高さを示す一つの指標を紹介すると、ヨーロッパ諸国を中心に、日本やアメリカを含めた先進国38か国が加盟する国際機関である「OECD」、これは経済協力開発機構と言いますが、これらの加盟国38か国中、日本の森林率は、フィンランド、スウェーデンに次いで、第3位なんです。

足立  すごい!

青木  北欧は緑豊かなイメージがありますが、そこに次いで第3位なんです。
日本を語るときに「日本が世界に誇るもの」として「漫画」「アニメ」「ラーメン」などが話題になることがありますが、私は「森林の多さ」、これも、世界に誇れるものだと思うんですよね。

足立  確かに。森林があることで私たちは様々な恩恵を受けていますもんね。

青木  そうなんです。以前、この番組で森林が持つ機能についてご紹介したので、覚えている方もいらっしゃると思いますが、改めて簡潔にご説明をします。
森林には「地球温暖化防止」「災害の防止」「生物多様性の保全」などに役立つ機能が備わっています。
例えば、木が土の中でしっかりと根を張ってくれるので、大雨のときなど、土砂が流れ出したり崩れたりするのを防いでくれます。
また、雨が土の中にゆっくりと浸み込むため、川の水が急激に増えるのを抑えるダムの役割も果たします。

足立  私たちがおいしいお水を飲めるのも、森林のお陰なんですよね。

青木  そうですね。森林の土壌は、スポンジのように小さな穴が無数にあり、そうした土壌の隙間や岩の割れ目を水が通るうちに、きれいに「ろ過」され、そこに適度なミネラルも溶け出して含まれていくので、おいしい水になるんです。

足立  こうした様々な役立つ機能がある森林が、国土面積のおよそ7割もあるんですから、これは、まさに、日本の強みですよね。

青木  ところが、近年は、整備が行き届かず、機能が十分に発揮されない森林が増えています。主な要因は「林業の採算性の低下」「担い手不足」「所有者の世代交代」などです。
つまり、安い輸入木材との競合により、長期にわたり国産の木材価格が低下して、収益が上がりづらいこと、こうした状況などから林業の魅力が十分に伝わらず、担い手が増えないこと、また、所有者が整備をしていなかったり、市町村などが手入れをしたくても、所有者が分からず連絡が取れず手入れできないこと、こうしたことが要因となり、手入れ不足の森林が増えてしまっているということです。

足立  つまり、せっかくの森林の強みである機能が、十分に発揮されていないということなんですね。
例えば、それによって土砂災害や洪水が起こってしまったらと考えると不安になりますね。

青木  そうですよね。そこで、新しく始まるのが森林環境税なんです。
ここからは林野庁 森林利用課 森林集積推進室長の城 風人さんと一緒に深掘りしていきます。

足立  早速ですが、城さん、「森林環境税」というのは、どういうものなんですか?

   はい。森林環境税は2019年度に創設された新しい税の仕組みです。
来年度、2024年度から、国内に住所がある方で、一定の所得を得ている方、一人当たり年間1,000円の課税となり、住民税と併せて徴収される仕組みとなっています。

足立  目的は、先ほどからお話している森林の整備のためですか?

   はい。先ほど青木さんから森林には様々な機能があるとご紹介いただきましたが、国土を災害から守るといった機能や、二酸化炭素を吸収してくれるなどの森林の持つ多くの機能を発揮させるためには、森林を適切に整備する必要があります。
また、日本国として、2015年にフランスのCOP21で採択された「パリ協定」においても、温室効果ガス排出の削減とともに、森林による吸収量を確保することに合意しています。

足立  温暖化防止も、とても大事ですもんね!
しっかり、適切に整備して、森林が持つ様々な機能を十分に発揮してほしいです。

   はい。こうした森林整備などに必要な地方財源を安定的に確保するため、2019年に「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」が成立し、国民の皆様に等しく負担を分かち合っていただくものとして森林環境税が創設されました。

青木  この森林環境税は、国が徴収することになるんですが、その後、国から、「森林環境譲与税」という名称で都道府県と市区町村に配分されるんです。
国として集めた税金を、都道府県と市区町村に配分する、「譲る」に「与える」と書いて「譲与」、つまり「譲与する」ことから、「森林環境譲与税」という名称になっているんです。
課税は来年度から始まるのですが、別の財源を活用して、現在すでに、各地で様々な取組が進められているんですよね、城さん。

   はい、森林環境税は今後「森林の整備」や「人材育成」「木材利用・普及啓発」の取組などに活用されることになっていますが、災害の防止等の観点から、森林整備を一層促進するため、都道府県と市区町村では先駆けて取組が進められています。

足立  そうなんですね! 例えば、どういった内容の取組が行われているんですか?

   例えば、伐採跡地などに樹木を植える「植栽(しょくさい)」、その植えられた樹木の生育の妨げになる草木を刈り取る「下刈り(したがり)」、樹木同士の過密さを防いで適切に日光が当たるように一部の樹木を伐採する「間伐」、そして、これらの作業に必要となる林道の整備など様々な取組が行われ、2019年度から2021年度までの3年間で、全国で約5万5,000ヘクタールの森林の整備が行われました。
今後、より一層、森林整備が進むことが期待されます。

青木  ちなみに、5万5,000ヘクタールといえば、例えるならば、東京23区の面積に相当する規模なんです。

足立  東京23区の面積といえば広く感じますけど、日本全体として考えると、まだまだ、そのくらいなんだな、とも思ってしまいます。
今後、もっと進めていかなくちゃいけないことですね。

青木  そうですよね。
さて、ここからは、先駆けて取組が始まっている「人材の育成」「木材利用・普及啓発」の事例を、さらに深掘りしていきましょう。

足立  城さん、どんな取組事例がありますか?

   はい。例えば、徳島県では、即戦力となる若手林業就業者を養成する「とくしま林業アカデミー」の運営経費への補助を行ない、研修に必要な林業機械のリース代などに活用されています。

青木  この「とくしま林業アカデミー」の研修カリキュラムは、現場で即戦力となることを目指した「現場力重視」のカリキュラムとなっており、例えば、「高性能林業機械シミュレーター」を活用した研修も行われているんです。

足立  高性能林業機械シミュレーター? 初めて聞きますが、それは何ですか?

青木  パイロットが飛行機の操縦技術を習得するために、実際に飛行機を操縦せずにシミュレーターの設備で練習するように、林業従事者となることを目指す生徒たちも、この高性能なシミュレーター設備、よりリアリティさを出すための3画面のモニターにもなっているんですが、これを見ながら、林業には欠かせない機械の操縦方法などを習得するんです。

   林業と言うと、力仕事のイメージが強いですが、今は機械化、いわゆる「スマート林業」化が進んでいまして、機械を上手に扱う技術が求められているため、研修では、こうしたシミュレーターも活用しているんです。

青木  この「とくしま林業アカデミー」の卒業生は、これまで全員が県内の林業事業体へ就職していて、卒業生の求人倍率は、なんと3倍を超えているんです。

足立  すごいですね。求人倍率3倍! 林業業界として、優秀な働き手として大注目しているんですね。これまでの人材育成の成果ということですね。

   そうなんです。また、近年は林業でもドローンを活用することが多く、ドローンの操作技術などを研修に盛り込んでいる県や、林業への就職を希望される方の受け入れ体制を強化するために、例えば、村が空き家を改修して林業従事者の居住用に貸し出すといった取組もあります。

足立  人材を育成するだけではなくて、林業従事者が暮らしやすい環境を整えることも、人材を持続的に確保する上で欠かせないことですもんね。
では、木材の利用や普及啓発の取組には、どんな事例があるんですか?

   木材利用・普及啓発については、都市部を中心に全国のおよそ4割の市区町村が取組を行い、公共建築物に積極的に木材の使用を進めるなど、様々な工夫が行われています。
例えば、青森県大鰐町では、出産のお祝い品として、木製品を贈呈する事業を実施しており、これまで、こどもが生まれたご家庭87世帯に、町内の木材加工場で制作された木のお椀とお箸をセットにして贈呈しました。

青木  実は、この事業の素晴らしい点は、出産のお祝いの品に木材が利用されたというだけではないんです。
ある「ねらい」があるんですよね、城さん。

   そうなんです。幼い頃から木材の食器を使えば自然に木に親しみを持ち、大人になってからも木材を積極的に利用してくれることが期待できるんです。
これは、「木」と「育む」と書いて「木育」と呼ばれている取組で、こどもから大人までを対象に、木材や木製品への触れ合いを通じて木材への親しみを育んでもらうことで、木材利用・普及啓発につなげる取組です。

青木  ちなみに、今ご紹介した木のお椀とお箸には、愛着を持ってもらえるようにと、経年変化で色艶が増すと言われるオオヤマザクラを使用し、家族それぞれの名前と町のマークが刻印されているそうです。
そして、この「木育」の取組と言えば、茨城県の牛久市では、「牛久自然観察の森」での取組に活用されています。2019年度には、施設内の「木育ひろば」において、こどもたちが遊べる木製のおもちゃなどを製作して充実させたことにより、前年度よりも利用者数が増えたそうです。

足立  木を身近に感じることができる場の提供、これは素敵な取組ですね。
木の肌触りとか、やはり温かみもありますもんね。小さい頃から木製品に触れる機会が多くなれば、自然と好きになるだろうなと思いました。

   はい。また、都市部の市町村と森林地域の市町村が連携して、森林整備や木材利用の取組を進めている事例もあります。
例えば、奈良県の田原本町と川上村では、都市部であり、森林のない田原本町が、山間部の川上村にある森林を整備し、川上村と協力して、その森林を活用する事業を行っています。

青木  具体的には、田原本町のこどもたちの森林環境教育を川上村で行ったり、例えば、令和4年には、川上村の森林整備で出た間伐材を使って木製のマグネットバー、これは黒板などに貼り付けたり、授業でも使えそうなものですが、こちらを作成し、森林環境学習の参加者や文化祭などを通じ町民に配布するなどして、森林環境への理解を深めるなどしています。

足立  こどもの頃から森林の大切さを知って理解を深めていれば、森林環境税を活用した取組に興味を持ち、中には積極的に林業と関わりたいと思う子が出てくるかもしれませんね。「木育」もそうですけど、やはり、こどもの頃から、早いうちから、知る、学ぶ、ということが大切なんだと思いました。

   来年度、2024年度から森林環境税の課税が始まります。
国民の皆様には、国土の7割を占める森林に関心を持っていただき、森の恵みを支えていただけるようお願い致します。

足立  今日の話を聞いて印象に残ったのは、森林環境税を使って「木育」を進めること。
それによって、こどもたちが森林を好きになって、森林に興味を持ってもらう。
こういう循環って素敵だなと思いました。

青木  私が印象に残ったのは、森林環境税を活用される取組の一つ「人材の育成」です。
番組の中で、即戦力となる若手林業就業者を養成する取組として、徳島県の取組をご紹介しましたが、森があるということは、そこに従事する林業就業者も増えないといけないですし、人材育成だけでなく、林業従事者が暮らしやすい環境を整えることも大切だなと改めて思いました。


【 関連リンク 】
・森林環境税及び森林環境譲与税 / 林野庁
 https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/kankyouzei/kankyouzei_jouyozei.html