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暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。
番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、
印象に残った“推し”をコレクションしていきます。

青木源太・足立梨花 Sunday Collection

暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、印象に残った“推し”をコレクションしていきます。

2023.07.16

あなたの土地を再確認! 地籍調査 進行中



あなたが所有している土地の境界線や面積は、地図情報と一致しますか?
今回は、「あなたの土地を再確認! 地籍調査 進行中」というテーマで深掘りしました。


足立  地籍調査は、初めて聞く言葉です。
「戸籍」なら聞いたことありますけど、「地籍」って何ですか?

青木  私たち日本人には、出生から死亡までの親族関係を公的に証明する戸籍がありますよね。それと同じように土地にも「地籍」と言って、その土地の所有者や面積などを記録する地籍簿と地籍図があるんです。

足立  知らなかった。でも、土地の所有者は不動産登記をしていますよね。
ちょっと前に、この番組で相続登記を深掘りしたときに話題になりましたが、そういうものは、すでにあるんじゃないですか?
何で、その地籍を調査する必要があるんでしょう。

青木  実は現在、全国の法務局で管理されている地図は、今の土地の境界や形状などと必ずしも一致するとは言えないんです。

足立  え? どういうことですか? 一致しないとダメですよね?

青木  そう思いますよね。現在、法務局で管理されている地図のおよそ4割は、なんと、今からおよそ150年前、明治時代に作られた図面を基にしているからです。

足立  どういうことですか?

青木  ちょっと歴史をひもときますと、日本史の授業で習った地租改正、覚えていますか?

足立  覚えてないです。

青木  地租改正とは、明治政府が導入した土地の課税改革のことです。
それまで明治政府の財源の多くは農民が納めるお米でした。いわゆる年貢ですね。
でも、これだと、年によって収穫にバラつきが出て政府の収入が安定しません。
そこで、年貢方式をやめて、土地に課税することにしたんです。
そのため、明治政府が、まずやらなければならなかったのは、土地の所有者と面積を確定することなんですが、いろいろな事情から、その測量を住民自らやってもらったんです。

足立  え? 測量って、誰でもできるものなんですか?

青木  当時は精密な測量機械もなかったでしょうし、専門家じゃないと難しいと思います。
今、ここに、ある土地の図面が二つあるんですが、一つは、明治時代に作成された図面、もう一つは、同じ土地を最新の測量技術で正確に測量して作成された図面です。
足立さん、見比べてみて、どうですか?

足立  なるほど。今、見比べてみると、青木さんが言いたいことは分かります。
なんとなく似ていますが、昔書かれた図面は手書きであろう線で、きっちり分かれていない感じがします。
今の図面は、境界線が直線で、すっきりとしていて見やすいですね。
昔と今を比べてみると、似てはいるけど、昔のものは正確性がないのが分かりますね。
こうした古い図面を基にした地図が、今も法務局で公の地図として利用されているということですよね。
これは、大丈夫なのかなって思っちゃいます。

青木  思っちゃいますよね。そこは、やはり、大丈夫じゃないということで、土地の境界が明確じゃなく、測量の誤差があることも多いので、塀を立てたり、家の建て増しのときに、お隣さんとトラブルになったり、土地を売ったり買ったりするときに実態を正確に把握するのに時間が掛かったりと、デメリットが多いんです。
そこで、地籍調査が必要なんです。
ここからは、国土交通省 地籍整備課長 實井正樹さんと一緒に深掘りしていきます。

足立  實井さん、地籍調査とはどういったものか教えてください。

實井  はい。地籍調査とは、一つ一つの土地の所有者、地番、地目、境界、面積などを調査して地籍簿と地籍図を作成することです。
地番とは、一つ一つの土地を特定するために付けられる番号のこと。
地目とは、土地の用途、つまり、使い道のことで、田んぼ、畑、宅地、山林などです。
地籍調査は主に市区町村が実施していて、その成果は法務局へ送られ、登記簿が修正され、法務局の備え付けの地図になります。

足立  地籍調査は進行中ということですが、どのくらい進んでいるんですか?

實井  地籍調査は1951年から実施していますが、2022年度末の時点で、およそ半分、津波浸水想定地域など地籍調査の必要性が高い地域に限れば8割です。

足立  70年経過していても半分なんですね。

青木  しかも、都道府県により、進み具合にバラつきがあって、北海道や東北、中国、四国、九州・沖縄地方は、おおよそ平均を上回っていますが、関東、中部、近畿地方は平均を下回り、特に近畿地方のほとんどの府県が20パーセントも進んでいない状況なんです。足立さんが育った三重県は10パーセント、私の出身地である愛知県も13パーセントしか進んでいないようです。

足立  なぜ、地籍調査が進まないんですか?

實井  理由はいろいろありますが、地籍調査に関する理解不足もあるように思います。
普通の個人の場合、生涯に土地取引を行う回数は非常に限られており、地籍調査の必要性や効果が住民の方々に十分理解されず、地籍調査実施に向けた機運が高まらない、こうしたことも調査がスムーズに進まない要因の一つではないかと考えています。

足立  地籍調査をするということですが、具体的にはどういった効果があるんですか?

實井  まず、土地取引をスムーズに行うことができます。

青木  地籍調査が行われていないと、登記簿や法務局にある地図と実際の土地の形状などが合っていない場合がありますよね。
そのため、例えば、土地を買ったとき、登記簿には60平米と書いてあるのに、実際には、そこまでの面積がないことがあったり、お隣と境界のことでトラブルになる恐れがあるんです。

實井  しかし、地籍調査が行われていると、お隣との境界や、面積など、土地に関する情報が正確なものに改められます。
その結果、土地境界をめぐるトラブルなどを未然に防止できます。

青木  また、地籍調査が行われていないと、土地を売りたい場合、現実的には所有している土地の測量を自ら行う必要があります。
測量することは義務ではないのですが、行っていないと、そもそも買手がつかなかったり、先ほどもお話したとおり、販売する土地に隣接する土地所有者とのトラブルにもなりかねません。
測量や、隣の土地の所有者との境界の決定に向けた話合いは、土地家屋調査士などの専門業者に依頼することになりますので、かなりの手間や費用が掛かります。

實井  しかし、地籍調査済みの土地であれば測量する手間と費用を省けます。
また、地籍調査は市区町村が実施するため費用負担はありません。

足立  今すぐに土地を売買する予定がなくても、いつ、そういうことになるか分かりませんからね。急に売ることになった場合に、自分一人で測量や、お隣さんとの調整を専門業者に依頼したりと、大変そうなので、そういうときのためにも、地籍調査が行われていたほうがお得ですね。

青木  そうなんです。さらに、地籍調査が行われていれば、道路の整備や市街地の再開発事業、適切な森林の管理なども円滑に進めることができるそうですし、所有者不明の土地が発生するのを抑制することにもつながります。
所有者不明土地の問題、先々週も触れましたよね、足立さん。

足立  そうですよね! 覚えています。国内には、このような所有者不明土地が、九州本島の面積と同じくらいあると聞いて驚いたので、増やさないことにつながるならば、安心ですね。

實井  また、迅速な災害復旧にも貢献します。
災害が発生した場合、道路の復旧、上下水道などライフライン施設の復旧、住宅の再建などが急務となります。地籍調査が実施された場所は、災害などで本来の土地の位置や形状が分からなくなってしまっても、地籍調査の情報を使って元どおりにすることが可能になるため、災害復旧に迅速に取り掛かることができます。

青木  地籍調査は、地球上の経度や緯度と関連付けるなど、正確に位置や形状等を確認するので、例えば、氾濫してしまい、本来の形状が分かりにくくなった河川なども、迅速に位置を確認して復旧工事ができるそうです。

足立  地籍調査って土地を所有している人だけに関係するものだと思っていましたけど、地籍調査が進んで土地の情報が明確になることは、多くの人に有益なことなんですね。
では、その地籍調査って、どのようにして行われるんですか?

青木  地籍調査の流れは、まず実施主体である市区町村などが地籍調査の計画を立て、調査に先立ち、該当する地域住民にハガキなどでお知らせして説明会を実施します。
続いて、土地所有者などの立会いにより境界等を確認します。

足立  隣同士、意見の食い違いがないように立会いが必要なんですね。

實井  はい。ただ山林など立会いが大変なところは、最近は飛行機などを使った最新の測量技術を活用して行うので、現地での確認を省くこともできます。

青木  このようにして土地の確認が終わると、実際に土地ごとの測量を実施し、正確な地図を作り面積を測定します。調査の結果、地籍簿と地籍図の案ができたところで、住民にそれらを閲覧していただき、誤りなどがあれば訂正します。
この閲覧期間は二十日間です。
こうして出来上がった地籍簿と地籍図は都道府県知事が認証し、法務局に送付されます。その結果、古い登記簿が改められることに加え、地籍図が新しい地図として備え付けられることになります。

足立  ちなみに、自分が所有している土地が地籍調査済みか、そうでないか、分かるんですか?

實井  はい。国土交通省の地籍調査Webサイトにある「地籍調査状況マップ」をご覧になると、お住まいの市町村の地籍調査の実施率や、自宅周辺で地籍調査が行われているかなどを確認することができます。
また、お住まいの市区町村の地籍調査の窓口に地籍調査の実施状況についてお問い合わせいただければ分かります。

青木  私も先ほど自宅周辺の状況を確認してみたんですけど、20パーセント以下でした。
實井さん、都市部で地籍調査が進まない理由には、住民の立会いがうまく進まないこともあるそうですね。

實井  はい。都市部の土地は地価が高く、土地に関する権利関係が複雑な場合が多いため、境界を決めるのが難しい傾向にあります。

足立  そうなってくると、ますます地籍調査の効果を、もっと皆さんに知っていただきたいですね。

實井  地籍調査では、土地の境界を決めていく際に、原則として土地の所有者の方に立会ってもらい、境界の位置を一緒に確認しながら進めています。そのため、土地の所有者の方のご協力がなければ、調査が円滑に進みません。もし、今後、市区町村から地籍調査の案内が届いたら、調査への積極的なご協力をお願いします。

足立  今日の話を聞いて、古い図面を基に書かれた地図が今も法務局で公の地図として利用されているということに驚きました。だって、150年前の地図ですよ。今と違う部分はたくさんあると思うんです。なので、ここは、皆さんの協力でちゃんとした地図に変えることによって、土地について考えられるし、売買する際も、スムーズに進むことを知ってほしいと思いました。

青木  そうですね。それが地籍調査が必要な最大の理由ですからね。
私が印象に残ったのは、地籍調査が実際にどのように行われるかということで、まずは、地域住民にハガキなどでお知らせが届くということです。
ですから、お知らせが届いたら協力したいですし、土地所有者であれば立会いなども必要になってきますから。積極的に協力していきたいなと思います。


【 関連リンク 】
・地籍調査の概要 / 国土交通省
 http://www.chiseki.go.jp/about/

・地籍調査Webサイト / 国土交通省
 http://www.chiseki.go.jp/map/