暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。
番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、
印象に残った“推し”をコレクションしていきます。
暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、印象に残った“推し”をコレクションしていきます。
土地や相続について、面倒だからと後回しにしていませんか?
今回は、「ここが変わる! 土地や相続についての新ルール」というテーマで深掘りしました。
青木 2021年に民法などの法律が改正され、土地や相続についてのルールが変わりました。
既にスタートされているものもあれば、これからスタートするものもあるので、今日は、私たちに身近な三つのポイントに絞って深掘りします。
その1「お隣から木の枝がはみ出す、つまり、越境してきたら?」
その2「早めに遺産分割しないと…」
その3「不動産の相続登記が…」
足立 全部言ってくれないんですね。気になります。
青木 民法などの法律は時代の変化や状況に応じて、より使いやすいように改正されるものです。ですから、改正された法律を知っていれば、頭を悩ませていた困りごとが以前よりも簡単に解消できる場合もあれば、逆に、知らないばかりに痛手を受ける場合もあります。
ですから、今日は、私たちの暮らしに身近な土地や相続についてのルールの改正について、スペシャリストに伺ってまいりましょう!
法務省 民事局付の森下宏輝さんです。
青木 まずは、その1「お隣から木の枝が越境してきたら?」です。
こういう困りごと、よく聞きますよね。
足立 ご近所トラブルの定番というイメージがあります。確か、お隣の土地の「木の枝」が自分の家の敷地内に伸びてきても勝手に切っちゃいけないんですよね。
青木 そうなんです! でも、足立さん、もう時代に乗り遅れていますよ。
実は、このルールが変わったんです!
足立 えっ!? そうなんですか。森下さん、どんな風に変わったんですか?
森下 実は、今年の4月1日からは、隣の土地から越境してきた木の枝は切れるようになりました。
足立 具体的に、どんな場合に切ることができるんですか?
森下 具体的なケースは三つあります。
一つは、隣の土地の所有者に枝を切るように要求したけれど、相当の期間内に切除されないとき。
相当の期間とは、おおよそ2〜3週間くらいと考えられます。
二つ目は、木の所有者が特定できず、または、その所在を知ることができないとき。
三つ目は、差し迫った事情があるときです。
差し迫った事情とは、例えば、台風で枝が折れて落下する危険が生じる可能性があるときなどで、この場合は自ら枝を切ることができます。
青木 あくまで原則は土地の所有者に枝を切ってもらうんですが、頼んでも放置されていたり、そもそも所有者が分からないときは自ら切れるということです。
足立 これで困っていた方はいらっしゃるでしょうし、これで困りごとが改善されるんだったらうれしいですし、ご近所トラブルもなくなっていけば良いですよね。
青木 では続いて、その2「早めに遺産分割しないと…」です。
相続人同士の話合いでは遺産分割の協議がまとまらずに、家庭裁判所の調停や審判によって遺産分割がなされる場合の話です。この場合、まずは、民法で定められた相続の割合である「法定相続分」が一つの基準となります。
例えば、亡くなった方の相続人としてこどもが3人いる場合、法定相続分の割合は3分の1ずつです。
足立 「法定相続分」の分割の割合は、こどもは均等なんですね。
森下 はい。ただ、生前、親から援助を受けていたり、逆に介護を行ったなど、こどもたちにそれぞれ考慮する事柄がある場合は、家庭裁判所において、基準となる法定相続分を下に、分割の割合を算出して財産を分けることになります。これを「具体的相続分」と言います。
青木 つまり、「具体的相続分」で相続することになる場合は、例えば、生前に親から援助を受けていたこどもの相続分を少なくして、介護を行なったこどもの相続分を多くするなどして、分割の割合を決めることになるんです。そして、この遺産分割のルールに、今年4月1日から新しいルールが導入されました。森下さん、お願いします。
森下 はい。「遺産分割は相続開始から10年経ったら、具体的相続分ではなく、基本的に法定相続分で一律に算定する」こうしたルールが新たに加わりました。
相続が開始する時期は、ご家族が亡くなられたその日からとなりますが、遺産分割をしないまま10年経ってしまったら、生前に援助を受けたことや、親の介護をしたことなどは考慮されず、「法定相続分」により均等に分割されることになります。
青木 具体的相続分で有利な遺産分割を受けることができる人は、相続人同士の話合いがまとまらないのであれば、そのまま放置せずに早く家庭裁判所で遺産分割の手続をしないと損をするということです。
足立 なぜ、こうしたルールができたんですか?
森下 相続が発生してから明確に遺産分割がされないまま長期間放置されると、関係者それぞれが把握しないままに相続が繰り返されてしまい、多くの相続人が遺産を共有する状態になります。
その結果、遺産の管理や処分が難しくなるからです。
青木 また、時間が経つと、記憶が薄れて、生前に援助を受けていたことや、介護を行なったなど具体的相続分の算定も難しくなるんです。
そのため、こうしたルールができたんです。
足立 なるほど。でも、逆に、「法定相続分」の方が有利になる人もいると思いますが、そういう場合は、遺産分割に参加するのに消極的になってしまいませんか?
森下 そのような人であっても、具体的相続分の方が有利になる他の相続人から裁判所に遺産分割の申立てがなされれば、手続の当事者にならなければなりません。
具体的相続分の方が有利な相続人の主導で、早期に遺産分割がされることが期待されます。
足立 今の話を聞いて、これまでより早く遺産分割が進むような気がします。
いずれにしても、早めに話合いを開始することが大事だと思いました。
森下 はい。この制度は今年4月1日から始まっていますが、それ以前に発生した相続も対象となります。その場合、相続の発生から既に10年経ってしまっているものや、あと数年しか猶予がないケースもでてきます。そのため、制度スタート前に発生した相続については、今年の4月1日から少なくとも5年間は具体的相続分で遺産分割できることとしました。
青木 こうしたルールができた理由の一つには、所有者不明の土地を増やさないためでもあります。
ここからは、今日ピックアップする3つの新しいルールのうちの、その3「不動産の相続登記が…」を深掘りします。
足立さん、この後に続く言葉、何だか分かりますか?
足立 これは、以前、番組でもご紹介したので、覚えていますよ!
不動産の相続登記が「義務化」される、ですよね?
青木 そのとおりです! 土地や家などの不動産には「この土地や建物は自分のもの」ということを法務局に申請して公に示す不動産登記という手続きがあります。
これまでは、所有者が変わっても不動産登記の名義変更をする・しないは自由でしたが、来年、令和6年4月1日から相続によって土地や建物を取得したら、名義を変更する相続登記の申請が義務化されます。
足立 来年からスタートだと、もうすぐですね。
確か、この新しいルールが制定されたのは、所有者が分からない土地を減らすためですよね、森下さん。
森下 はい。「土地の持ち主が分からない」「持ち主が分かっていても行方が分からなくて連絡がつかない」、こうした土地のことを「所有者不明土地」と言います。
国内には、このような土地が、九州本島の面積と同じくらいあり、年々増えていると言われています。
足立 これを聞いたとき、とても驚いた記憶があります!
青木 所有者不明土地は様々な問題を引き起こす可能性をはらんでいます。
管理が行き届かず放置されることが多く、周辺の地域に悪影響を与える可能性があったり、災害復旧作業などが円滑に進まず土地の有効活用ができないなどです。
足立 たまに見掛けますが、ずっと雑草だらけで荒れているままの土地、ありますよね。
もったいないなと思います。
森下 所有者不明土地が発生する主な原因は、所有者が亡くなっても相続登記がされないことにあります。そのため、不動産登記法が改正され、令和6年4月からは、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務となったんです。正当な理由がないのに義務を怠った場合は、10万円以下の過料というペナルティが科されることがあります。
青木 令和6年4月より前に相続した不動産についても義務の対象となりますので、注意が必要なんです。
足立 でも、先ほどの遺産分割のお話でもありましたが、例えば、家庭裁判所で調停中であったり、遺産分割がすぐに進まない場合もありますよね?
青木 そうしたケースも踏まえて「相続人申告登記」という新しいルールも来年4月からスタートします。森下さん、説明をお願いします。
森下 はい。「相続人申告登記」とは、簡単な手続きにより、相続登記の義務を履行することができる制度です。
相続人申告登記を行えば、相続登記をしなくても、ペナルティが科されることはありません。
青木 相続人申告登記とは、「登記簿上の所有者が亡くなって相続が開始したこと」、また、「自らが亡くなった人の相続人であること」、この二つを法務局に申し出ることにより行うことができます。
足立 「自らが亡くなった人の相続人であること」というのは、遺産分割が済んでいなくても分かるんですか?
青木 それが分かるんです。これは「法定相続人」といって、民法では、配偶者やこどもなど、亡くなった人との親族関係により、相続できる人が定められているので、自分が申出できる立場にあるかどうかも分かります。
ちなみに、相続人申告登記の手続費用は無料で、必要となる資料も通常の相続登記よりも少なく済みます。
足立 それは助かりますね。
ちなみに、相続人申告登記は、あくまでも簡易的なものですよね?
やはり、遺産分割がされたら、相続登記はされる必要があると思うんですが、どうですか? そして、そもそも、相続登記って、どうしたらいいんですか?
森下 はい。遺産分割の話がまとまり、正式に、その不動産を相続することになった方は、相続登記を行う必要があります。
相続登記は、相続関係を明らかにする戸籍関係書類とともに、申請書を法務局に提出することによって行います。
詳しくは、法務省や法務局のホームページで確認してください。
また、手続きは専門家である司法書士に依頼することもできます。
青木 不動産登記をする際、通常は登録免許税を支払う必要があるんですが、現在は負担軽減措置が用意されていて、100万円以下の価格の土地について相続登記をする場合、その登録免許税の支払いが免除されているんです。
足立 ということは、つまり、無料ということですよね。それは助かりますね。
青木 ただし、この軽減措置は2025年、令和7年3月31日までです。
ですから、期限が切れる前に身の回りの不動産の名義を確認して、必要な場合は、早めに相続登記を終わらせたほうが安心です。
ですから、ご家族で話して、確認が必要です。
森下 皆様に影響の大きい相続登記の義務化を知っていただくため、法務省・法務局では、7月を広報強化月間として、相続登記の義務化についての情報発信を行っています。
亡くなった方が残した大切な財産を未来へ向けて受け継いでいくためにも、土地や相続について、ご関心を持っていただければと思います。
足立 今日の話の中で一番印象に残ったのは「今年の4月1日から、隣の土地から越境してきた木の枝は切れるようになった」ということです。いろいろと条件はありますが、条件を満たしていれば切っても良いということは、今、困っている方も、これで解決できるなと思いました。
青木 私が今日の話の中で印象に残ったのは、不動産登記法が改正されて令和6年4月からは、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務となったということです。
やはり、所有者不明土地は減った方が社会のためにも良いことですし、義務化になったというのは、頭に入れておきたいことです。
【 関連リンク 】
・所得者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し / 法務省
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html
・不動産を相続した方へ 〜相続登記・遺産分割を進めましょう〜 / 法務省
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00435.html