暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。
番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、
印象に残った“推し”をコレクションしていきます。
暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、印象に残った“推し”をコレクションしていきます。
なかなか無くならない「いじめ」。
こどもがいじめられている、また、いじめていることを見逃さないために、私たち大人に、できることとは。
今回は、『「いじめ」させない! 見逃さない!』というテーマで深掘りしました。
青木 足立さんが学校に通っていた頃、周りにいじめはありましたか?
足立 今思い返してみると、いじめはあったなと思いますね。
いじめがあっても、自分が何もできなかったことの方が多くて、それこそ、傍観者的な感じになっていたと、今になって思いますね。
青木 僕の場合は、大人になってから、仲の良い友達が「あの頃、僕はいじめられていたんだ」ということを言っていて。
当時、僕は、そばにいたはずなのに、全然、気付かなかったんです。
文部科学省が2022年に発表した調査結果によりますと、令和3年度の小・中・高等学校及び特別支援学校におけるいじめの認知件数は、およそ61万5,000件。
非常に残念なことに、過去最多を更新してしまいました。
足立 そうなんですね。
いじめの問題は昔からずっとあって、それこそ以前から対策がとられているイメージがありましたが、現状、増えてしまっているんですね。
青木 ですから「いじめ」をさせない、そして見逃さないために、今日は、大人たちにも知ってほしいことを深掘りしていこうと思います。
今回は二人のゲストにお越しいただきました。
法務省 人権擁護局人権啓発課長の高橋 史典さんと、人権擁護委員の榊 眞理子さんです。
足立 人権擁護委員の方にお会いするのは初めてです。
青木 そうですよね。今日、初めて聞いた方も多いと思います。
人権擁護委員とは、法務大臣の委嘱を受けて、人権を尊重することの大切さを伝える啓発活動や、地域の皆さんから人権相談を受け、問題解決のお手伝いなどを行う、民間ボランティアだそうです。学校の先生や弁護士、元公務員、会社員など、様々な分野の人たちが委員になっていまして、その数は全国の市区町村でおよそ1万4,000人に上ります。
足立 そんなにたくさんいらっしゃるんですね!
榊さんはどうして人権擁護委員になられたんですか?
榊 私は、住んでいる自治体からの打診がきっかけで、2015年から人権擁護委員として活動していますが、それまでは、こども3人を専業主婦として育てながら、こどもたちの学校でPTA活動をしていました。
地域のこどもたちと関わっていたこともあり、皆がお互いに耳を傾け、人権を尊重し合い、支え合って暮らせるよう願い、人権擁護委員になりたいと思いました。
足立 榊さん、人権擁護委員の方は、いじめとどのように関わっていらっしゃるんですか?
榊 いじめの根底には、他人に対する思いやりや、いたわりといった、人権意識の希薄さがあると考えられます。
ですから、人権擁護委員は、いじめに関するご相談に対応したり、人権教室を実施して、小中学生を中心としたこどもたちに、いじめなどの人権問題について考えてもらうきっかけ作りをしています。
足立 日頃から、こどものいじめ問題と接していらっしゃるということですね。
青木 ですから、今日は現場の様子を伺っていきたいと思います。
では、まず足立さん、「いじめ」というと、どんなものを想像しますか?
足立 からかったり、バカにしたり、持ち物を隠したり、無視したりとかですかね。
青木 ひと口にいじめと言っても様々なものがありますよね。
「相手が嫌がることをしたり、させたりするいじめ」「仲間外れや、集団による無視」「人目に付かない場所で殴ったり蹴ったりするなどの身体への直接の攻撃」、さらに最近では「ネットいじめ」などもあります。
足立 昔からあるいじめに、インターネットが普及してからは「ネットいじめ」が加わって、より陰湿になったというイメージがありますね。
高橋さん、どうなんでしょうか?
高橋 はい。最近のいじめの特徴は、「あらゆるこどもが対象となる」「SNS上などで行われ、周りから見えにくい」「ささいなきっかけで始まり、エスカレートしやすい」「面白がってはやし立てる観衆と、見て見ぬふりをする傍観者が存在する」などがあります。
昔のいじめは「性格がおとなしい」とか「行動が遅い」など「弱そうなこども」が標的にされる傾向があったんですが、最近は優等生や活発で目立つこどもなども対象になってきています。
特に、仲間外れや無視、悪口といった暴力を伴わないいじめの場合、小学4年生から中学3年までの6年間で、ほとんどのこどもがいじめにあった経験を持つと同時に、いじめをした経験も持っているという調査結果があります。
足立 ほとんどのこどもが、いじめの被害経験と加害経験の両方があるというのは、ちょっと驚きですね。榊さんは、日頃からいじめの相談を受けていて、最近のいじめについて、どんなことを感じていらっしゃいますか?
榊 私が実際に相談を受けた事例ですが、「仲の良い友達グループから、仲間はずれにされるようになった。」ですとか、「引っ越しで転校。最初のうちは話しかけてくれ、親切にしてくれたが、少し経った頃からクラスの皆から無視をされるようになった。」といったものがありました。
「仲間はずれや無視などの相談が多い一方、スマホやタブレットで写真を撮られ、笑いものにされる」など、悪ふざけからエスカレートする陰湿ないじめも増えていると感じます。
足立 榊さんはそのような相談について、どのように対応しているんですか?
榊 「身近な大人、家族又は担任の先生や話しやすい先生に相談してみよう。きっと味方になってくれるよ。」
「別のクラスメイトの良い面を見つけて、勇気をもって声を掛け、友達になろう。」
といったことを伝えています。
足立 先ほど、榊さんが人権意識の希薄さとおっしゃっていましたが、国としては、いじめの背景をどのように考えているんですか? 高橋さん。
高橋 いじめの背景には様々なことが考えられますが、基本的には、欲求不満の解消を求める心理があると言われています。
存在感や自尊感情の満たされないこどもが、他人を攻撃することによって、他では満たされない欲求を満たし、一時的な満足感を得るそうです。
こうしたこどもは、「のろいから「のろま」と言っただけ」などと、言い逃れをすることがあります。このように、他人の弱い点を思いやるのではなく、いじめの口実にしてしまうのは、いじめが、人権、つまり人が誰でも持っている、人間らしく生きる権利を損なうもの、人権侵害であることに気付いていないからだと言えます。
青木 「いじめは人権侵害である」というと、ちょっと大袈裟だと思われる方がいるかもしれませんが、いじめが原因で不登校になり、教育を受けられなかったり、自殺に追い込まれてしまうほど心にダメージを負わされることは、正に、人間が人間らしく生きる権利が侵害されているということですよね。
高橋 いじめをさせないためには、こどもも大人も「いじめは人権侵害である」ということを認識し、お互いを思いやり尊重する、人権意識を養うことが重要なんです。
足立 高橋さん、先ほど榊さんが最初に人権擁護委員の仕事の中で、いじめに関するご相談のほかに「人権教室」とおっしゃっていましたが、そちらについて詳しく教えてください。
高橋 はい。人権教室は小中学生を中心に、いじめなどのこどもの人権問題について考えてもらうため、人権擁護委員が中心となって実施しているものです。
2021年度はおよそ62万人を対象に実施しました。
この人権教室は、いじめだけでなく、人種、障害の有無などの違いを理解し、認め合うことの重要性を認識してもらうため、様々な民間団体などと連携・協力して、車椅子体験や、障がい者スポーツ体験などの体験型人権教室も広く実施しています。
また、SNSを使用したいじめなど、インターネットによる人権侵害への対応として、携帯電話会社などが実施するスマホ・ケータイ安全教室と連携した人権教室も実施しています。
足立 様々なことがありますね。
榊さんは、実際に人権教室を開催されているということですが、どのような内容で行っているんですか。
榊 小中学校で「いじめ」をテーマとした人権教室を実施しています。
そこでは、例えば、身近な生活の中で起こり得る「いじめ」をテーマとしたアニメなどの人権啓発ビデオを視聴し、登場人物の立場になって気持ちを考えてみるという授業を行って、こどもたちに、「お互いを思いやり、優しい心を持つことの大切さ」を学んでもらう機会にしています。
足立 実際にやってみて、こどもたちの反応はいかがですか?
思い出深いこどもとのエピソードはありますか?
榊 命の大切さを伝えるときに、生まれたばかりの初孫のことを思い浮かべながら、赤ちゃんを親たちが大切に育てて、成長していくということをお話したんです。
こどもたちは、一所懸命に話を聞いてくれて、最後には拍手が湧き上がりました。
また、授業の感想に「僕も人権擁護委員になりたいです。」と書いてくれたときは、とても嬉しく感じました。
足立 今日は【「いじめ」させない、見逃さない】がテーマなんですけど、こどもがいじめられている、また、いじめていることを見逃さないために、大人たちはどんなことに注意すればいいですか?
高橋 いじめを受けているこどもには、無口になったり、学校に行きたがらなくなったりするなど、何らかのサインが現れるものです。
また、いじめをするこどもにも、言葉遣いが荒くなるなどのサインが現れることがあります。
榊 そうですね。大人は、そうしたサインを見逃さないよう、こどもの様子に目を行き届かせることが大切です。
また、こどもを信じ、ときには褒める。
何か問題が起きたときは、こどもと同じ立場で考え、いつも味方として「応援しているよ」と伝えることが大切だと思います。
足立 会話や対話が大切になってくるんですね。
青木 あと、榊さんの印象として、親が積極的に学校側に関わっていくことは大事なんですか?
例えば、こどもたちの何らかのサインを親が見つけたときというのは。
榊 大事だと思います。
私もPTA活動をして、学校に足を運んで、先生方のご苦労や、こどものちょっとしたサインが見れたりとかしましたので、是非、親御さんは、何かないときでも、学校に足を運んでいただければと思っております。
青木 決められた懇談会とかじゃないと学校とコンタクト取っちゃいけないんじゃないの?とか思っている方もいると思うんですよね。
足立 なかなか、普段は学校側と話せないという方もいらっしゃるでしょうしね。
青木 でも、先ほどの話だと、こどもの何らかのサイン。
これは、いじめを受けているこどもであっても、いじめをするこどもであっても、何か気付いたときに学校側とちゃんとコミュニケーションを取るというのは、大事なんですね。
今日は【「いじめ」させない、見逃さない】というテーマでお送りしましたが、最後に、今、親にも先生にも相談できずに、いじめに悩んでいるこどももいると思います。法務省ではそうしたこどもたちが相談できる窓口を設けているんですよね。
高橋 はい。「いじめ」など、こどもをめぐる様々な問題について相談を受ける全国共通・通話料無料の専用相談電話【子どもの人権110番】があります。
こちらの電話は、こどもはもちろん、親からの相談も受け付けています。
また、児童・生徒を対象に配布している【子どもの人権SOSミニレター】、メールで受け付けている【子どもの人権SOS-eメール】、さらに、SNSでも相談を受け付けています。
詳しくは法務省の人権擁護局のページをご覧ください。
これらの相談には、法務局の職員や榊さんのような人権擁護委員が対応しています。
榊 いじめは人権侵害です。こどもたちに「いじめ」をさせない、見逃さないために、まずは大人が「いじめ」を知り、大人たちができることを考えてみてください。
足立 今日の話を聞いて、すごく驚いたのが、“ほとんどのこどもがいじめの被害経験と加害経験の両方がある”というところです。
両方とも経験をするということが、私が学生時代には、あまりなかったと思うので、今、そういう状況にあるというのを、改めてちゃんと知っておくということが大切だなと思いました。
青木 たしかに、「いじめっ子」「いじめられっ子」という境界線がないということですもんね。
足立 いつ、どっちになるか分からないという状況というのは、ちょっと考えなければいけないことなのかなと思いました。
青木 私が今日の話を聞いて印象に残ったのは、私たち周りの大人にできることとして、“サイン”を見逃さないこと。
これは、いじめを受けているこどもには、無口になったり、学校に行きたがらなくなったりする。
また、いじめをするこどもにも、言葉遣いが荒くなるなどのサインがあるということですから、そういうことにも目を向けたいですね。
【 関連リンク 】
・子どもの人権110番/法務省
https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken112.html