暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。
番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、
印象に残った“推し”をコレクションしていきます。
暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、印象に残った“推し”をコレクションしていきます。
昨今は、クリエイターが個人で作品をインターネット上に発表することができる一方、不正に利用されたり、海賊版が出回るといったことが見受けられます。
作品、そしてクリエイター自身のためにも、一歩踏み出してみませんか?
今回は、『まずは相談! クリエイターの権利を守ろう』というテーマで深掘りしました。
青木 私たちはインターネット上で音楽やアニメ、映画、マンガなど、様々なコンテンツに触れることができるようになりました。
これにより、近年、トラブルが増えているのが…
足立さん、何でしょうか?
足立 著作権に関するトラブルですよね。
この番組でも、海賊版の話題が時々出ますよね。
青木 そうですね。音楽やアニメ、映画、マンガなどの作品は、創作した人がそれぞれの自分の想いや感情を作品として表現したもの。
著作権というのは、著作権法という法律によって作品を作った人、いわゆる著作者に与えられている権利です。
この権利により、著作者は自分の著作物を他人が利用することを許諾したり、禁止する権利などが認められています。
ところが、他人の著作物を無断でコピーし、正当な対価を権利者に支払うことなく利用できる状態にした、著作権侵害コンテンツ、いわゆる海賊版が出回っています。
これによる経済損失は大きく、コロナ禍になり一層、状況が悪化しているそうです。
足立 外出自粛期間中は、インターネットなどに触れる時間も増えたと思いますので、海賊版を見たり、聴いたりした人も増えているということですね。
青木 そうかもしれないですね。マンガの海賊版サイトを例にとると、出版社などで構成される一般社団法人ABJの試算では、アクセス数の多い海賊版、上位10サイトにおける月間合計アクセス数は、2020年5月はおよそ1億回でしたが、2021年10月はおよそ4億回となっており、1年5か月で4倍以上と大きく増加し、過去最悪の状況となったそうです。
その後も、サイトの閉鎖や消費者への啓発など様々な対策により、一旦、減少したものの、なかなか海賊版へのアクセスは減らない状況なんです。
ちなみに、2021年の1年間で、約1兆円分もタダ読みされたという試算もあるそうです。
足立 つまり、その分だけ、出版社や漫画家の仕事が水の泡になっているってことですよね。
青木 そうなんです。それに、著作権侵害による被害は、決してプロの漫画家さんだけがかぶっているわけではありません。
近年は、ネット上で様々な作品を発表する個人クリエイターも増えていますよね。
しかも、収益を上げる仕組みが多様化しているので、良い作品を作っているクリエイターは、個人でもかなり稼いでいるそうなんです。
例えば、あるクリエイターの場合、ボーカロイドのソフトを使ってCDを1枚90円の制作費で作り、2,500円で販売したところ、それが1万枚売れたそうで、純利益がなんと2,400万円超えだったそうです。
今の個人クリエイターは、小さく創造して幅広く展開することができるのが強みなんです。
だからこそ、海賊版はプロアマ関係なく出回るリスクがあり、実際、個人クリエイターの作品が違法にコピーされて利用される被害が出ています。
大手企業などの場合、海賊版に対する対応をとる体制ができていることも多いですが、個人クリエイターの場合、こうした海賊版に対してどのように対応していいのか分からない方も多く、泣き寝入りするケースが少なくないようなんです。
では、ここからはスペシャリストに伺っていきましょう。
文化庁 著作権課 課長 吉田光成さんです。
よろしくお願いいたします。
足立 吉田さん、泣き寝入りする個人クリエイターもいるということですけど、もう少し詳しく教えてください。
吉田 はい。近年は、個人クリエイターの皆さんが、様々なコンテンツを作って世の中に広められる可能性が拡大しています。
ところが、著作権に関する知識が不足しているために、適正な使用料を得ることができない場合や、コンテンツが侵害されていても対処できない例が発生しています。
青木 実際、海外の違法ダウンロードサイトに楽曲が上げられていたり、海外で制作されたゲームに、楽曲が原盤ごと使用されていたことがあったそうです。
足立 海外で不正利用されていたら、言葉の問題もありますし、どう対応すればよいのか分からない場合も多そうですね。
青木 そこで、活用していただきたいのが「インターネット上の海賊版による著作権侵害対策情報ポータルサイト」です。
吉田さん、ご説明をお願いします。
吉田 はい。インターネット上では、国境を越えて様々なコンテンツが流通し、それに伴い海賊版も多く流通しています。
ところが、日本のコンテンツ企業や個人クリエイターなどの権利者は、例えば、アメリカの権利者と比較して、被害を受けても権利を守る行動を起こさない傾向にあり、結果的に海賊版の被害を拡大させているという指摘もあります。
そこで文化庁では、「インターネット上の海賊版による著作権侵害対策情報ポータルサイト」を作り、著作権制度の基本的な考え方や、クリエイター自身の権利が侵害された際の対策について情報発信をしています。
青木 そのサイトでは、例えば、「著作権とは何か」そんな基本的なことから、インターネット上の海賊版に対して、実務上まずよく取られる手段である「削除要請」の仕方、さらに、アメリカ、中国、ベトナム、ロシアの国別の海賊版対策など、詳細なノウハウが掲載されています。
足立 このサイトを見れば、海賊版に対する基本的な対応の仕方などが分かるんですね。
でも、法律が関係してくると難しそうだなって思っちゃいます。
青木 そうですよね。そこで、昨年8月30日に、このサイト内に、「海賊版による著作権侵害の相談窓口」が開設されたんです。
吉田 相談窓口では著作権侵害に関するご相談を、著作権を専門とする弁護士が無料で受け付けています。
足立 無料は嬉しいですね!
青木 権利者が相談受付フォームに必要事項と相談内容を記入して送信すると、土日祝祭日を除き、原則10日以内に弁護士からメールで回答が届きます。
さらに、案件によっては弁護士との無料個別面談も実施しているんです。
足立 個別面談も無料なんですか!
青木 電話やWeb会議サービスを利用して相談に乗ってくれるそうです。
足立 それは、有り難いことだし、すごいことですよね。
先ほどお話にあった、文化庁が開設しているポータルサイトに新設された「海賊版による著作権侵害の相談窓口」では、どんな方からの相談を受け付けているんですか?
吉田 相談窓口では、例えば、インターネット上で作品を発表する個人クリエイターや、コンテンツを制作する企業の方、代理人の弁護士の方などから、著作権の侵害に関する相談を受け付けています。
青木 その相談内容の具体的な例としては、
「私が作った曲が許可なく他人の動画で使われているが、どうしたらよい?」
「私が撮った写真が勝手にグッズ化され販売されており、止めさせたい…」
「私が描いたイラストが勝手に転載されているので、サイトに削除を依頼したが反応がない…」などです。
足立 こういうことは、結構、多そうな気がしますね。
でも、実際に、自分が作った曲が許可なく他人の動画に使われていたら、どうしたらいいんですか?
吉田 まずは、動画が掲載されている動画投稿サイトに対して、その動画の削除を求めることをお勧めします。
多くのサイトでは、サイト内に削除要請窓口・削除要請フォームが設けられています。
文化庁のポータルサイトには、初めて海賊版対策を行う方にも分かりやすいように、「初めての「削除要請」ガイドブック」が掲載されています。
こちらを参照しながら、サイトの運営者に動画の削除を行ってほしいと伝えてください。
青木 こちらに、そのガイドブックで紹介されている「削除要請メールの参考書式」があります。ちなみに、英語版と日本語版があります。
足立 この書式を見ると、住所や電話番号など、個人情報を書く欄がありますね。
個人情報をサイトの運営者に知られるのは、抵抗あるなぁという方、いるんじゃないですか?
吉田 実際にそうしたご相談も寄せられています。
ただ、実際に削除の要請をする場合は、削除が適正なものかどうかを判断するために、著作権を持つ本人からの削除要請であること、つまり個人情報を明確にする必要があります。
しかし、個人情報を知られたくないという思いも理解できますので、このようなご相談に対しては、「当面はペンネームで連絡を取り、削除に応じない場合は、代理人を立てることを検討してみてはどうでしょうか」といった提案をいたしました。
青木 その他にも、そもそも著作権侵害にあたるかどうかを尋ねる相談も寄せられるそうです。
例えば「現在、SNS上にて著作権侵害被害に悩んでおり、私のイラストがアイコンやヘッダーに無断で使用されています。このような案件は、実際に著作権侵害となり得ますか?」などです。
吉田さん、これはどうなりますか?
吉田 そうですね。著作権侵害に当たる可能性が高いケースですね。
この場合、そのSNSの運営者に直接削除要請することができるほか、問題のアイコンやヘッダーを削除するよう裁判を起こすこともできます。
足立 こうやって見てみると、著作権侵害への対応の仕方はいろいろあるんですね。
青木 そうなんですよ。ですから、是非、クリエイターの方々には文化庁の「インターネット上の海賊版による著作権侵害対策情報ポータルサイト」をご覧いただき、著作権や著作権侵害に関する理解を深めて、もしものときには相談窓口を活用してください。
足立 でも、そもそもの話ですが、私たちが、安易に海賊版のマンガや映画を見たり、音楽を聴いたり、偽物を買ったりしちゃダメですよね。
海賊版を利用する人がいるから海賊版が存在するわけですから。
青木 そうなんですよ。それに私たちが正規の作品を利用しないと、クリエイターは収入がないので、活動を継続することが困難になり、新しい作品を生み出しづらくなりますよね。
つまり、私たちが海賊版を利用する行為は、私たち自ら新たな作品に出会う機会を逃してしまっているということにもなるんです。
足立 「推しはちゃんと推せ」ということなんですよね。
海賊版を無くすには、私たちが意識を変えることも求められていますね。
吉田 著作権は、コンテンツを創作した人とコンテンツを利用して楽しむ人のバランスを取る仕組みです。著作権法は、そのバランスを取りながら、文化が発展することを目的としています。
自分のコンテンツが無断で利用された場合、クリエイターやコンテンツを制作された企業などから、著作権が侵害されていることを主張することができます。
これらの手段について、分からなければ文化庁の相談窓口にご相談ください。
また、コンテンツを利用される皆様は、他人のコンテンツを利用するときは必ず許可を取りましょう。
そして、海賊版は、利用しないことが著作権侵害に対する効果的な対策となります。コンテンツを楽しむときは「無料だから海賊版」ではなく、次の作品を生み出すためにも正規版を正しく利用していただきたいと思います。
足立 今日の話を聞いて、色々とためになることがあったんですが、クリエイターの作品を見る側としては、海賊版を利用しないことが重要なことで、推したい気持ちがあれば、正式なルートで、正式な推し方をすることを皆さんに心掛けてほしいと思いました。
青木 私は、「海賊版による著作権侵害の相談窓口」ここでは著作権を専門とする弁護士が相談を無料で受け付けてくれるというところが印象に残りました。
やっぱり、著作権に関することは専門知識が必要だし、頼りになる弁護士さんに相談したいという人は多いと思うんですよね。
そういうときに無料で相談できるのは心強いなと思いました。
【 関連リンク 】
・インターネット上の海賊版による著作権侵害対策情報ポータルサイト/文化庁
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/kaizoku/