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暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。
番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、
印象に残った“推し”をコレクションしていきます。

青木源太・足立梨花 Sunday Collection

暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、印象に残った“推し”をコレクションしていきます。

2022.09.18

日本遺産〜ストーリーに魅せられて〜



日本の魅力を再発見できるだけでなく、地域活性化にもつながる日本遺産!
あなたが住んでいる地域も認定されているかもしれません。
今回は、「日本遺産〜ストーリーに魅せられて〜」というテーマで深掘りしました。


青木  足立さんはアニメ好きですよね。
アニメの舞台になった場所を巡る、いわゆる聖地巡礼はしたことありますか?

足立  もちろんです! 『ラブライブ!』『STEINS;GATE』、これは大体、アキバなんです。そのまんまアキバの街が出てきているので聖地巡礼しやすいと思います。

青木  アニメや映画の舞台となった場所には、その作品のストーリーへの思い入れもあって行ってみたくなるものですよね。
今日深掘りするのも、正に、そんな場所なんです。

足立  日本遺産って、世界遺産の日本バージョンみたいなものですか?

青木  そう思う方もいるかもしれませんが、世界遺産とは似ているようで違うんですよ。
どちらも過去から現在、そして未来へと引き継いでいきたい貴重なものであることは同じなんですが、その違いを簡潔にご説明すると、世界遺産の対象となるのは「有形の不動産」ですが、日本遺産の対象となるのは「ストーリー」なんです。

足立  簡潔すぎて・・・もう少し詳しく教えてほしいのですが。

青木  そうですよね。
世界遺産は、建造物や遺跡、文化的景観などの文化遺産や地形や地質、生態系、絶滅のおそれのある動植物が生息・生育する地域などの自然遺産、またその両方を有する複合遺産が登録の対象です。

例えば、文化遺産だと、姫路城やインドのタージ・マハル。
自然遺産だと、屋久島やアメリカのイエローストーン国立公園。
その両方を満たす複合遺産だと、ペルーのマチュ・ピチュなどです。
一方の日本遺産の対象は、「ストーリー」です。

足立  「桃太郎」とか「浦島太郎」みたいな昔ばなしのことですか?

青木  それとも、また違うんです。
「日本遺産(Japan Heritage)」は、地域の歴史的な魅力や特色を通じて、我が国の文化・伝統を語るストーリーを文化庁が認定するものなんです。

ここからは、文化庁文化観光担当 参事官 飛田章さんにお話を伺ってまいります。

足立  飛田さん、日本遺産はストーリーを認定するものということですが、もう少し、詳しく教えていただけますか?

飛田  はい。日本の各地域には有形・無形の文化財が数多く存在します。
こうした文化財はそれぞれが魅力的でも、個々に保存・活用されているため、これらを有する地域の魅力が十分に伝わらないという課題がありました。

青木  従来は、それぞれの文化財を「点」で保存・活用していたんですよね。

飛田  はい。そこで文化庁は、地域に点在する文化資源を、ストーリーの下にパッケージ化し、「面」として地域全体で活用・発信することで、地域の活性化などに貢献できればと、日本遺産事業をスタートさせたんです。

青木  日本遺産は、文化財を活用した地域活性化に、よりフォーカスした事業なんですね。

飛田  はい。この事業は2015年度から始まり、文化庁では、ストーリーを語る上で不可欠な魅力ある有形・無形の様々な文化財群を総合的に活用する取組を支援しています。

足立  点在する文化財をストーリーでつなげて、地域をより輝かせようという訳ですね。

飛田  はい。また、日本遺産に認定された地域では、観光や産業振興に日本遺産のストーリーを活用して地域のブランド化を図ることで、地域住民の皆様も改めて地域の歴史に親しむきっかけにもなり、地域のアイデンティティの再確認につながることを期待しています。

足立  そう考えると、いろいろなそのストーリーを見てみたくなったんですが。
今、日本遺産に認定されているストーリーはいくつあるんですか?

飛田  現在、104のストーリーが認定されていて、それぞれのストーリーを【日本遺産ポータルサイト】で公開しています。

青木  今日はその中から二つのストーリーをご紹介させていただきます。
一つ目は【海と都をつなぐ若狭の往来文化遺産群】というストーリーです。
こちらは福井県の南西部に位置する小浜市と、そのお隣の若狭町のストーリーです。

ここでは、私がその内容の一部を簡潔にまとめてご紹介させていただきます。

青木  日本海にのぞみ、豊かな自然に恵まれた「若狭」。
この地域は古くから、海産物や塩などの豊富な食材を都に送り、朝廷の食を支えた「御食国(みけつくに)」の一つでした。
「御食国」とは聞き慣れない言葉ですが、奈良時代以降、都の天皇や貴族に食材を供給してきた国のことです。
若狭は御食国の時代以降も「若狭の美物(うましもの)」を都に運び、京の食文化を支えてきました。
江戸時代以降、大量の鯖が運ばれたことから、小浜と都とをつなぐ道はいつの頃からか「鯖街道」と呼ばれるようになり、食材だけでなく、様々な物資や人、文化を運ぶ交流の道となります。
やがてその交流は、地域の人々との生活とも結びつき、街道沿いに神社やお寺、町並み、民俗文化財などによる、全国的にも珍しいほど多彩で密度の濃い往来文化遺産群が形成されたのです。
「鯖街道」をたどれば、古代から現在にかけて1,500年続く往来の歴史と、伝統を守り伝える人々の営みを肌で感じることができるでしょう

青木  街道は今でも残っており、その街道は元々、大量の鯖が運ばれることから全てが始まっているんですね。

足立  今のストーリーを聞くと、その通りには鯖料理のお店があるのかな?と想像もできて楽しいですね!

青木  昔の人は、どんな気持ちでこの街道を歩いたのかな?とか思いをはせることができますよね。
今、ご紹介した福井県の小浜市と若狭町のストーリーが日本遺産に認定され、小浜市では様々な地域活性化プロジェクトが始まっているんですよね。

飛田  はい。その一つが鯖の養殖事業「鯖、復活プロジェクト」です。
かつて小浜は鯖の一大産地だったんですが、近年、漁獲量が大きく減っていました。
そこで日本遺産認定後、「鯖の養殖事業」を開始しました。
鯖街道でつながる京都の酒造業者の酒粕を餌にし、この鯖を「小浜よっぱらいサバ」という名称でブランド化しました。

青木  酒粕を餌にしているから「小浜よっぱらいサバ」!

足立  気になりますね。

青木  これらの取組は日本遺産の認定によってスタートしたことや、鯖街道の歴史と併せて全国に発信されたことにより大きな反響を呼び、現在は養殖場の餌やり体験や、鯖の伝統料理である発酵食「へしこ・なれずし」の製造場所の見学などと合せた産業観光としてもプログラム化されています。

足立  日本遺産に認定されたことをきっかけに、地域の宝に磨きを掛けて、地域活性化につなげていったんですね。

青木  歴史、ストーリーに根付いた新たな産業を立ち上げたことになりますよね。

余談ですが、この「小浜よっぱらいサバ」は地元の高校生たちが10年以上にわたり開発に取り組んできた宇宙食サバ缶に使われて、JAXA宇宙日本食として認証されたんです。
実際に野口聡一宇宙飛行士が国際宇宙ステーションで食べたそうです。
鯖街道は宇宙までつながったんですね。
こんなアフターストーリーもステキですよね。

足立  日本遺産に認定されたことで「地域」も「人」も、更に活気づいてる感じですね。

青木  さぁ、続いては富山県の北西部に位置する高岡市のストーリーをご紹介しましょう。
タイトルは【加賀前田家ゆかりの町民文化が花咲くまち高岡 −人、技、心−】。
高岡は古くから商工業で発展し、町民によって文化が興り、受け継がれてきた都市です。
このストーリーを聞くと、なぜ、そのような都市になったのかが分かります。
ここでは、私が要約して簡潔にご紹介させていただきます。

高岡は今からおよそ400年前、加賀前田家二代当主・前田利長が高岡城を築き開かれた町です。
しかし、利長はその5年後に亡くなり、1615年に出された一国一城令で高岡城も廃城になってしまいます。
そこで三代当主・利常は様々な政策を打ち出し、高岡を城下町から商工業の町に転換し、鋳物や漆工芸などの生産力を高めていきます。
一方で高岡の町は、農地や港がある地の利から、米などの取引拠点となり、「加賀藩の台所」と呼ばれるほど栄え、町民が主役の町として発展していきます。
町民はその富を地域に還元して「高岡御車山祭」など、町民自身が担う文化を形成していきます。
そのため、今も高岡の町を歩けば、その町割りや街道筋、生業、伝統行事などに、高岡町民の歩みを色濃く感じることができるのです。

足立  一回うまくいかなかったけど、もう一回、立て直したということですよね。

青木  城下町から商工業の町に転換と、これは当主がやったことですから、ある意味政治の力で変えたのかもしれませんが、そこで、町民の皆さんも応え、町興しを行い、さらに、そこでの富を地域に還元しているというのは素晴らしいことですよね。

足立  高岡は今でも鋳物や漆工芸が盛んな町なんですか?

飛田  はい。前田利長の時代から続く高岡町民たちの気質は、DNAとして現代の職人にも受け継がれているようです。
高岡には【高岡漆器】と【高岡銅器】という日本が誇る伝統工芸があるんですが、近年はそうした伝統工芸の技法を使って、今のライフスタイルに合う器なども手掛け、注目を集めています。

青木  足立さんは銅や錫で出来ていて、自由に形を変えられる器を見たことありませんか?

足立  今、写真を見ていますが、、、見たことあります!
スタイリッシュで素敵ですね。

飛田  高岡市では鋳物を始め、漆器や管笠など物づくり体験などを行なっているので、こうした体験を通じて高岡市の日本遺産ストーリーを肌で感じることができると思います。

青木  高岡市では他にも「高岡クラフト市場街」という、職人たちと交流できるイベントを開催したり、日本遺産認定を機に、既にあった職人のイラストキャラクターのバリエーションを増やすことや、高岡市のストーリーに関連する「高岡大仏」や「鋳物作業をする人」といった新たなイラストキャラクターを追加することで、統一的なイメージでのプロモーション活動を行なっているそうです。

足立  地域が一丸となって高岡市を盛り上げているんですね。

飛田  日本遺産は地域の歴史的魅力や特色を通じて、日本の文化・伝統を語るストーリーを日本遺産として文化庁が認定するものです。
今回ご紹介した日本遺産は一例で、全国には魅力的な104のストーリーがあります。是非、これを機に日本遺産を知っていただき、日本の魅力を再発見してください。

足立  今日、お話を聞くことで日本遺産をしっかりと知ることができたんですが、現在、104のストーリーが認定されているということで、既に多くのストーリーが認定されていることに驚きましたし、それを知らなかった自分が、もったいないことをしていたのだと思いました。

今後、どこかへ行くときには、まず、その地域にストーリーがあるかどうかを調べてから行くだけでも違うんじゃないかなと思いました。

青木  今日の番組の中では二つご紹介しましたが、あと102のストーリーがありますからね。
私は今日の話を聞いて印象に残ったのは、「面として」という部分です。
地域に点在する文化資源をストーリーの基にパッケージ化して、「面」として地域全体で活用、発信すること。大事ですよね。
これは地域活性化にもつながります。


【 関連リンク 】
・日本遺産ポータルサイト
 https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/