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暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。
番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、
印象に残った“推し”をコレクションしていきます。

青木源太・足立梨花 Sunday Collection

暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、印象に残った“推し”をコレクションしていきます。

2022.02.06

みんなに知ってほしい! 進化する調停制度



今年100周年を迎える“調停制度”。
トラブルを円満に解決するために設けられた利用しやすい手続です。
お互いに納得のいくまで話し合うことができ、柔軟な解決が期待できることなど、多くのメリットがあります。
また、私たちが利用しやすいように、さらに進化しています。
今回は、「みんなに知ってほしい! 進化する調停制度」というテーマで深掘りしました。


青木  足立さんは去年、ドラマで、家庭裁判所で実務修習をしている司法修習生役を演じられていますから、調停制度については、ご存知ですよね?

足立  裁判所が当事者双方の言い分を聴いて、話し合いによって問題解決を図る手続ですよね?

青木  そのとおりです。
通常裁判官1名と国民の中から選ばれた調停委員2人からなる調停委員会が、当事者双方から言い分をよく聴いて、中立公平な立場から双方の利益を考えて、調整をしたり解決案を示したりしながら問題の解決を手伝うものです。

調停制度には、民事のトラブルを扱う【民事調停】と、家庭のトラブルを扱う【家事調停】があります。

【民事調停】は、お金の貸し借りや交通事故、近隣トラブルなど、他人との間に生じたトラブルを扱い、手続は主に簡易裁判所で行います。

足立  具体的には、どんなトラブルがありますか?

青木  例えば、「引っ越しをしたら敷金が戻ってこない」、「バイト代を払ってもらえない」、「自転車同士ぶつかってしまった」などです。

足立  裁判をするほどの大きなトラブルではないけれど、日常生活に起こりがちなトラブルですね。

青木  法律に詳しくないと「おかしい」と思いながらも、大家さんや雇用主の言いなりになってしまう人もいるかと思いますが、そのような場合に比較的簡単にトラブルを解決する方法として民事調停が利用できます。

一方、【家事調停】は家族や親族などの家庭内のトラブルを扱い、手続は家庭裁判所で行います。
扱うトラブルは、離婚や養育費、子供との面会交流、遺産分割などです。

足立  「離婚調停」などは聞いたことがある人も多いですかね。
実際、調停制度はどれくらいの方が利用されているんですか?

青木  コロナ禍前の令和元年の場合、民事調停は3万3000件ほど、家事調停は13万6000件ほど新たな調停の申立てが行われています。

足立  どちらも多くの方に利用されているんですね。

青木  その理由は調停制度のメリットとも関係してくると思いますので、ここからはスペシャリストと一緒に深掘りしていきましょう。
最高裁判所 事務総局 家庭局 第一課長の戸苅 左近さんです。

調停制度のメリットのひとつとして、お互いに納得のいくまで話し合うことが基本なので、「トラブルの実態に即した柔軟な解決が期待できる」という点があると思いますが、ほかにもあるんですよね。

戸苅  はい。訴訟にはないメリットがあります。
まず、手続が比較的簡単なことです。
法律の知識がなくても、ひとりで簡単に手続ができます。
申立書の書式が簡易裁判所や家庭裁判所の窓口や裁判所のウェブサイトにあり、ほかに必要となる書類も窓口やウェブサイトでご案内しています。

手続にかかる費用も訴訟に比べると低額です。
例えば、貸したお金10万円の返還を求める場合であれば、500円。
離婚を求めるという場合には1200円です。

青木  もちろん、返還を求める金額などによって手続の費用は変わってきますし、郵便切手なども別途必要となりますが、重い負担にならない額に設定されています。

戸苅  また、ほかの大きなメリットに、調停内容が非公開であり、秘密が守られる点があります。
訴訟は公開の法廷で行われますが、調停は原則、調停室という部屋で非公開で行われます。
このため、当事者以外の第三者に知られずに手続することができます。

青木  離婚や相続など家庭内のプライベートなことは、人に知られたくない場合が多いと思います。
非公開で秘密が守られるというのは家事調停をされる方の負担が軽くなるものだと思います。

足立  素朴な疑問なんですけど、話し合いで解決するのなら、調停制度を利用しなくても解決できるんじゃないかと思うんですけど。

戸苅  実は、裁判所の調停を利用すると、調停で決まった内容が守られない場合には、財産の差押えなど、強制執行の手続を利用することもできるんです。

青木  裁判による判決と同じ効果を得られるというのも調停の大きなメリットです。
例えば、調停で決めた養育費が途中から払われなくなった場合など、相手方の勤め先の給与を差し押さえることもできます。

足立  そういったメリットもあるので、離婚の際に調停制度を利用される方がいるんですね。

戸苅  そればかりでなく、離婚の場合は子供が関わる場合も多いですが、家庭裁判所には、家庭裁判所調査官という、心理学などの専門的な知識を持ったスタッフもいて、子供の思いにもしっかり耳を傾けています。

家庭裁判所には、この家裁調査官のほか、裁判官や調停委員など様々なスタッフがおり、そういうチーム力も含めて、信頼を寄せてくださって、子供の将来を考え、より良い解決を求めて、家事調停の手続をされる方が多いのだと思います。

青木  調停制度の基本がわかったところで、ここからは進化している調停制度についても伺っていきます。

調停制度は1922年、大正11年に発足し、今年100周年を迎えます。
この100年、時代や社会情勢、利用者である国民のニーズの変化に合わせて進化していて、昨年12月からは、家事調停にて試験的にウェブ会議の導入も始まっています。

戸苅  東京、大阪、名古屋、福岡の4つの家庭裁判所で試験的に開始しています。
調停による話し合いは対面で行われることが原則ですが、場合により、当事者が自宅などからウェブ会議で調停に参加することができるようになりました。

青木  裁判所で行う調停は原則的に平日の昼間です。
当事者の中には、仕事があるために裁判所に行く時間を確保しにくい方がいます。
また、別居や離婚に伴い遠くに転居した場合には、わざわざ遠くの裁判所に行かなければならない場合もあります。
このウェブ会議を利用する方にとっては、移動の時間が不要になり、負担が軽減されたんです。

足立  自宅や会議室にいながらパソコンやスマホを利用して、調停に参加することができるんですね。

戸苅  はい。特にひとり親の方の中には、調停のために裁判所に来られるために、幼いお子さんを預けたり、仕事を休まなければならない場合があって、負担が大きいということがありました。
ただ、ウェブ会議を導入したことにより、そうした負担を軽減することが可能になりました。

足立  特にパートタイムで働いている場合には、休めば給料が減りますから、そういった点からもウェブ会議の導入は助かる方も多いでしょうね。

青木  ウェブ会議の導入によるメリットは、ほかにもあるんですよね。

戸苅  はい。安心・安全に手続を行えます。
例えば、相手方からDV(ドメスティック・バイオレンス)を受けていたというようなケースでは、居場所を知られたくない、顔を合わせたくないという場合も少なくありません。
同じ裁判所の建物にいるというだけで心理的な負担になる方もいますし、物理的な危険も考えられます。
また、DVではなくても、感情面の対立が深刻な場合も少なくありません。
もちろん裁判所は、これまでも様々な配慮を行ってきたところですが、そうしたケースでもウェブ会議は有効になると思います。

足立  安全が守られるのは大きなメリットですね。

青木  安全という面では、新型コロナウイルス感染拡大防止の面でもウェブ会議は有効です。
調停手続は、比較的小さな調停室に、当事者、裁判官、調停委員などが集まり、じっくりと話を聴くことが前提なので、いわゆる「三密」状態になりやすいそうです。ウェブ会議はそうした密も避けることができるメリットもあるんです。

足立  今の時代に合わせて進化しているんですね。
調停制度ではどのくらいの期間で話し合いがまとまるんですか?

戸苅  具体的な事案の内容によっても異なりますが、あくまで平均的な期間で申し上げると、民事調停の場合、1か月に1回ほどの話し合いで3か月以内で解決に至るケースが全体の60%ほどを占めています。
家事調停の場合は、全体の約30%の事件が3か月以内に、全体の60%以上の事件が6か月以内に終了しています。

足立  調停によって紛争が解決される割合はどれくらいなんですか?

戸苅  民事調停の場合約55%、家事調停の場合約60%ほどです。

足立  話し合いがまとまらなかったら、どうなるんですか?

戸苅  当事者双方が納得する解決策が得られない場合や、当事者が話し合いの場に出てこないで話し合いができない場合などは、調停不成立として終了となります。
養育費や子供との面会交流のことなどを扱う家事事件については、審判という裁判官が判断する手続に移行します。
離婚などの争いについては、さらに解決を求めるためには裁判所に訴訟を申し立てることになります。

青木  訴訟を起こすということは裁判で白黒つけるということですよね。
その判断を迷う方も多いのではないですか?

戸苅  そうですね。
調停では裁判官や経験豊富な調停委員が話し合いに参加することで、裁判になった際の見通しも踏まえつつ、多様な解決策を提示することができますから、そういった面でも、当事者だけで話し合うよりも有効な話し合いができると思います。

足立  調停委員は国民の方から選ばれると伺いましたが、どんな方々がいらっしゃるんですか?

戸苅  弁護士など法律の専門家だけでなく、医師、建築士、不動産鑑定士、公認会計士、大学教授、会社役員、会社員、自営業、主婦、仕事をリタイアされた方など、様々なバックグラウンドを持ち、豊富な社会経験、人生経験を持つ良識豊かな方々がいます。
こうした方々が話し合いに加わることで、専門的な解決の糸口を導き出すことができたり、当事者の気持ちに寄り添ったより良い解決を目指すことができます。

青木  トラブルを客観的に見ている方からの意見は、当事者の方々も素直に聞けて、歩み寄りやすいのかもしれませんね。

戸苅  そうですね。
調停制度はトラブルを円満に解決するために設けられた、利用しやすい手続です。
身近なトラブルを解決する手段の選択肢の一つとして、覚えておいていただければと思います。

足立  今日の話を聞いて、時代に合わせて進化しているんだなと感じました。
ウェブ会議の導入は、新型コロナのこともあり、密を避けたい方、仕事が休めない方や、DVを受けていたから、顔を合わせたくない方など、いろんなメリットがあると思いました。

青木  私は、今日の話を聞いて印象に残ったのは「手続が比較的簡単」ということです。
法律の知識がなくても、ひとりで簡単に手続ができる、弁護士さんに依頼しなくてもできることです。


【 関連リンク 】
・民事調停
 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_04_02_10/

・家事調停
 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_03/