暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。
番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、
印象に残った“推し”をコレクションしていきます。
暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、印象に残った“推し”をコレクションしていきます。
“ひきこもり”は特別なことではなく、誰しもがなり得るものです。
今回は、「ともに歩むために ひきこもりを考えよう」というテーマで深掘りしました。
青木 “ひきこもり”とはどのような状態なのか確認しておきましょう。
ひきこもりとは、「様々な要因の結果として社会的な参加を避けて、原則的に6か月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態」と、されています。
“社会的な参加を避けて”とは「学校へ行くこと、仕事をすること、家庭以外の場で友人と親しくすることなどはせずに」ということです。
近所のコンビニや、趣味の用事のときだけ外出している場合でも、他の人と交わらない形で外出していて、そのほかの時間は概ね家庭にとどまっている状態が6か月以上続いていれば、ひきこもり状態にあるとされています。
内閣府の調査によると、調査時期が異なりますが、15歳から39歳で54万人、40歳から64歳で61万人と推計され、合計すれば115万人ほどいると考えられています。
国民のおよそ1パーセントにあたる計算になります。
足立 ご高齢の方もいらっしゃるのですね。決して少ないとはいえない数ですね。
“ひきこもり状態”になったきっかけは分かっているのでしょうか?
青木 きっかけは決してひとつではありません。
“いじめ”や“病気”“受験”“進学”“就職”“家族との関係”“他者との人間関係”
これらがきっかけとなる場合もあれば、明確な要因が思い当たらない場合もあります。
また様々な要因が絡みあって複雑な状況や心情を生み、ひきこもり状態になる方もいます。
分かっていることは、ひきこもり状態は決して特別なことではなく、誰しもがなり得るものだということです。
しかし、ひきこもりは単なる甘えや怠けであるといった誤った認識や偏見があり、そのために、ひきこもり状態にある方やその家族が支援機関への相談をためらうケースも少なくありません。
そこで、そうした誤解をなくし、地域がひとつになって、ひきこもり状態にある方やその家族を支援できないかと活動されている方がいます。
今日のゲストは、新潟県十日町市でひきこもりの居場所である「ひきこもりさんのオープンスペース『ねころんだ』」を運営されている、『フォルトネット』代表の関口美智江さんと、『ねころんだ』に通う桑原さんです。よろしくお願いします。
まず関口さん、『フォルトネット』について教えてください。
日頃、どんな活動をされているのですか?
関口 『フォルトネット』は子どもの不登校やひきこもりで孤独になりがちな家族の不安を分かち合い、不安や悩みの種を軽減することを目的に、経験者家族で立ち上げた会です。
講師を招いた講話会を開催したり、不登校やひきこもり当事者のオープンスペース『ねころんだ』の運営、当事者や、家族の方と、イベントへの出店などを行っています。
足立 ひきこもりの方の居場所である『ねころんだ』はどんな場所なのですか?
関口 事前予約や料金は不要です。
ひきこもりの当事者は、「今、行こう!」と思った時が、行きたい時なのです。
オープン時間は決まっていますが、その中でいつでも来れるようにしています。
青木 フラっと気軽に立ち寄れる場所という感じでしょうか。
関口 そういうイメージでやっています。
よく、何をしているのですか?と聞かれますが、何もしなくても良いんです。
絵を描いている人、本を読んでいる人、お菓子を持ってきて、みんなで食べたりと、自由に過ごしています。
『ねころんだ』は、どうしても行かないといけない場所ではなく、来たい時にくればいいし、とても自由です。
足立 とても寄り添った「支援」をされているのですね。
関口 実は、私自身は、「支援」をしているとは思っていないのです。
『ねころんだ』は、今までの自分と別な自分に会ってみたくなったときに立ち寄るところです。私は、ただ場所を提供して、交通整理をしているおばさんですね。
青木 桑原さんは『ねころんだ』に通われていて、ひきこもり状態を経験されたことがあるんですよね。
話しづらいことがあるかも知れませんが、お話しいただける範囲で、きっかけを教えていただけますか?
桑原 はい。きっかけは、小学校1年の夏休み明けから学校に行かなくなり、小学校・中学校は不登校になりました。
なぜ不登校になったのか理由は未だに分かりません。
その後、就職しましたが続かなくて半年ほどで辞めてしまったときが、一番ひきこもりに近い状況でした。
その時は、仕事内容が作業から事務に変わったり、通勤時間が車で長かったりしたことがきっかけでしたが、もともと、小学校の頃から、仕事に対して不安感や恐怖感はずっとありました。
足立 そうした状況はどのくらい続いていたのですか?
桑原 会社を辞めた後、父の実家が農家だったので、その手伝いを1年ほどしましたが、その間、社会との関わりという点ではほとんどありませんでした。
その後、関口さんの息子さんからボランティア活動に誘われて、社会に出る練習だと思いながら参加していました。
さらに、その1年後くらいに、関口さんから短時間の仕事を紹介していただいて、仕事をすることになり、その頃に『ねころんだ』に通うようになりました。
青木 桑原さんが『ねころんだ』の存在を知ったきっかけは、どんなことだったのですか?
桑原 関口さんの息子さんと高校の同級生だったこともあり、そこで、ボランティア活動などに誘ってもらったことがきっかけです。
足立 誘われた時に、すぐに通ってみようという気持ちになりましたか?
桑原 たぶん、知り合いに言われなかったら「通ってみよう」という気持ちにはならなかったかもしれません。
やはり、その頃は自分から動くことが、すごく大変でした。ボランティア活動に誘われたりして、外に出ることが多くなり、『ねころんだ』に抵抗なく行けました。
青木 実際に『ねころんだ』へ行かれてみて、どんな印象をもちましたか?
桑原 最初に感じた印象は「やわらかい」ということです。
特に何か要求される訳でもなく、身の上を聞いて助言してくれるわけでもない。
かといって、話せばちゃんと聞いてくれるし、相談にも乗ってくれるので、「気楽に居れるな」と思いました。
足立 今は、どのくらいのペースで通っているのですか?
桑原 『ねころんだ』が週2日の火曜日と木曜日、開いていて、基本的に毎回行っています。
あとは、関口さんからは、『ねころんだ』以外のイベントにもお誘いをいただき、そちらにも参加しています。
青木 関口さんは日頃から、ひきこもり状態にある方と接していると思われますが、どんなことに気を配って居場所を作っていらっしゃるのですか?
関口 その人その人、やれること、できること、やりたいことがみんな違うのですが、それぞれ自分の中に答えをもっているので、それをどうやって本人が気づいて、見つけてくれるか探りながら、『ねころんだ』でやっていることが、将来、社会に出たときに、社会基盤になってくれたらと思いながらやっています。
青木 今、お話の中にあった“探りながら”ということですが、直接、会話の中で聞き出すことではなく、探ったり、感じたり、察したりといったコミュニケーションの方法をとっていらっしゃるんですよね。
実際にひきこもり状態にある方やそのご家族と接していて、どんなことを感じていますか?
関口 「学校に行きたくない」から不登校して、「仕事に行きたくない」からひきこもりをしているわけですよね。
そういう人たちに、学校に行け、仕事をしろというのは、私は言わないです。
親は、子供が学校に行ってないとなると、実際は、学校に行ってほしいという気持ちが奥の奥にあると思います。
いつか、子供に学校に行ってほしかったら、学校や仕事の話は、あまり家庭内で言わないでほしいという思いがあります。
やっぱり、親が学校や仕事の嫌なこと、ダメなことを言っていたら、それを聞いている子供も、そういう気持ちになってしまいます。
自分で行動できる、自分で判断できるように、親は見守ってほしいなと思っています。
あと、よく聞かれるのが、「もう何年も不登校、ひきこもりをしているのですが、遅すぎますか?」です。
私は、「気づいたとき、その時が出発点だ」と思っているので、「そこからどうするか、どう考えていけばいいのか」で、遅すぎることはないと思います。
青木 今、関口さんが課題に思うことはありますか?
関口 『ねころんだ』がすべてではないので、居場所は、色々な所に、色々なカラーのものが欲しいですね。
『ねころんだ』のカラーになじめない人もいて、でも、その人も居場所を求めています。
近隣の行政と繋がりながら、誰でも参加できる家族会や居場所が欲しいのと、官民を交えた地域のネットワークが欲しいです。
青木 政府でも「ひきこもりは特別なことではなく、誰しもがなり得るものであること」を多くの方に理解していただき、ひきこもり状態にある方やそのご家族が、それぞれの状況にあった支援にたどり着きやすい地域社会の実現を目指して、様々な取組を行なっています。
実は、そうした取組を分かりやすく紹介するため、先日、ひきこもり支援に関するポータルサイト『ひきこもり VOICE STATION』も開設されました。
足立 桑原さんは、今後、思い描いていることはありますか?
桑原 自分のひきこもりの経験というのは、ひきこもりの中でもだいぶ軽い例だと思っています。
人それぞれ課題や、どうして“ひきこもり”になったのかは違うし、生活環境や地域による違いもあると思います。
私自身を含めて、色々な制度を利用できることを知らないですし、知っていても、複雑で、どうやったらいいのか分からないことが多いので、情報の得やすさや分かりやすさが向上していったら嬉しいなと思います。
そして、「どんな家庭でも、どんな人でもひきこもり状態になり得る可能性があること」「単なる甘えや怠けではないということ」を、本当に周りの人はもちろん、本人にも気付いてもらいたい、と思っています。
青木 関口さんからも最後にメッセージをお願いします。
関口 はい。ひきこもり状態は特別なことではなく、誰しもがなり得るものです。
もし今、ひきこもり状態にある方やそのご家族、生きづらさを抱えている方は、一人で悩まないでほしいです。一緒にその悩みを分かち合ってほしいと思います。
足立 今日の話を聞いて印象に残ったのは“ともに歩く仲間の存在”というのが、とても重要なんだなということが、分かりました。そういう仲間、そういう方がもっと増えていけばいいなと思いました。
青木 私は、“ひきこもりが特別なことではなく、誰しもがなり得ること”が印象に残りました。
【 関連リンク 】
・ひきこもり VOICE STATION
https://hikikomori-voice-station.mhlw.go.jp/