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暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。
番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、
印象に残った“推し”をコレクションしていきます。

青木源太・足立梨花 Sunday Collection

暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、印象に残った“推し”をコレクションしていきます。

2021.12.19

共に発展するために! 企業のパートナーシップ構築宣言



大企業と中小企業が共存共栄の関係を構築し、さらなる成長を目指すための新たな仕組みが創設されました。
今回は、「共に発展するために! 企業のパートナーシップ構築宣言」というテーマで深掘りしました。


青木  さて、足立さん。私がいつも着ている、この白い綿のTシャツ、綿の段階から私が買うまでにどれだけの人が関わっていると思いますか?

足立  綿を作る人、Tシャツにする人、…。

青木  一般的には“原材料となる綿花を生産する人”“綿花を調達し、糸にして生地にする人”“糸や生地を脱色したり染めたりする人”“デザインなどを企画する人”“生地を裁断や縫製する人”“それらを輸送する人”“保管する人”“販売する人”
これくらいの人が関わっていることになります。

足立  多くの方が関わっていますね。

青木  このように原材料の生産、調達、物流、販売までの流れのことをサプライチェーンと言います。
それぞれがTシャツを消費者へ届けるという目的のために協力関係を築いているパートナーです。
今日深掘りする『パートナーシップ構築宣言』を簡潔にご説明するとこのサプライチェーン全体の協力関係を強化して、企業の規模に関わらず共に発展するために、企業が代表者の名前で“取引先との共存共栄の取組”や“取引条件のしわ寄せ防止”などを宣言するものです。

足立  分かるような、分からないような。難しいですね。

青木  ここからはゲストと一緒に深掘りしましょう。
中小企業庁 事業環境部 企画課の立入咲帆さんです。

『パートナーシップ構築宣言』の仕組みは昨年6月に創設されたそうですが、現在までにどれくらいの企業が宣言しているんですか?

立入  11月末日時点で3,902社の企業の皆さんに宣言していただいております。
それぞれの企業の宣言内容は『パートナーシップ構築宣言』のポータルサイトで公表しています。

足立  なぜ、こうした取組が進められているのでしょうか?

立入  はい。新型コロナウイルス感染症により、日本の経済は大きなダメージを受けました。
このように厳しい経済状況下ではリーマンショックの時のように、大企業などの元請け企業が中小企業などの下請け企業に対し、取引価格の引下げなどを行うことが懸念されます。

足立  下請け企業にいろんな“しわ寄せ”がくるかもしれないんですね。

立入  そうしたことを未然に防ぎ、大企業と中小企業が共存共栄の関係を構築する仕組みとして、『パートナーシップ構築宣言』を創設しました。
企業の規模に関係なく多くの企業の皆さんに“取引条件のしわ寄せ防止”や“取引先との共存共栄の取組”、“新たな連携の推進”などに重点的に取り組むことを宣言し実行していただくことで、アフターコロナ時代も大企業と中小企業が共に成長することを目指しています。

青木  やはり、中小企業、下請け企業は、大企業といった元請け企業からの条件に断れない状況もあるかと思います。

『パートナーシップ構築宣言』が、どんな内容を宣言するのかというと、例えば、「価格の決定方法について不合理な原価の値下げ要請は行いません。取引価格の決定に当たっては、下請け企業から協議の申入れがあった場合には協議に応じ、下請け企業が適正な利益を得られるように十分に協議します。」などです。

立入  元請け企業にこうした宣言をしていただくと、下請け企業は原材料の価格が高騰した時など、取引価格への転嫁を「申入れ」しやすくなります。

足立  それはそうですけど、そもそも原材料が値上がりしたら、取引価格に反映させるのは自然なことではないですか?

立入  本来はそうであっていただきたいんですが、2019年の調査結果によると、製造業・非製造業ともにおよそ3割の下請け企業が「価格転嫁できなかった」と回答しています。
また「価格転嫁できなかった」と答えた下請け企業のおよそ半数が「価格転嫁の協議ができていない」と回答しています。

足立  協議すらできていないのですね。
仕事を発注してもらう側は一般的に立場が弱くて値上げを言い出しにくいですかね。

青木  サプライチェーンは本来、お互いに助け合って存在し、繁栄を目指す関係ですよね。
それにも関わらず適正な取引が行われず、元請け企業だけが成果をあげて、下請け企業が厳しい状況を強いられるのは健全ではないですよね。

立入  そのため『パートナーシップ構築宣言』で、「取引先とのパートナーシップ構築の妨げとなる不当な取引をしないこと」や、「サプライチェーン全体の協力関係を強化するための取組」「業種や分野、規模を超えた新たな連携を進めること」、こうした主旨の宣言を多くの企業の皆さんにしていただき、サプライチェーン全体で健全な協力関係を築いていきたいんです。

青木  これは会社の取引方針や経営方針や企業理念に関わることだと思うんですが、『パートナーシップ構築宣言』として宣言することにどのようなメリットがあるのでしょうか?

立入  より多くの企業の皆さんが宣言することで、大企業も中小企業も適正な取引を尊重する機運が醸成されます。
サプライチェーン全体で『取引の適正化』が進めば、その結果としてそれぞれの企業が成長し、業績も向上する好循環が生まれることも期待できます。

青木  みんなの意識が変わるぐらい機運を高めるには、仕事を発注する側の企業により宣言してもらいたいところですけど、現状はいかがですか?

立入  『パートナーシップ構築宣言』は、大企業も中小企業も関係なく宣言していただきたいものですが、現在、宣言いただいている約3,900社のうち、いわゆる大企業と言われているところは1割程度となっていますので、今後はより大企業の皆さんの参加が進むことを期待しています。

青木  ここからは、パートナーシップ構築宣言をしている企業が実際にどんな取組をされているのか深掘りします。
「ある企業」のご紹介です。

こちらの企業は、製造関係の元請け企業で、パートナーシップ構築宣言をする以前から取引先と共存共栄の関係を築くことを心がけていたそうです。
実際に、そうした理念を毎朝の朝礼で声を出して読み、全社員で共有もしていました。
でも、思いがあっても実際の業務に反映されていなければ目的は達成できません。
そこで、実施したのが、取引先の本音を知るための「お取引様満足度調査」です。

足立  「お客様満足度調査」というのは聞いたことがありますけど、「お取引様満足度調査」というのは珍しいですね。

立入  しかも、こちらの企業では、その調査結果を自社だけで共有するのではなく、取引先を集めた交流会の場を設けて、そこで発表もしています。
また、調査結果への対応や考えもお伝えするのだそうです。
これにより、お互いに考え方や対応を共有し、反省点を一緒に改善するなどして、公平かつ公正な取引を行う努力をしているそうです。

足立  これはいいアイディアですね。

青木  また、この満足度調査は、自社の取引担当者の意識を高めるというメリットも生み出しているそうです。
仮に取引担当者が一方的に取引先にコストダウンを押し付けるなど共存共栄の精神と違うことをしてしまうと、取引先からその反応が返ってきてしまうため迂闊(うかつ)なことはできません。
担当者は常に勉強し新しい情報を仕入れるなどして、お互いにとってより良い提案をするなど、努力を怠らないそうです。

立入  ちなみに、こちらの企業では、「取引先との合意による改良改善で得られたコストダウンなどの成果は、お互いに分かち合うこと」をパートナーシップ構築宣言として宣言もしています。

足立  成果を独り占めにしないという宣言なんですね。

青木  成果を分かち合うことは、結果的に、お互いの仕事の質を上げ、成長することにもつながるんですよね。

足立  ちなみに、こうした宣言が実際に実行されているか、中小企業庁さんでは確認されるんですか?

立入  『パートナーシップ構築宣言』は自主的な取組ですので、宣言後に監査や指摘をするようなことはありませんが、今後は、宣言内容の実施状況に関する実態調査を予定しており、調査結果をもとに、取組を検討していきたいと考えています。

青木  また、この『パートナーシップ構築宣言』を成果が伴うものにするには、下請け企業の皆さんの意識も変えていく必要がありますよね。

立入  そうですね。
下請け企業の皆さんは元請け企業に対して要望を言い出しにくいことがあるかもしれませんが、『パートナーシップ構築宣言』をしている企業は、適正な取引を行うことを宣言しているわけですから、要望がある場合は話し合いの場を設けるように元請け企業に積極的に呼びかけていただければと思います。

足立  宣言をすることで、企業イメージが良くなる、というメリットがあると思うんですけど、ほかにメリットはありますか?

立入  はい。
宣言を行った企業はパートナーシップ構築宣言のロゴマークを使用することができます。
ウェブサイトや名刺などに記載することで取組をPRできます。
また、経済産業省が実施する一部の補助金で加点措置を受けることができます。
さらに、取組を実施することでSDGsに掲げている17の目標のうち、5つの目標に取り組んでいることにもなります。

青木  その5つとは『すべての人に健康と福祉を』『働きがいも経済成長も』『産業と技術革新の基盤をつくろう』『人や国の不平等をなくそう』『パートナーシップで目標を達成しよう』です。

国際社会共通の目標に向かって取り組んでいることになり、社会的な責任を果たすことにもつながるんです。

足立  宣言するにはどうしたらいんですか?

立入  『パートナーシップ構築宣言』のポータルサイトにアクセスしていただき、【概要・登録方法】からひな形をダウンロードし、自社で取り組む宣言内容などを記載して登録ページからアップロードすれば完了です。

パートナーシップ構築宣言は、取引先と共存共栄の関係を築き、共に成長し、その成果をバランスよく分配することで、さらに成長することを目指すものです。
より多くの企業の皆さんに宣言していただき、機運を高めていければと思っています。
ご協力をどうぞよろしくお願いいたします。

足立  今日の話の中で一番印象に残ったのは、『パートナーシップ構築宣言』を取り組むことによって、SDGsの5つの目標が達成できることです。
今後、多くの企業の方に宣言していって欲しいと思いました。

青木  私は、サプライチェーン全体で取引の適正化を進めることが大事ということが、印象に残りました。

それぞれの企業が成長して、業績も向上する。
この好循環も、サプライチェーンの中で生まれますし、一つの企業だけでなく、社会全体が強くなっていくことにも繋がります。


【 関連リンク 】
・「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイト
 https://www.biz-partnership.jp/