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暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。
番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、
印象に残った“推し”をコレクションしていきます。

青木源太・足立梨花 Sunday Collection

暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、印象に残った“推し”をコレクションしていきます。

2021.11.07

あの舞台で輝こう! 歌舞伎俳優への道



歌舞伎俳優になるための、研修制度があることをご存知ですか?
プロから学べて、一緒の舞台に立てることも。
今回は、「あの舞台で輝こう! 歌舞伎俳優への道」というテーマで深掘りしました。


青木  歌舞伎は、およそ400年の歴史がある日本の伝統芸能の一つで、ユネスコの無形文化遺産にも登録されている、日本が世界に誇るエンターテインメントです。
ところが、歌舞伎を始め、歌舞伎に欠かすことのできない歌舞伎音楽など、日本の伝統芸能を伝承する人が不足しているんです。

そこで、国立劇場、日本芸術文化振興会では、1970年から伝統芸能伝承者の養成事業を行ない、歌舞伎俳優や歌舞伎音楽の担い手を送り出しています。
現在、歌舞伎俳優は、およそ300人ほどいますが、なんと、その3分の1は、国立劇場養成事業の出身者なんだそうです。

足立  歌舞伎俳優の芸は、親から子へ、師匠から弟子へと、直接受け継がれていくものだと思っていたんですけど、研修制度があったんですね。
知らない方が多そうです。

青木  実は現在、来年度の令和4年4月から研修が始まる、27期生を募集しています。
そこで、ここからは、歌舞伎俳優研修の主任講師を務めていらっしゃる、歌舞伎俳優 中村時蔵さんにお話を伺います。

初めに、プロフィールをご紹介させていただきます。
四代目 中村時蔵の長男としてお生まれになり、5歳で初舞台。
1981年、26歳の時に五代目 中村時蔵を襲名されました。
あでやかな姫君から、世話好きの女房役まで女形(おんながた)としての芸域は広く、2010年には、紫綬褒章を受賞されています。

国立劇場の歌舞伎俳優研修は、1970年からスタートと歴史があり、時蔵さんは、2007年からおよそ15年ほど、講師をされています。
歌舞伎俳優研修は2年間と伺っていますが、主にどんなことを教えているのでしょうか。

中村  この2年間の間に、私たち歌舞伎俳優と一緒に舞台に立てるところまで研修で教えられたらと思っております。
歌舞伎独特の演技法がありまして、例えば、発声や歩き方、イントネーションなど段階的に教えております。

青木  順調にいけば、素人の方でも入って2年で歌舞伎の舞台を踏むことができるのですね。

中村  途中で一度、適性審査がありますが、そこで落ちる方はほとんどいません。

青木  研修生は皆さん、「歌舞伎俳優になりたい!」という強い憧れを抱いてくるのでしょうか?

中村  「昔から歌舞伎が好きだった」、「日本舞踊をしていました」、「長唄をやっていました」という方もいますし、「お父さんやお母さんが歌舞伎好きで、勧められて来た」という方や、「募集のポスターを見て来た方」もいます。
また、YouTubeで、歌舞伎舞台の立廻りを見て、「やってみたい!」と思って来た方など、理由は様々です。

足立  とても強い思いで「歌舞伎俳優になりたい」という方でなくても、大丈夫なんですね。

中村  この研修は、中学卒業から23歳くらいまでの方を中心に教えております。
昔は、2年に1度、募集していましたが、前回からは、毎年募集することになりました。

足立  研修出身の方はどんな役につくんですか?

中村  最初は、通行人や、立役志望だと、立廻りが多いです。
それから、少し良くなると、一言二言くらいのセリフがもらえたりします。
また、10年経つと名題(なだい)試験があります。
名題になると、役名やセリフがたくさんある役をもらえるようになります。

青木  これは、映画やドラマの世界でも同じですよね。

足立  名題になるための、試験もあるんですね。

青木  さて、ここからは歌舞伎に欠かせない歌舞伎音楽についてです。
中村さん、歌舞伎音楽の研修生も募集しているんですよね。

中村  歌舞伎は総合芸術ですので、役者だけいてもできません。
それを支える方々が必要です。
大きく分けますと、「竹本」。
これは、文楽の人形劇を持ってきたとき、文楽の太夫(たゆう)さんの代わりに、演奏してくれる、ナレーションや心理描写を語ります。
それから長唄、鳴物。BGMの役割と、舞踊の時に出囃子(でばやし)といって、舞台の正面に並んだりもします。

足立  歌舞伎音楽というものは、歌舞伎俳優よりも後継者不足が深刻なのでは、と思うのですが、いかがですか?

中村  皆さん、どこの世界でもある程度、後継者不足には悩んでいると思います。
特に、楽器を奏でる方は、ある程度、練習すると音は鳴りますが、太夫さんといった唄の方は、演技をしながら、語ったり、唄わないといけないので、なかなか育たないです。

青木  時蔵さんが思う、「歌舞伎俳優に向いている人」というのは、どんな方ですか?

中村  やはり、協調性があること。また、研修に対して真面目に取り組める方。
あとは、400年近い歴史がある歌舞伎を受け継いでいくわけですから、歌舞伎の重要性を理解し、研修に臨んでくれる方です。

うまい下手は、後から分かるんです。
最初からうまい子でも、後から追い付かれます。

足立  努力次第ということですね。

中村  全く歌舞伎を見たことがない子が、すごく上手になったりしますし、研修中に、「この子はちょっと・・」と思っていても、1年後にはすごく良くなったりします。

青木  研修生の成長を感じる瞬間は、やはりうれしいですよね。

中村  特に、卒業して、同じ舞台に立つ時に、「この子、研修時は、あんなだったのに・・」と思うわけです。

青木  時蔵さんが研修生に、特に伝えたい歌舞伎の魅力はどんなことですか?

中村  世界に類を見ない女形があるということ。
オペラと同じように、生の声で勝負しないといけないこと。
そして、400年近い歴史があることが魅力で、これを絶やしてはいけないと思います。
今、私たちがやっている演技などは、先輩たちが作り上げてきたものをいただいて、そして、これから研修で、自分の子供たちにも教えているわけですが、それをまた、次の世代に教えていく人間になってもらいたいと思っています。

青木  時蔵さんは、女形でいらっしゃいますよね。

中村  大体、8対2くらいの割合で女形が多いです。

青木  女形を目指してくれる方が増えるとうれしいですよね。

中村  そうですね。女形をする際、体つきや高い身長であっても、どうやって女らしく魅せるかなどを、授業でも取り入れています。

青木  舞台を見ていると、女形の方の発声はもちろんですが、所作なども女性を見ているような感じになります。

今回募集している研修生は、「歌舞伎俳優」、「竹本」、「鳴物」、「長唄」のほか、大衆芸能の「太神楽(だいかぐら)」です。
たくさんの方の応募をお待ちしております。
応募資格は、中学校卒業、または卒業見込み以上の男子、太神楽のみ男女。
原則として、年齢23歳以下。経験は問いません。

足立  義務教育が終わっていれば、応募資格があるんですね。
試験はありますか?

青木  詳しくは、国立劇場のホームページをご覧いただきたいんですが、作文、簡単な実技試験、面接があり、合格すれば、来年春から、国立劇場で研修がスタートします。
研修開始後、8か月以内に適性審査があります。
研修は、原則、月曜日から金曜日までの平日午前10時から午後6時まで。
2年間、みっちりと日本の伝統芸能を学ぶことができます。
「長唄」と「太神楽」は3年間です。
しかも、国が行っている事業なので、受験料と受講料は無料で、奨励費の貸与制度があります。また地方在住の方には有料ですが、宿舎の貸与、又は住居費の補助もあります。

中村  歌舞伎は、今後も絶対に残していかないといけない伝統芸能だと思っております。
その担い手として、私たち歌舞伎俳優と一緒に、舞台に立ちたいという人を広く募集しております。2年間、かなり厳しいと思います。
その代わり、一流の方々が2年間みっちり教え、すぐに舞台に立てると思いますので、多くの応募者が来てくれたらと思っております。

足立  お話の最後にあった、「受験料と受講料が無料」ということに驚きました。
2年間みっちり、プロの方に無料で教えていただけるというのは、すごいことだと思うので、いろんな方にチャレンジしてほしいですね。

青木  私は、「経験は不問」ということが印象に残りました。
やはり、歌舞伎俳優の方は、その家に生まれて、なるものだというイメージがあると思うのですが、そうではないし、経験がなくても応募ができるというのは非常に大きいと思いました。


【 関連リンク 】
・伝統芸能伝承者養成事業
 https://www.ntj.jac.go.jp/training.html