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暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。
番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、
印象に残った“推し”をコレクションしていきます。

青木源太・足立梨花 Sunday Collection

暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、印象に残った“推し”をコレクションしていきます。

2021.08.29

どうなるの? 土地相続の新ルール



所有者不明の土地の解消に向けて、土地の相続に関するルールが大きく変わります。
今回は、「どうなるの? 土地相続の新ルール」というテーマで深掘りしました。


青木  実は、相続に関する土地のルールが、今後、順次変わることになっています。
なぜ、新しいルールができるのかと言うと、“所有者が分からない土地”を無くすためなんです。
“不動産登記”という言葉を聞いたことはありますか。

不動産登記とは、「この土地や建物は自分の物です」ということを、法務局に申請して、公に示すものです。
申請が認められると、不動産登記簿に、土地や建物の詳細や所有者の連絡先となる住所などが記録されます。
では、今、不動産登記簿を見ただけでは、所有者が分からない土地は、日本にどれくらいあると思いますか。

足立  ごく一部ですか。

青木  実は、国内の土地のおよそ22%と言われています。
これは、九州本島の面積と同じくらいで、しかも、年々増えていると言われています。

足立  所有者が分からないままで、大丈夫なんですか?

青木  所有者が分からない土地は、管理が行き届かず放置されることが多く、防犯や防災の観点からも、周辺の地域に悪影響を与える可能性が高いんです。
例えば、土砂崩れの対策工事が必要な場所に、所有者不明の土地があると、工事が円滑に進まず、危険な状態のままになってしまいます。

足立  もし、大きな災害が起こったら、周りの住民の命が危険ですね。

青木  ほかにも、開発したい土地に所有者不明の土地があると、買取り交渉ができず、いつまでたっても開発が進みません。土地の有効活用ができないのです。

足立  そもそも、なぜ、所有者が分からない土地があるんですか。

青木  そこがまず疑問ですよね。
ここからは、スペシャリストにも加わっていただいて、深掘りしていきましょう。
法務省 大臣官房 参事官の大谷 太さんです。

さっそく、「なぜ所有者不明の土地があるのか…」教えていただけますでしょうか。

大谷  土地を相続した場合、これまで登記の申請は、義務ではありませんでした。
そのため、申請しなくても不利益を被ることが少ないこともあり、親が亡くなり土地を相続しても、登記の申請をしないケースが多くありました。

青木  そのため、登記簿上は親が所有者のままで、実際は、子供などが所有しているという事態が起こります。
所有者不明の土地のうち、およそ3分の2がこのようなケースです。

足立  残りのケースは、どういったことですか。

青木  所有者が引っ越しをして、住所が変わったにもかかわらず、住所変更の登記を申請せず、連絡が取れなくなるケースです。

足立  義務でないなら、引っ越しをするたびに変更するのは、面倒と思ってしまうんですかね。

大谷  また、近年は、人口が都市部に集中するとともに、高齢化が進み、地方の土地を中心に、所有したり、活用したいというニーズが減っているため、積極的に登記の申請をしようという意欲が湧きにくくなっています。

足立  なるほど。でも、それでは困るので、新しいルールが設けられるんですね。

青木  そうなんです。
ちなみに、所有者が引っ越しをして住所が変わったにもかかわらず、住所変更の登記を申請せず、連絡が取れなくなるケースですが、土地に税金が掛かりますよね。その税金は支払われているのでしょうか。

大谷  多くの場合は、支払われていると言われています。
登記には、所有者の情報が現在のものになっていないとしても、税金の方の帳簿は、現在の所有者になっている場合もあるようです。

青木  税金支払いの通知は、亡くなった親宛てではなく、その子供宛てにしっかりと届いているということですね。

大谷  多くの場合、まず、土地の税金支払い通知を、親御さん宛てにお送りしますが、そのお子さんから、亡くなっていると連絡を受けたら、名義をその方、つまり、子供宛てに切り替えます。
その後は、その子供宛てに通知が届くようになります。

青木  支払い通知が、親から子へ切り替わっても、登記の申請、変更は義務ではなかったため、登記は、親の名前のままになっていたのですね。

さあ、ここからは、土地の相続に関する新しいルールについて、大谷さん、どういったものなのか、ご説明をお願いします。

大谷  まず、これまで義務ではなかった土地に関する相続や、氏名・住所変更の登記が義務化されます。
また、建物についても、同様に所有者不明の問題がありますので、同じく登記が義務化されます。
相続登記の新しいルールは、2024年までに、氏名・住所変更登記は2026年までに、施行される予定です。

青木  これに伴い、私たちが親などから土地を相続したことを知ってから、3年以内に登記を申請しなければ、行政上の罰として10万円以下の過料、つまり、過ち料が科されます。
また、住所変更の登記については、住所変更から2年以内に申請しないと5万円以下の過料になります。

足立  とても大きなルール変更ですよね。

大谷  ただし、正当な理由があれば、過料は科されません。

青木  例えば、関係者がとても多くて、登記に必要な書類を集めるのに時間が掛かる場合や、DVの被害を受けていて、登記をすると相手に住所を知られてしまって危険だという場合などが考えられます。

大谷  また、新しいルールが定着して登記がされるようにするため、簡単に義務を果たせる仕組みも設けられます。
更に、登記の費用を軽減する仕組みも、今後検討される見込みです。

青木  関係者が多くて、登記に必要な書類を集めるのに時間が掛かる場合とありますが、確かに、繁華街のビルで、権利者が多くいるという場合もあります。
中には、所在不明の方もいると思うのですが、こういうケースはどうなるんですか?

大谷  権利を売って欲しいけど、所在不明の方がいて、困ってしまうという場合もあると思います。その場合、今回のルールの改正で、比較的簡単に管理人を選任し、その方から土地や建物を取得できることになります。

青木  そうなると、所在不明になっている権利者の意思は関係なく、手続きを進められるということなんですか。

大谷  勝手に権利を奪ってしまうことはいけませんので、裁判所に管理人を選任してもらいます。本当に所在不明なのか、連絡が取れないのか、きちんと調べてもらい、管理人を付けてもらいます。
管理人には、適切な管理を行っていただき、場合によっては、裁判所の許可を得て売ることもできます。

青木  少し、時間と手間は掛かるかもしれませんが、不動産開発に、一歩進むことができますよね。

大谷  そのとおりです。

足立  ほかにも便利になることはありますか?

大谷  登記漏れを防ぐための新しい制度も設けられます。

青木  例えば、親が所有している土地を全て把握することができずに、登記漏れが生じるということを防ぐために、親が名義人となっている不動産の一覧の証明書を発行してもらえる制度が設けられます。
そして、土地の相続に関する新しいルールは、ほかにもあります。

大谷  相続などにより、取得した土地を手放すためのルール「相続土地国庫帰属制度」が新しく創設され、2023年までに施行される予定です。

青木  近年、不動産は不動産でも、負債の負、つまり「負け」と書いて負動産という言葉が使われることがあるんです。

例えば、売却したくても引取り手がいない、処分に困る不動産のことです。
こうした言葉が使われるぐらい、近年、相続をきっかけにして望まない土地を取得して困っている方が増えているようなんです。

足立  駅から遠い不便な土地などは、引取り手を探すのが大変、管理するのも難しいという方もいそうですよね。

青木  持ち続けていると、固定資産税や管理費が掛かってしまい、マイナスの資産になってしまいます。
そこで、相続などによって取得した土地であれば、法務大臣の承認を受けることで、国に引き取ってもらうことができるようになるんです。

大谷  ただし、国が引き取ることができるのは、管理や処分に費用や労力があまり掛からない土地です。

青木  つまり、引取りには、一定の要件をクリアする必要があるわけです。
例えば、敷地内に建物などが残っていたら、自分で解体しないといけませんし、土壌汚染がある土地や、敷地内に危険な崖がある土地などは、対象外となります。

足立  なぜ、そうした要件が設けられているんですか。

青木  こういった要件がないと、最終的に国が引き取ってくれるからと、管理がおろそかになってしまう場合が考えられます。
また、引取り後、管理するのは国です。その管理費などは、税金で賄われます。
そのため、安易な引取りを避ける目的で、要件が設けられているんです。

大谷  また、土地を手放すには、10年分の管理費用に相当する負担金をお支払いいただく必要があります。

青木  その具体的な金額などは、現在、国有地の管理に掛かっている費用なども参考に、今後検討されていくそうです。

足立  ずっと所有していて、税金や管理費を払い続けるよりは、最初に費用が掛かることもありますが、引き取ってもらいたいと考える人も多いでしょうね。

青木  今回の新しいルールが施行されるのは、少し先ですが、すでに土地の所有者から、「子供やご近所に迷惑を掛けたくないから」と、様々な問合わせが入っているそうです。

足立  相続は、簡単には決められない大切なことですから、早めに話し合っておくことは大事ですよね。

大谷  土地を相続した場合の登記が、義務化されるなど、土地の相続に関するルールが大きく変わります。
また、所有者不明の土地の解消に向けて、ほかにも様々なルールが設けられます。
法務省ホームページでは、今回の法改正の内容や、相続登記の促進に関する様々な取組を紹介しておりますので、詳しくは、「未来につなぐ相続登記」で検索し、法務省ホームページをご覧ください。

足立  今日の話を聞いて、意外と“所有者が分からない土地”がたくさんあることを初めて知りました。
また、土地や建物を管理するのも、意外と大変なんだなと分かったので、土地相続は、早めに話し合って欲しいと思いました。何からすれば良いのか、どうしたら良いのか分からなくなったら、是非「未来につなぐ相続登記」で検索して欲しいです。

青木  私が印象に残ったのは、新しいルールの「土地、建物の登記が義務化されること」です。これは大きな変化ですね。


【 関連リンク 】
・未来につなぐ相続登記
 https://www.moj.go.jp/MINJI/souzokutouki_top.html