暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。
番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、
印象に残った“推し”をコレクションしていきます。
暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、印象に残った“推し”をコレクションしていきます。
企業の未来を支える後継者。その後継者が今、不足しています。
これまで培ってきた技術やノウハウ、そして大切な従業員を守るためにも、まずは相談してみませんか?
今回は、「後回しせずに取り組もう! 中小企業の事業承継」というテーマで深掘りしました。
青木 事業承継というのは、会社を次の経営者に引き継ぐことです。
足立 経営者でないと関係ないような気がしますけど…。
青木 そんなことはありません。日本には数多くの企業がありますが、その99パーセントは中小企業です。そして、その中小企業で働いている人は、全体の雇用のおよそ70パーセントを占めています。
足立 ほとんどの方が中小企業で働いているわけですね。
青木 そうです。もし、今、働いている企業の事業が円滑に引き継がれなかったら、場合によっては、業績が悪化して従業員がリストラされたり、更に後継者が見つからなければ廃業する可能性もあるんです。
足立 それは極端な例ですよね。ほとんどの中小企業は、スムーズに引き継がれているイメージがあります。
青木 ところが、日本では、経営者の高齢化が進んでいる上に、後継者不足もあり、引継ぎが円滑に進まないことが心配されているんです。
昨年、中小企業の中で多かったのは、65歳から74歳の経営者です。
しかも、70代の経営者のうち、後継者が決まっていない方はおよそ40パーセントもいるんです。
足立 後継者がいないままだとどうなるんですか?
青木 そのままでは廃業になってしまいます。
実は、2020年に休業や廃業、解散した事業者のうち、およそ60パーセントは、経営は黒字なのに廃業していて、後継者がいなかったために、廃業した企業も少なくないんです。
足立 黒字なのにもったいないです。
青木 こうした廃業で、困るのは従業員だけではありません。
お付き合いのある企業にも影響が出てしまいますし、例えば、廃業するのが地域に親しまれているレストランだった場合、もう二度とその料理を味わうことができなくなってしまうわけです。
足立 それは困りますね。
青木 でも、経営者が事前に準備をしておけば、円滑に引き継ぎ、廃業を防ぐことができます。
そこで、ここからはスペシャリストと一緒に、中小企業の事業承継について深掘りしていきましょう。
中小企業庁 事業環境部 財務課長の日原正視さんです。
中小企業の場合、家族経営も多いですから、なんの対策も取らずにいると、いざという時、お家騒動が起こる危険性も考えられますよね。
日原 そうですね。また、家族との関係以外にも、後継者に経営のノウハウがなかったり、従業員や取引先との関係を作れていなかったりすると、経営がうまくいかず、さらには従業員の生活が脅かされる可能性も考えられます。
でも、計画的に事業承継の準備を進めておけば、企業がこれまでに培ってきた様々な財産、例えば、資産、人材、技術、取引先などを上手に引き継ぐことができます。
青木 そうすれば、後継者が安定した経営をスムーズに実行でき、さらに事業が発展する可能性も出てきますね。
そして何より、従業員の生活を守ることができます。
足立 事業承継にはメリットが多いのに、後継者が決まっていない中小企業が多いのはどうしてでしょうか。
日原 まず、そもそも誰かに引き継ごう、引き継げると考えていない経営者がいます。
ただ、ゆくゆくは誰かに引き継ぎたいと考えている経営者でも、日々の経営に勤しむ中で、事業承継の準備を後回しにしている場合が多いです。
また、家族経営の場合、子供がほかの仕事で生計を立てていて、事業を継ぐ意思がない場合もありますし、子供から親に事業の承継を切り出しにくいということもあります。
足立 確かに、子供から親には言い出しにくいことかもしれません。
青木 家族経営でなくても、バイタリティのある社長に「そろそろ事業の引継ぎを…」と言うのは、引退を促していることにもなって、言い出しにくいですよね。
日原 でも、早めに取り組めば、資金面でのメリットも多いんです。
例えば、今なら相続税や贈与税の負担を実質ゼロにする事業承継税制があります。
また、事業承継後の設備投資などを支援する事業承継・引継ぎ補助金も内容を拡充しています。
青木 事業承継税制については、税制を活用するのに必要な事業承継計画の提出期限が、2023年3月に迫っていて、今から早めに準備をしておくことが重要です。
足立 でも、家族経営などの小さな企業だと、現実問題として後継者がいない場合もありますよね。
日原 一口に事業承継と言っても、その引継ぎ先のパターンは様々です。
主な三つに分けると、
一つ目は“子供など親族内での承継”。
二つ目は“社内の役員や従業員への承継”。
三つ目は“第三者の事業者や個人への承継”です。
足立 第三者の事業者や個人への承継というのは、つまり自分の企業を、ほかの企業や個人に渡してしまうということですよね?
青木 いわゆるM&A、企業の合併買収です。
足立 自分の企業をほかの企業や個人に売るなんて嫌な方、多いのではないですか?
親族で代々つないできた企業なら、なおさらだと思うんですけど…。
青木 “リストラ”や“乗っ取り”といった負のイメージが付きまといますよね。
確かに、抵抗感を持つ経営者や従業員の方も多いと思います。
でもM&Aは、メリットも多い経営手法で、近年、M&Aによる事業承継は増えているそうです。
日原 近年は右肩上がりで増加しており、推計で年間3千から4千件程度実施されています。
足立 増えている理由やメリットは、どんなことなんですか?
日原 社内で見つけられない後継者を見つけられることに加えて、“従業員の雇用の継続”や“生産性の向上”といった効果も期待できます。
足立 雇用の継続というのは、少し意外です。
M&Aで、従業員はリストラされそうなイメージがありますけど…
日原 実際に、そういったイメージを持たれている方は多いと思います。
ただ、およそ80パーセントの企業で、一人もリストラをせずに雇用を維持しているという調査結果もあるんです。
それに対して、もし後継者が見つからず、M&Aもできなければ、廃業によって雇用が失われてしまいます。
足立 経営者も従業員の生活のことが最も心配でしょうから、従業員のみんなが働き続けられるのであれば、安心ですね。
生産性の向上については、いかがですか?
日原 一般的に、M&Aは、大きな企業が小さな企業を飲み込んでしまうイメージがありますが、そうした側面ばかりではありません。
M&Aをした企業同士の人事交流や技術連携、経営ノウハウの共有などによって、新たな発想が生まれたり、設備投資や研究開発が進んだりして、M&Aの買い手・売り手の双方にとって、成長するきっかけとなる可能性があります。
実際、M&Aを実施した企業は、そうでない企業に比べて、売上高や経常利益、更には生産性向上を実現しているという調査もあります。
足立 具体的には、どんなM&Aがありますか?
青木 地域に根ざしている金属加工企業が、地元の製作所に経営を譲り渡したケースでは、雇用も継続、企業名も残した形でM&Aが行われました。
しかも、このM&Aにより金属加工企業と製作所の間での人事交流などが起き、平均年齢60歳の18名体制が、平均年齢45歳の31名体制に若返ったそうです。
足立 若返ると活気が出そうですね。
青木 さらに、社屋の外観を無骨な町工場からブルーをあしらった、近代的なデザインに改修したそうです。
そうしたら、社内の雰囲気が大きく変わって、これまでは、従業員募集に全く人が集まらなかったそうですが、今は、県外からも応募があるほど、注目されるようになったそうです。
足立 魅力的な企業に変わったんですね。
でも、このケースは、両社の相性が良かったからうまくいったんですよね。
M&Aは、相性の良い相手を探すのが大変ではありませんか?
青木 実は、M&Aについて相談できる公的機関があるんです。
日原 全国47都道府県に、事業承継・引継ぎ支援センターという公的相談窓口を設置しています。事業承継をどう進めたら良いのかという入口のご相談から、親族内承継、M&Aのマッチングまで幅広く支援を行っています。
支援実績は、徐々に増加しており、M&Aに関しては、2020年度に1379件の成約がありました。
青木 事業承継は、なかなか相談しづらいものですが、このセンターは国の機関だから安心できるし、親族内承継もM&Aもどちらも検討できるのが良いですよね。
また、M&Aについては、各地域内はもちろん、全国でも情報を共有していて、より良いマッチング相手を幅広く探すことができるのもメリットですよね。
足立 結婚や、恋愛と似ていて、どこに、良い出会いがあるのか分かりませんね。
やはり、早めに準備を始めた方が良いことが分かりました。
青木 こうやってマッチングをしてもらう際に、公的機関に紹介してもらうというのは、大きな安心材料ですよね。事業承継・引継ぎ支援センターについては、「事業承継 ポータルサイト」と検索いただければ、ポータルサイトから詳しい支援内容が分かりますし、全国の支援センターを検索することもできますので、是非、ご覧いただきたいです。
では、最後にメッセージをお願いします。
日原 より良い事業承継を行うには、早めの準備が大切です。
日頃の経営で大変だと思いますし、家族の方と将来について話し合うことは、恥ずかしいかもしれませんが、是非、家族が顔を合わせる機会を見つけて、企業の未来を話し合っていただきたいと思います。
足立 今日の話の中で、「事業承継 ポータルサイト」で調べると、M&Aはもちろん、親族内承継についても相談に応じてくれる公的な機関があることがとても印象的でした。
青木 私が印象に残ったのは、「M&A」で、いろんなイメージを持っている方がいると思うのですが、従業員の雇用の継続や生産性の向上も期待できることでした。
【 関連リンク 】
・事業承継・引継ぎポータルサイト
https://shoukei.smrj.go.jp/