Legend Story
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15.07.18
岩崎恭子

1992年夏、バルセロナ・オリンピック、14歳の少女が世界中の脚光を浴びた。

競泳女子200メートル泳ぎで、岩崎恭子がオリンピック新記録で優勝。
競泳史上最年少の世界王者となった。

「今まで生きてきた中で、一番幸せです」。
まだ、あどけなさの残る笑顔でそう喜びを表現した中学2年生の金メダリスト。
しかし、その偉業と言葉は彼女の呪縛となった。

帰国後、国民的ヒロインとして連日マスコミに取り上げられ、金メダリストという肩書と、あの時発した言葉がひとり歩き。
周囲の視線を気にするあまり、発言一つ自由に出来ない窮屈な毎日。
金メダルを取らなければよかった、そう思うようにさえなっていた。

3つ上の姉の背中を追い水泳を始め、ただ泳ぐことが好きだった天真爛漫な少女から、笑顔が消えた。
目立ちたくないという気持ちが競技にも表れ、記録も低迷。
スランプ状態が続いた。

転機となったのは、高校1年生の時。
世界選手権の代表から外された岩崎は、3年ぶりにジュニアの大会に出場。
オリンピック経験者が出ることはない大会だが、そこで、かつての自分、水泳が好きで怖いもの知らずの頃を思い出し、オリンピックに対しての想いが再燃した。

高校3年生でアトランタオリンピックに出場。
結果は10位。
しかし、「この結果はバルセロナの金メダルに等しいもの」と語る彼女の顔には、金メダルを獲得した時に見せた無垢な笑顔と、呪縛から解き放たれた、充実の表情が浮かんでいた。