Legend Story
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14.12.13
本田圭佑


その瞬間、本田圭佑は両手を膝についた。うつむいて何度か首を振る。
こんなことは、初めてだった。

ブラジルワールドカップ第3戦のコロンビア戦を前に、日本代表は1分け1敗の勝点1でグループリーグ3位に沈んでいた。
決勝トーナメントへ進出するには、コロンビアに勝たなければいけない。
同時刻にキックオフされるコートジボワール対ギリシャ戦の結果次第では、勝利だけでなく大量得点が必要になることも考えられる。
悲観論が広がるなかで、本田はこう語った。
「信じているものにしか、ミラクルは訪れない」
 
6月24日に行われたゲームは、前半17分に失点する苦しい展開となる。
それでも前半終了直前に、本田のアシストから岡崎慎司がヘディングシュートを決める。
日本代表は1対1に追いついた。
後半、日本代表は攻めた。失点のリスクを覚悟で前に出た。
しかし、コロンビアが牙を剥いてきた。
後半10分、ジャクソン・マルティネスにゴールされ、再びリードを許す。
後がない日本代表は、カウンターアタックを浴びる覚悟で、さらに攻撃の意識を強めた。

後半37分、最後の鉄槌がおろされた。
コロンビアに3点目を喫したのだ。その瞬間、本田が両手を膝についた。
どんな逆境でも視線を落とさず、チームを鼓舞してきた男が、
試合中に初めて見せた、絶望の感情だった。
日本代表はさらに1点を許し、1対4で敗れた。

いまや日本を代表するサッカー選手となった本田だが、そのキャリアは決して順風満帆ではない。
いくつもの挫折を味わい、そのたびに這い上がってきた。
「世界一を諦めることはできない」
 コロンビア戦の翌日、本田はこう話した。
その瞳を確かめると、いつものように鋭い光が宿っていた。
失意のどん底を味わった男は、加入2シーズン目のACミランで得点を重ね、生まれ変わった日本代表を牽引している。