Legend Story
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14.11.22
高梨沙羅

ソチオリンピックシーズンの冬季開幕戦である、2013年12月7日のワールドカップリレハンメル大会で、高梨沙羅は完璧な勝利をあげた。
 
その前のシーズン、初のワールドカップ総合優勝を果たした彼女は、飛型点という課題を残していた。
初の総合優勝を決めた直後に臨んだ世界選手権では、ウインドファクターを含めた飛距離点ではトップを上回りながらも、
飛型点で初代ワールドカップ女王のサラ・ヘンドリクソンに及ばず2位。

ヒルサイズまで飛んでも、両足を前後に開いて両腕を広げる、テレマーク姿勢を完璧に入れて着地するヘンドリクソンに対し、高梨のテレマーク着地は不完全なもの。
飛型点の得点差は2本合計で7・0もあり、飛距離に換算すれば2・5mに相当するものだった。
その後のワールドカップ2戦でも、同じような形で敗れて2位という結果だった。

だが春からその課題克服に取り組んでいた高梨は、リレハンメルでその成果を存分に発揮した。
ヘンドリクソンは夏の大怪我で出場していなかったが、1本目にはヒルサイズを超える102mまで飛距離を伸ばしながらも
テレマークをキッチリ入れ、全選手中最高の57・5の飛型点を獲得。
飛型審判5人のうち2人が20点満点を出すほどだった。
2本目も57・0を獲得し、飛距離点を合わせた合計得点では2位のダニエラ・イラシュコに16・0の大差をつけて圧勝したのだ。
 
それでも高梨は
「トレーニングで着地の時に自分の体を支えるだけの筋力もついた。
テレマークを入れるコツのようなものもかなり身についてきたかなと思います」
と言いながらも、
「今日は2本とも踏み切りでもう少し脚を使って立てれば良かったと
後悔した部分があったので、そこは課題になるところだと思います」
とさらなる欲を口にした。

そんな強烈な向上心と課題克服への真摯な取り組みが、
ソチオリンピックまでのワールドカップ全13戦で10勝、2位2回、3位1回という成績につながった。

だがソチオリンピックでは調子が下降気味になっていて、助走の滑りがわずかに狂ってしまったことに加え、
2本とも着地寸前で背中を叩かれるような追い風に見舞われ、テレマークを入れられない着地になった。
結果は4位。メダルを逃した。

高梨は、ゴーグルの中で密かに涙を流した。
だが、
「自分の思い通りのジャンプが出来なかったということは、
まだまだメンタルが弱いということ。もっともっと強くなりたいと思いました」
と冷静に話した高梨は、その後のワールドカップでは5戦5勝。
ソチオリンピックの無念さをぶつけるかのような圧勝劇を見せつけた。
彼女の本当の強さを証明する結果だった。