Legend Story
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14.11.08
ジーター

9月7日にヤンキースタジアムで行われた引退セレモニー。
今季限りで引退するヤンキースのデレク・ジーターは、大観衆の前で自らの現役生活をこのように振り返った。

「世界でも最も素晴らしい仕事をやらせてもらった。
ニューヨーク・ヤンキースのショートになる機会を得たこと、それはオンリー・ワンだ」
 
通算で2747試合に出場。3465安打、544二塁打、358盗塁は、ヤンキース歴代1位の記録である。そして、5度のワールドチャンピオン。
ヤンキースの黄金時代を築いたのは、紛れもなくジーターだった。

だが、彼の偉大さは記録だけで語れるものではない。犠牲を厭わない献身的なプレー。誰よりもチームのため動き、選手たちを鼓舞するキャプテンシーがあったからこそ、アメリカ人は彼を愛したのだ。

その紳士的な人間性は、少年時代に培われたものだった。
黒人の父と白人の母の間に生まれ、少年時代は人種差別に少なからず苦しんだ。
そんなジーターに、父は言った。

「世の中に出れば誰も簡単には勝たせてくれない。勝負はいつもフェアだとは限らない」

彼は野球人生を通して原点を守った。
メジャーリーグ2年目の1996年に新人王。華々しいデビューを飾ってもおごらず、ホームランやヒット以上に、バントや進塁打を率先して狙った。

2003年6月に第11代キャプテンに任命されてからは、試合では常にベンチの最前列で声を出し、
誰も見ていない室内での練習でも球拾いなどの雑務を黙々とこなした。
決して言い訳をせず、他人の悪口も言わない。規律を守れない選手を戒める厳しさ、
そして、球団スタッフから家庭の問題を相談されれば、自腹を惜しまずサポートする優しさもあった。

ヤンキース時代にジーターと親睦を深めた松井秀喜は、彼の功績をしみじみと語る。

「ジーターほどリーダーシップを感じさせる選手はいない。どんなに苦しい時でも、
彼が声をかければ、チーム全体がいい雰囲気を作ろうとする。本当にすごい選手です」

本拠地最終戦となる9月25日のオリオールズ戦。
サヨナラヒットという劇的な幕切れを演出したスーパースターは、試合後、ファンの声援を受けながら20年間守り続けたショートに向かい、感謝の祈りを捧げた。

ヤンキースタジアムには、フランク・シナトラの名曲「マイウェイ」が流れている。
ジーターが歩み続けたオンリー・ワンの道が、ひとつの終わりを告げた。