4人の若武者による渾身のバトンリレーが、世界に衝撃を与えた。
ボルト率いるジャマイカに迫り、陸上大国アメリカを力で封じた。
100メートル9秒台の選手は一人もいない。
そんなチームがついに世界の2位まで上り詰めた。
1走の山縣亮太がロケットスタートを決めて2走の飯塚翔太につなぐ。
200メートルが専門の飯塚だがエース区間で互角の勝負を披露、完璧なバトンパスで3走の桐生祥秀へ。
桐生は、高速でコーナーを駆け抜けると中国、カナダを抜いてトップに浮上した。
迫ってくる桐生の姿に、アンカーで待つケンブリッジの鼓動が高まる。
隣のレーンで待つジャマイカのウサイン・ボルトよりもわずかに早く受けたバトンの感触を合図に、目線を100メートル先のゴールへと向け、加速する。
直線半ばまで、ボルトとバトンが接触するほど肩を並べて競り合い、アメリカ、カナダの猛追をしのぐと、そのままゴールを駆け抜けた。
電光掲示板の2位に「JAPAN」の文字。
ケンブリッジは緑のバトンを空に突き上げ、猛スピードで駆け寄ってきた桐生とガッチリ抱き合った。
37秒60のアジア新記録で、過去最高の銀メダルを獲得。
去年から導入した新アンダーハンドパスが威力を発揮した。
通常は体の真下で受け渡しを行うが、より腕を伸ばす方法にトライ。
バトン1回でおよそ60センチ、3区間のテークオーバー・ゾーンで、およそ180センチ稼ぐ。
タイムに換算すればおよそ0秒18の短縮。
受け手の腕の角度などが変わったため、選手たちは何度も感覚をすり合わせミスのない状態に仕上げてきた。
山縣、桐生、ケンブリッジ、という9秒台を目前にとらえる3人に、200メートルで日本歴代2位の記録を持つ飯塚。
爆発力のある4人の走力を日本が長年積み上げてきたバトンパスの技術が繋ぎ、歴史的な銀メダルにつながった。