シドニーオリンピック テコンドー女子67キロ級、3位決定戦。
試合終了を告げるブザーが鳴った瞬間、岡本依子は、試合場に突っ伏した。
白い歯がこぼれる。
涙は浮かんでいたが、笑ってもいた。
敗者復活の1回戦は7対5で勝利。
3位決定戦の相手はイギリスのスティーブンソン。
試合序盤から岡本はポイントを重ね、一時は3対0とリード。
しかし、スタミナが尽きた。
スティーブンソンのかかと落としのような回し蹴り、さらに前蹴りを浴びる。
最終第3ラウンド残り1分10秒で同点に追いつかれた。
遠のきかけた銅メダルだが、岡本は気力を振り絞る。
残り50秒に倒れながらも左回し蹴り、
残り40秒に右回し蹴りでポイントを重ねた。
最後まで攻め抜き6対5で勝利。
香港の映画スター、ジャッキー・チェンにあこがれ、12歳から空手を始めた。
早稲田大学在学中に交換留学生として行った
アメリカ・オレゴン大近くの町道場でテコンドーに巡り合った。
アルバイトで稼いだ資金をすべてテコンドーに注ぎ込み、韓国に2年間滞在し修行した。
人生のすべてを掛けて手にした銅メダル…。
ナニワのド根性娘・岡本依子は、シドニーオリンピックの新種目で新たな歴史を作った。