1998年6月26日、サッカー日本代表は、ワールドカップで「歴史的な初得点」を挙げた。
フランス大会での日本代表は、グループリーグ第1戦のアルゼンチン戦、第2戦のクロアチア戦ともに無得点で敗れていた。
第3戦のジャマイカ戦も2点を先行され
あきらめムードが漂った後半29分、歴史的な瞬間が訪れる。
名波から左サイドでパスを受けた相馬が、逆サイドへクロス。
ディフェンダー2人を引きつけていた呂比須がへディングで折り返す。
ラストパスを信じ続けて走っていた中山はゴール前でフリーになっていた。
「体のどこでもいいから、という感じで打った」
という執念のシュートは、体勢を崩しながら右太ももで押し込んだ。
ジャマイカのゴールネットが揺れる。
日本人サポーターの大歓声。
ワールドカップ初挑戦から44年目の歴史的な日本の初ゴール。
しかし、中山は得点を挙げて喜ぶことはなく、逆転を狙うため体を張ったプレーを続けた。
貪欲に、泥臭くゴールを求めるスタイルは危険と隣り合わせでもある。
実は、ジャマイカ戦のゴールの直後、中山は相手選手と接触し右足を骨折していた。
それでも、痛みをこらえて試合終了までピッチを駆けまわった。
ワールドカップフランス大会、惨敗の中で希望の光をもたらした中山雅史の姿は、
我々の目に焼きつき、その魂は後輩へと受け継がれている。