今年1月2日、雪の残る箱根山中で箱根駅伝の歴史が動いた。
小田原中継所を駒沢大学から46秒遅れの2位でスタートした青山学院大学の神野大地(かみの だいち)は序盤から積極的に飛ばし、10・2キロ地点で首位に並んだ。
およそ200メートルだけ並走した後、神野はスパートし、一気に駒沢大学を引き離す。
20キロ手前では、故郷から駆け付けた家族の姿が目に入った。
涙する母、叫ぶように声を上げる父と兄、家族への感謝の思いが神野のペースをさらに上げた。
神野が走る5区は、箱根駅伝の全10区の中で、最長距離にして高低差864メートルの山上りを伴う難コース。
全区間で最長となった2006年以降、5区で区間賞を獲得した大学が必ず往路優勝を達成しているため、最も注目を集める区間となっている。
そんな箱根駅伝の最大の勝負区間となる23・2キロを神野は、1時間16分15秒で走破。
2012年に柏原がたたき出した1時間16分39秒の参考記録を24秒も更新した。
164センチ、43キロ。
大会にエントリーした336選手中最軽量の神野。
厳しい夏合宿の最中には体重が30キロ台になることもある。
そんな神野について監督は、坂道や風などに弱そうに見えるが、体幹トレーニングの成果で走りがブレなく、むしろ悪条件の方が強さを発揮する、と話す。
順天堂大学・今井正人、東洋大学・柏原竜二に続く3代目「山の神」に導かれた青山学院大学は、5時間23分58秒の往路新記録で圧勝。
その翌日の復路も青山学院大学のフレッシュグリーンのたすきがトップを譲らず、10時間49分27秒で初の総合優勝。
往路、復路、総合全てで最高記録を塗り替える完勝だった。
総距離217.1キロを各大学10人のランナーが1本の「たすき」でつなぐ箱根駅伝。
来年はどんな名勝負が生まれるのだろうか…。