Legend Story
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15.10.03
小原日登美 悲願の金メダル

ロンドンオリンピックの金メダリストの中で、最も注目を浴びた選手のひとり、レスリング女子48キロ級、小原日登美。
現役最後の試合をオリンピック金メダルで締めくくった。

51キロ級で6度の世界選手権優勝を誇るが、オリンピックにはこの階級がない。
1階級下の48キロ級には、妹・真喜子がいるため回避し、55キロ級でオリンピックを狙ったが、その階級には「霊長類最強の女子」吉田沙保里がいた。

2002年の全日本選手権決勝で小原は、吉田と対戦。
わずか25秒でフォール負けした。
「この先どんなに練習しても沙保里を倒せない」
そう思った瞬間、目標だったオリンピックが目の前から消えた。

世界選手権代表から外れた2003年には心が壊れ、風呂場でカミソリを持ったこともあった。
実家で引きこもり、過食により体重は3カ月で20キロも増えた。
診断の結果はうつ病だった。

2度の引退と復帰、度重なるけがと苦しみを乗り越え、妹から夢のバトンを受け継ぎ、ようやくたどり着いた10年越しの大舞台、オリンピック。

迎えた運命の48キロ級決勝。
激しい組み手争いに両眼のコンタクトレンズは外れ、視界不良の中で戦った。

勝負を懸けた第3ピリオド、18秒に押し出して1ポイント奪うと44秒にバックを取り1ポイント追加。
会場に響くオバラコールが、栄光へのカウントダウンに変わる。
そして試合終了のブザー。
勝利の瞬間、小原はマットを両手で力いっぱい叩いて、魂の叫びを上げた。

何度も諦めたオリンピック・・・金メダルを胸に、表彰台の中央で笑顔がこぼれる。
小原日登美のレスリング人生は、たくさん迷い、たくさん泣き、つらいことの連続だったが、その長く険しい道の先に待っていたのは、最高の結末だった。