Athelete News
  • mixi
  • Facebook
  • ツイッター
  • Google
14.11.08
世界のトップと肩を並べる
今週の「ATHLETE NEWS」は、テニスのマリア・シャラポワ選手のフィジカルトレーナーを務めていらっしゃる中村豊さん。アメリカのテニススクールでは、錦織圭選手のトレーナーも担当された方、ここ最近の輝かしい活躍についてもお伺いしました。

ー中村さんは、マリア・シャラポワ選手の専任フィジカルトレーナーということですが、シャラポワ選手というとちょっとワガママそうなイメージがあったりしますね。

「テニスの選手は個人競技なので、自分に必要なもの、大切なものを周りから吸収する。それを表現するという仕事なので、周りから見ると厳しい選手です。彼女のパフォーマンスというのは常に一流として求めますから、周りから求めるものも高いし、自分に求めるものも高いですね。周りから見るとかなり厳しい選手として見られるんですけど、日々接していて、すごいなと思うのは何をやるにしても極めるんです。だから、周りから見るとちょっと近寄り難い選手、それだけのオーラを発してる人間なんですね」

ーシャラポワ選手は、他の選手と比べてフィジカル的にはどうなんですか?

「身長が188センチと長身で、重心が高いですね。手足も長いし、そうなると動きにくい。でもその分、力が出るんですね。野球のピッチャーで言うと、身長が高い選手は腕が長いし足が長い、それだけ力が生めるんですけど、それにかかる体の負荷が高くなるんです」

ー筋力が無いと、素早く動けないですもんね。

「そこのブレが生じる分、力が出るのでそこをコントロールする体幹、体の強さが求められますね。体のメンテナンス・強化は、小さい選手と同様に違う形でやっていきます」

ーシャラポワ選手の専属トレーナーになる前は、どんな選手を教えてこられたんですか?

「ここ最近で印象に残るのは、錦織圭です。当時フロリダで、彼が渡米して来てファンドを立ち上げて、彼を育成したいという時期がありましたので、その時にコンタクトをとっていただきました。彼が14歳に成り立ての頃ですね」

ーその時点で、彼は素晴らしい存在になると感じていましたか?

「彼の持ってるアスリートとしての素質や動き方、オーラというのがあるんですね。それは年齢を重ねて出て来る場合もあると思うんですけど、彼の場合は小さい頃から、初めて会ったのが12、3歳くらいですかね。14歳から一緒にやり始めたんですけど、やはり輝くものがありました」

ー12〜3歳頃の体は、フィジカルに重点を置き始める時期なんですか?

「フィジカルに重点を置くといっても、鍛えて体を大きくするという事ではないんですね。野球もゴルフもそうですけど、特化した動きの反復になりますから、体の歪み、左右のバランスが少しずつ崩れて来るんです。一日でフォアハンドばかり打ったり、サービスを打ったり、ピッチャーもそうですけど右から左への回旋運動なので、それを毎日100回200回繰り返していくと、体の動かし方、そっちは上手になるんですけど、反対側があまり上手じゃない。筋力の付き方も変わって来るし、可動域も歪みが出てきますから、そこを矯正してとるのがトレーニングです。そこを特化していかないと体を大きくしても、体の出力が上がらないんですね。車で言うマニュアル、1速から5速へ上げる時に、いかにスムーズに上げられるかということです」

ーその後も、他の技術が身に付きやすくなるんですね。

「フィジカル的に体の動き方、動かし方を学べば、コーチの求める動きが出来たり、選手が求める動きが出来ます。錦織というのは体の動かし方が上手で、テニスラケットを持っての表現力がものすごい上手なんですね。それと体の強さという面でギャップがあったので、ケガが多かった時期もありました。それは日本人と海外の選手の体格を比べると、テニスの世界でも男子だと身長で10センチ差、海外の平均は185センチですから、体重でいうと7〜8キロ、やっぱり筋量が多いんですよね。それだけ彼らの体は力が出やすい体なんです」

ー今年、錦織選手は大活躍ですね。これは何が変わったんですか?

「トップのマリアもそうですけど、共通するのは周りが変わったのではなくて、自分が求めているんですね。指導者が良かった、チームが良かった、結果的にはそうなんですけど、選手が求めてるオーラ。そこと指導者がタイミング良く重なり合って、結果が出るという事なんです。ツアーを回り始めて7〜8年経ちますから、年齢も24歳で、あと3〜5年もう少し本腰入れて頑張りたいという気持ちが強くなったので、こういう人がいい、ああいう人がいいと、とそこを固める決意が出たんじゃないですかね」

ー先ほども、シャラポワ選手は自分に厳しいと仰ってましたけど、そうやって貪欲になっていく事なんですね。

「やっぱり一流の選手は求めるものが高くなりますから、僕らもプレッシャーがかかりますけど、それは良いプレッシャーですね。一流と接するには、こちらも一流でないといけませんから」

ー上位8位で争うワールドツアーファイナル、錦織選手は日本人初の出場を決めましたね。これはどういう大会なんですか?

「シンプルに世界のトップの8人をロンドンに集結させて競い合う。ラウンドロビンといって、8人いて、4人4人に分けて総当たり戦をします。上位2名が準決からスタートという事なので、8人の中でも運というのはあまり無いんですね。勝たないと次のラウンドに行けませんから」

ー錦織選手がどんな試合を見せてくれるのか楽しみですけど、錦織選手はどうですか?

「チャンスはあると思いますし、昔、彼に言ったのはアスリートの中で誰が一番楽しんでプレー出来ているかというと、世界のトップなんですね。フィジカル的にもフィットしてるし、技術もあるし、精神的にも落ち着いてる。トップに行けば行けるほど、テニスが面白くなる。圭もあそこのレベルに行ってますけど、テニスの楽しさという面ではプレッシャーもあるし、色々あると思うんですけど、今テニスを楽しんでるんじゃないですかね。それをまた、トップの選手の中で戦えるプライドが出てきますし、やっぱりやってて面白いと思いますね」