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20.05.30
東京パラリンピックの見どころ
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今週の「Athlete News」は、先週に引き続き、作家の乙武洋匡さんをゲストにお迎えしました。
(※このインタビューは、東京オリンピック・パラリンピックの延期が決定する前に行われたものです)

乙武洋匡さんは、1976年生まれ、東京都のご出身。
早稲田大学在学中に出版した『五体不満足』がベストセラーに。
卒業後は「スポーツのすばらしさを伝える仕事がしたい」との想いから、スポーツライターを中心に活動。
その後、教育に強い関心を抱き、小学校教諭などを経て、現在は、作家としてメディア出演や講演活動でご活躍されています。



──乙武さんは、『OTOTAKE PROJECT』に取り組んでいらっしゃいますが、これはどういったプロジェクトなんでしょうか?

“足が欠損している”と言っても色々な状態の方がいらっしゃるんですけれども、私の場合は、“両足の膝もない”ということになるので、欠損の中では「最重度」になるんですね。これまで、そういう(膝がない)状態の方は、義足を着けて歩くことは難しいと言われていました。
ところが、「ソニーコンピュータサイエンス研究所」の遠藤謙さんという義足エンジニアの方が、人間の膝を再現するようなモーターを開発したんですね。そしてそのモーターを組み込んだ「ロボット義足」が開発され、それを装着することによって、私のような身体の人間でも歩くことができるようになるかもしれない、という可能性が出てきたんです。

実際に、2018年の4月から(義足を着けた)歩行練習を始めています。ただ、これはなかなか大変なことでありまして。遠藤さんたち専門家に言わせると、私の身体というのは、“三重苦”であると。
1つは今もお話しした、“膝がない”こと。
人間の膝というものはすごく優秀で、“歩く”という動きに膝が果たしている機能は、非常に大きいらしいんですね。でも、私の場合はその“膝”がないので、歩くには非常にハンデがある。
2つ目は、“手がない”こと。
“歩く”のに手はあまり関係がないと思われがちなんですが、人間が歩く時には手でバランスを取っていて、これがとても重要なんだそうです。私の場合は肘にも満たない短い腕しかないので、この短い腕をバタバタさせても、なかなかバランスが取れないので、そこも(歩くのに)ハンデであると。

実は、3つ目のハンデが一番重要らしいのですが、私には“歩いた経験がない”、ということなんです。
同じ障害者であっても、「中途障害者」と、私のような「先天性の障害者」がいます。中途障害の方であれば、以前に“歩いていた”という経験があるので、義足で(機能を)補ってあげることによって(歩くということを)思い出すことができるそうなんです。
ただ、私の場合は生まれつきこの身体だったので、二足歩行をしていた時期がほとんどないんですよ。ですから、いくら義足で補ってもらっても、“歩くってどういう感覚なのか”ということもゼロから身につけていかなければならない。そこが非常に難しい、苦労している点ではあります。

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──1つ1つステップを踏んでいくうちに、考え方だったり、ご自身の変化というのはありましたか?

この義足のプロジェクトは、“私のため”というよりは、将来歩けるようになりたいと思いながらこれまで可能性がなかった方々に、「こういうテクノロジーが出てきたので将来的には歩ける可能性が出てきましたよ」という希望を届けるためのプロジェクトにしたいと思っているんです。ですから、体力的にはしんどいものがあるんですが、少しでも勇気を与えられるように、もうちょっと頑張ろうと思っております。

──東京オリンピック・パラリンピックですが、乙武さんが注目しているパラリンピックの競技は何でしょうか?

魅力のある競技はたくさんあるんですけど、私が1番楽しみにしているのは、「車いすラグビー」ですね。
これは非常に面白くて、またの名を「マーダーボール」、つまり「殺人ボール」と言われているぐらい、車いすと車いすが“ガチャーン!”とぶつかり合う音が体育館中に響きわたる、本当に迫力に満ちたスポーツなんです。ただ“ぶつかり合う激しさ”だけではなくて、観ていると、非常に緻密な戦略が必要な“頭脳戦”であるということもわかってくるんですね。

──去年はラグビーで日本は熱く盛り上がりましたからね!

実際、(日本の)車いすラグビーは、先の世界選手権(2018年)では金メダルに輝いている、今のところ世界一強いチームなんです。ですから、パラリンピックでもメダルを狙える位置にいますので、ぜひ、みなさんにも注目して応援していただければと思います。

──その車椅子も、1人1人、選手によって違うんですよね。

そうです。車いすも、“日常で使う車いす”と“競技用で使う車いす”とはぜんぜん違うものなんです。競技で使う車いすは、タイヤが“ハの字”になっていて、スピードが出やすくなっていたり、小回りもききやすくなっています。普段、みなさんが街中で見かける車いすと競技用の車いすの違いに注目してみても面白いと思います。

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──改めて、東京パラリンピックを大成功させるためにはどうしたら良いでしょうか?

応援してくださる方だけでなく、どちらかというとメディアのみなさんにお願いしたいことではあるんですけれど。
私は、大会を通して不甲斐ないパフォーマンスに終わったパラアスリートを、“批判できる風潮”になってほしいなと思うんですね。
というのも、オリンピックの選手であったりプロ野球だったりJリーグだったりサッカー日本代表だったり…期待されている選手やチームが期待通りの活躍ができなかった時って、ファンからはブーイングが出たり、メディアでは批判的な記事を書かれたりしますよね。
じゃあもし、パラリンピックでメダルを期待されていたような選手が、期待通りの活躍ができなかった、パフォーマンスが発揮できなかった…という場合にどういう反応が起こるのかと考えると、私が予想するに、やっぱり“批判”は起こりづらい。どちらかというと、「結果は出なかったけれども、障害を克服してここまで頑張ってスポーツに取り組んできたんだから」と、擁護の声の方が多くなるんじゃないのかなと思うんです。

でも、パラアスリートの方々にお話を聞いてみると、「そうやって擁護をされてしまうのは逆に悔しい」「まだまだ純粋にアスリートとして見てもらえていないのかなと感じてしまう」と仰っているんです。
“障害者を批判する”ということは、日本の文化的にもこれまで行われてこなかったので、みなさんの心情的にも難しいものがあるとは思います。しかし今後、「パラリンピック」というものが、純粋にスポーツとしてみなさんに楽しまれ応援されるようになるためにも、(パラリンピアンが)良い結果が残せなかった場合には、オリンピアンと同様の扱いで、激励や厳しい言葉が飛び交う方が健全なのかなと、私は思っています。
現実的にクリアしなければいけないハードルはたくさんあると思うんですが、いつかそんな日が来たらいいなと思っています。

──さて、番組では、ゲストの方にCheer up Songを伺っています。乙武さんの心の支えになっている曲を教えてください。

新しい地図の「雨あがりのステップ」です。
私たちが普段生活していると、調子が良い時期もあれば、なかなかうまくいかない時期もあると思うんですが、この「雨あがりのステップ」というのは、“うまくいかなかった時期があっても頑張っていこう”という気持ちになれる曲だと思います。


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今週のゲスト、乙武洋匡さんのサイン式紙を1名様にプレゼントします!
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