Athelete News
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16.10.01
400メートルリレー 世界一のバトンパス技術
今週の「Athlete News」は、リオオリンピックの陸上男子400メートルリレーで、第2走者を務めた飯塚翔太選手にお話を伺いました。


──日本中が大興奮しました。アジア新記録を予選でも樹立されて、それをさらに上回っての銀メダル素晴らしかったですね

予選からアジア記録を出したのは、すごい勢いがつきましたね

──チームの雰囲気、手応えはどうでしたか?

予選の前から、事前の合宿のタイムが良かったので、これくらいの記録が出るという予測はしていたんですよ。
ちょうど僕らの前で、中国のチームがアジア記録を出して、そこでみんな火がつきましたね。記録を超えてスッキリしました。

──アメリカ、カナダ、イギリスもいた中での銀メダル。確定した瞬間のお気持ちはいかがでしたか?

いつも、バトンはどこかしら落とすんですけど。今回、全員がつないで、全員がゴールした中での2位というのはかなり大きいことだと確信しました。
日本人に走る能力があるということを、わかってもらえたかなと感じましたね。

──日本人選手は、まだ9秒台が出せてなくて。各国のメンバーは、全員が9秒台のベストタイムを持っているチームもいる中すごいことですよね

1人も9秒台はいないし、決勝にも残っていない、僕らチームの合計タイムだと8位くらいなんですよ。
なので、バトンで他の国より1秒以上差をつけてるんですよ。距離でいうと10メートルちょっとくらいなんですけど。

──飯塚選手の専門は200メートルですが、100メートルのリレーに出るということはどうなんですか?

100メートルのリレーに関しては、もらって渡す区間があるんですけど。そうなると120メートルくらい走らないといけないんですよ。
カーブでもらってカーブで渡すので、直線の100メートルに比べて難しいんですよ。
”120メートルくらい走る”っていう気持ちでやるのが大事ですね。

──世界中を驚かせたバトン技術「アンダーハンドパス」。具体的にはどういう風に手渡しているんですか?

手の平を下に向けるんですよ。そこからちょっと後ろに伸ばして、下からもらうっていうバトンなんですけど、お互いに手が触れて握り合ってバトンをもらうんですよ。

──渡しづらくないんですか?

そうなんですよ。「アンダーハンドパス」の一番の特徴は、もらう方の走りが崩れないんですよ。

──「アンダーハンドパス」の方が安全で速い、難しい、など言われます。実際はどうなんですか?

一番安全ですね。今回のリオから新しいバトンパスにして、今まではあまり手を後ろに伸ばさなかったんです。
お互いが近い状態で渡すのでミスが少なかったんですよ。それだと「利得距離」がもらえないので、今回は手を伸ばした状態でやるので、ちょっとリスクは増えるんですけど、オーバーとアンダーの両方のいいところをとって新しいバトンにチャレンジしました。

──予選から決勝で”さらに腕を伸ばすようにした”という記事を読みました。それは、大会の中で直前に決めたんですか?

そうですね。僕ら前の走者が、”ここにきたタイミングで出る”っていうテープがあるんですけど、それを伸ばしたんですよ。
”靴の4分の1”、7センチくらいなんですけど、それを決勝に向けて伸ばしました。

──7センチでもけっこうリスキーなことなんですか?

そうですね、けっこう変わるんですよ。予選のデータを分析して、”4分の1なら渡るだろう”ということになりまして、攻めました。

──決めたラインに前の走者が来た時に、信用して全速力で走るものなんですか?

そこが一番大事なんですよ、もらう方は逃げる気持ちで走らないと。
どれだけ高いスピードでバトンパスができるかというのが一番大事なんですよ。信用して、どれだけ思いっきり出られるかですね。

──決勝レースでトラックに登場した時のサムライポーズ、あれはどなたが言い出したんですか?

あれは僕が考えて(笑)。ちょうど、パフォーマンスがあるというのを忘れてて、直前で”ヤバイ!”と思って、「じゃあ、サムライやる?」っていう話になって(笑)。

──決勝前に考えられるくらいリラックスされていたんですね

みんなリラックスしてましたね。雰囲気を楽しむような、”自分たちの力を見せつける!”みたいな。

──飯塚選手は最年長ですよね?”自分がいい雰囲気にしよう”みたいな意識があったんですか?

僕は、基本的にみんなの後ろで、何かあった時にコメントしたりとか、3人を自由にさせてあげることがチームにとって一番いいかなと思っていたので、後ろにいて支えるような感じでしたね。

──毎回、ゲストの方のお気に入りの一曲を伺っています。飯塚選手が試合前に聞いている曲や、心の支えになっている曲を教えてください

Stevie Wonderの「A PLACE IN THE SUN」という曲を、けっこう聴いてるんですよ。
歌詞の中に「長い孤独な川のように、僕らは走り続ける。でも、それは太陽の当たるところがあって、みんなが望むところだ」みたいな歌詞があるんですよ。
僕の恩師が「勝負師は孤独だ、でも、それは間違っていることじゃないから頑張れ」と言っていて、そこから聴いてるんですよ。

──陸上競技って個人競技じゃないですか、孤独との戦いみたいなのがあるんですか?

自分との戦いなので、周りに流されないようにとか、自分の軸をずらしたら終わりだと思うので。
自分のやりたいことを貫くっていうのは大事ですね。

──スタート前の独特の緊張感、あれはどういう心境でスタートするんですか?

騒いでる会場が一気に静まるんですよ。その時に皮膚が裂けるような緊張感というか、興奮、アドレナリンが出るんですよ。
それくらいアドレナリンが出てくれた方が、パフォーマンス発揮できるので。

──リレーは楽しいですか?

楽しいですね。1人じゃない唯一の種目で、勝利も一緒に味わったり、悔しさも一緒に味わったりできるので。