Athelete News
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16.08.27
4年後の希望に向かって
今週の「Athlete News」は、先週に引き続き、日本マラソン界のレジェンドで、現在はDeNAランニングクラブの総監督を務めていらっしゃいます、瀬古利彦さんにお話を伺いました。


──4年後の東京オリンピックに向けて、日本のマラソン界が世界と戦うために必要なもの、強化すべきものを伺っていきたいと思います
一つランクを上げるためにはどうしたらいいですか?


まず、高岡選手の日本記録を破ることですね。そこで初めて、世界にちょっと近づいたという感じがします。
そのためには、間違いなく練習量が足りないです。

──昔と違うんですか?

昔より減っていると思います。
高橋尚子さん、有森裕子さんの時代と比べたら女子も減っていますね。
減っているから、タイムが10年間破られていない。女子もね、2004年の野口さんの記録がいまだに破られていないんですよ。
例えば、これがいいかどうか分かりません。僕らは超長距離というのを走ったことがあるんですよ、最高88キロ、90キロですね。

──それはどれくらいのペースですか?

4分か3分半くらいですけど。宗さんなんかは、僕が90キロ走ったって言うんで120キロですよ。一日中走ってるんですよ(笑)。
そういう無茶なことをちょっとしないと、当たり前のことをやっていてもね…。
”え〜!こんな練習やるの!?”っていうくらいの練習をしないと、いまの若い人達はそこが足らないと思う、無茶なことをしないんですよね。

──ラグビーもシンクロも、ハードワークになってまた復活したという面もありますからね

いまのコーチの人達は、すぐ怪我を恐れて「昔の練習は古い」とか、そういう話になってるんですよ。

──日本国内は箱根駅伝、実業団の駅伝があって、あの距離からマラソンにいったら、そのまま順調にいきそうな気がするんですけど
まず、その時点での走り込みが足りないんですか?


マラソンをやろうという意識がないから、20キロしか走らないんですよ。ちょっとでもマラソンをやろうと思えば距離を踏みますから。
朝でも、1キロでも2キロでも走ろうと思うんですよ。1キロが42.195キロの、最後の2.195キロにつながっていくんですよ。

──そこでの粘りが最後に影響してくるんですね

30キロからの粘りが、そういうことなんですよ。普段の生活、意識がないとマラソン走れません。それをいまやってるのは、ケニア人です。
毎日の生活が彼らは命がけです、走らなかったら生活できないんですから、我々は甘いです。
会社から給料もらって、走れなくても給料もらえますから。彼らは走れなかったらゼロですから。その違い、頭の中に”世界記録を出すぞ!” ”オリンピックで優勝するぞ!”と、365日彼らの頭の中にあるんですよ。

──箱根駅伝は、特殊な区間がありますよね。5区、6区というのは特殊な技術になるので
そこに大学4年間を特化させるのもマラソンにつながらないのかなという気もしますね


トップ選手を山登りに使っちゃいけないんですよ。あれね、登りは3分30秒とか、4分で走ればいい、技術なんです。
マラソンって3分切っていかないといけないから、3分切っていくような走りをしないといけないのに、1年中3分30秒とか4分の練習をしてるんです。

──いい選手をそっちに持っていってしまうと、日本陸上界にとってはということですか

だから私は、2区をしっかり走らせろと言ってるんです。青学の選手たちは、本当のエースの人は2区を走らせますね、あれは正しいと思います。

──東京オリンピックに向けて瀬古さんが一番期待してる選手は誰ですか?

村山謙太選手、トヨタ自動車の服部選手、青山学院の一色選手とか、いい選手が出てきていますね。

──やはり、箱根駅伝からマラソンにつながっていくということですね

そういうことになっていかないと、日本のマラソン界はダメになります。
我々がやる仕事だと思うし、次の4年後まであっという間ですよ。

──今週も、瀬古さんのお気に入りの一曲を伺いたいと思います。瀬古さんが現役時代に聞いていた曲や心の支えになっていた曲を教えてください

Duke Ellingtonの「Take The "A" Train」ですね。これは、東京マラソンのゴール地点で僕らが演奏してるんですよ。
うちのかみさんとビッグバンドを組んで、ずっと10年間やってるんですよ。
僕は歌ったり、踊ったり、トークしたり、ドラムしたり(笑)。うちのかみさんの趣味に合わせてですね。やっぱりね、趣味を合わせないと夫婦生活は上手くいかないですよ(笑)。

──そうやって、マラソンに関わってるんですね

僕も、ボストンマラソンとかロンドンマラソンとか走ったとき、けっこう沿道で演奏してるんですよ。
”楽しいな”と思いながら、すごくパワーをもらうんですよ。音楽はいいですよ、力をくれますから。