Athelete News
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16.04.16
絶対王者であり続けるために
今週の「ATHLETE NEWS」は、フィギュアスケートの絶対王者、羽生結弦選手を長年近くで取材されてきた、スポーツライターの野口美惠さんをお迎えしました。

野口さんは、2008年から現在まで羽生結弦選手を取材されていて、14歳のスケート少年が21歳の絶対王者になるまでを綴った「羽生結弦 王者のメソッド2008-2016」が発売されたばかりです。

2週にわたって、羽生選手がいかにして絶対王者になったのか、そして、野口さんしか知らない羽生選手の素顔など、お話をうかがっていきます。



──先日ボストンで行われた世界選手権、ショートプログラムでは高得点を叩き出しましたけど、フリーでミスがあって敗れてしまいましたよね。
現地で取材されていたそうですが、いかがでしたか?


今までの試合に比べて、緊張感がまったく違うなと感じていました。周りのハードルは上がっているわけで、300点越えるのが当たり前、ノーミスが当たり前となっていて。フィギュアスケートという競技において、ノーミスというのは人生で1回か2回あるか…くらいなんですよ。

フィギュアスケートをやっている側であれば、これがものすごいことだと分かっているんですけど、周りは”同じこともできるんでしょ?”っていう風に見ている。本当に見えないプレッシャーの中で、奇跡に近いことを、またやらないといけない…その重圧が、今までとは違うものになっているなと感じました。

──オリンピックで金メダルをとって、いろんなプレッシャーに打ち勝ってきた羽生選手なので、プレッシャーとは無縁になりつつあるのかなと思いながら、
実は求められるものも高くなって、自分で、ある程度追い詰めてしまった部分があるんですかね


自分でもかなり追い詰めていて、普段の練習も、皆さんが求めているものを出さないといけないと、練習の段階で”今日が本番だ”と思うようにして、練習をすることを繰り返していたわけですけど。本当に、ノーミスが出来るようになっちゃってたんですね。

2月の終わりから3月にかけて、かなり調子が上がっていて、本人が言ってた言葉としては、「自分自身で、ノーミスできるんじゃないかと思ってしまっていた」と。今までの試合、NHK杯やグランプリファイナルは、”ノーミスをしよう”というか、挑戦心があって、人生で1回か2回しかできないものだから。
”そこに到達したい!”と思って頑張っていたものが、到達してしまったんですね。
それをもう一度やるという、モチベーションの作り方が難しかったというのは話していました。

──羽生選手は、なぜあんなに跳べるんですか?

4回転を回るって、人間の技術的限界値に近いんですけど、どうやって回るかというと、すごく高く跳ぶか、飛距離を出して滞空時間をのばすか、短い時間で速く回るか、ですね。
まず彼は細いですから、理論的に速く回れる。細いわりに筋力があるので、幅を出して飛べているんです。その2つを使って、4回転を跳んでいるので、かなり跳びやすい体をしているというのはありますね。

──ジャンプが美しいですよね。軸がブレないというか、あれが強みだと思っているので、逆に世界選手権はビックリしたんですよ。ここまでミスする羽生選手、久しぶりに見たというか……

逆に、あれだけミスをしたので来シーズン、また面白いことをやってくれるんじゃないかなと思っています。
今までの試合も、悪い試合の後にすごい成長があるということが多いので、来シーズン、また化けるような試合があるんじゃないかと思っています。

──野口さんの本にも、「一人反省会をする」って書いてあったんですけど、今回も一人反省会を開かれたんですかね?

開かれてたみたいです(笑)。試合終わって2日後の夕方にお話しする機会があって、「どうですか?」と聞くと、「やっと頭が冷静になってきて、考えられ始めた」と、いくつかお話されてました。試合直後は、悲しいのと、悔しいのと、珍しく「もう一回試合したい」なんて言って。
かなり混乱してる感じだったんですけど、2日後はかなり落ち着いていて、いくつかの理由の分析を始めてました。

──羽生選手が絶対王者になりえた理由というのは、なんだと思いますか?

やっぱり、頭脳ですね。練習で4回転を跳べるようになるのは、練習すれば、ある程度の選手はできるようになるわけですよね。
これを、本番の場所で力を発揮するにはどうしたらいいかっと言うと、それは精神面ですよね。
誰だって強いところ、弱いところを持っているわけで、自分の精神をどうやってコントロールするかっていうのを、頭で考えているんですよ。

──彼なりにメソッドを見つけて、さらなる高みを目指してる途中なんですよね。

まさに途中で、今回、グランプリファイナルですごい点数を出した後に、世界選手権はミスをしたっていうのも、歴史の中の一つになっていくんですよ。
ここからまた、「世界選手権でミスして良かったね」と言える日が、絶対に来るんだと思っています!

──ゲストの方のお気に入りの一曲を伺っているんですけど、羽生選手は競技の前にイヤホンで音楽を聴いてノッている姿が象徴的なんですけど、
羽生選手とは、「どういう音楽を聴いてるの?」など、お話をされたりするんですか?


オリンピックの前も、「どんな曲を聴いてるの?」っていう話はよくしてますし、彼はイヤホンに凝っていて、オーダーのイヤホンだったり…あと、何十万円もするものとか、音質にこだわっていますね。

──フィギュアスケートの方は音楽と合わせて踊るので、音楽との結びつきは他のスポーツより強いですよね

実は、イヤホンを集めてる選手は多くて、今回、18歳で4回転を全部で6本跳んだ金博洋(ボーヤン・ジン)選手は、2、30個持ってるって(笑)。
2つ用途はあって、試合前に自分の曲を聴きながらイメージトレーニングするっていうのも大事だし、他の人の曲が聴こえちゃうと嫌なんですよね。
他の人の曲のビートが耳に入ると、自分の呼吸がずれるんです。自分の持っている曲と、同じピッチのままで心拍数を整えてから試合にいくので、試合直前に他の人の曲は聞こえないほうがいいんですよ。

──他のスポーツの人が、集中するために聴く以外に本当に必要なことなんですね

彼の場合は、自分の曲だけじゃなくて、気持ちがノッてくるJ-POPみたいなのも聴いてるということでしたね。

──最近の羽生選手のお気に入りの曲を伺ったことありますか?

今は、BUMP OF CHICKENとかを聴いてるのかなと思います。

──紅白では、審査員をされていましたよね

紅白の時も、BUMP OF CHICKENのときは、彼はすごい楽しそうに、審査員ではなくて、ファンの一人でしたね(笑)。


来週は、羽生選手が辿ってきた道のり、そして素顔について伺っていきます。

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