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2024.12.07

頂点を目指して「チーム全員でもがきながら挑戦していきたい」

今週の「SPORTS BEAT」は、元日本代表選手で、現在はバスケットボール女子日本リーグ「Wリーグ」トヨタ自動車アンテロープスのヘッドコーチ、大神雄子さんにリモートでお話を伺っていきました。
大神雄子(おおが・ゆうこ)さんは、1982年、山形県のご出身。
バスケットボールの指導者だったお父様がコーチ留学をしていたロサンゼルスで見たバスケットボールに衝撃を受け、競技を始めます。
高校時代にはU-18日本代表にも選出。
2004年のアテネオリンピックには21歳で出場されています。
その後、長きにわたって日本代表のキャプテンを務め、日本人2人目のWNBAプレーヤーとなりアメリカデビューも果たしています。
競技生活からの引退後は指導者として活動を始め、3×3日本代表のコーチとして東京オリンピックにも参加されています。
そして、2023年6月2日、日本人としては3人目、日本人女性として初の快挙となる、国際バスケットボール連盟、FIBAの殿堂入り(選手枠)を果たされています。


──まずは殿堂入り、おめでとうございます。

ありがとうございます。

──2007年に貢献者枠として植田義巳さん、そして2020年度に佐古賢一さん。これに次ぐ3人目。快挙ですね。

最初にFIBAの方から連絡をいただいた時は、実はちょうど海外に挑戦している選手に会いに行っていたんです。“この連絡先は誰だろう?”と思っていたら、JBAの三屋裕子会長から「FIBAが連絡を取りたいみたいなんだけど、何か来ていない?」という連絡をいただいて、“もしかしたら”と思って折り返し電話をかけさせていただいたら、英語で「2023年のHall of Fame(殿堂入り)おめでとう」と。でも、リアクションを取れずにいたんです(笑)。
そのぐらいびっくりしたというのがその時の率直な気持ちでした。

──今まで大神さんがなさってきたことが認められた瞬間ですよね。それを実感したのはいつですか?

私には(発表の)2週間前から3週間前に連絡をいただいたんですが、「まだオフィシャルには話をしていないから」ということで、家族にも連絡していなかったんです。
海外にいたこともあり、自分の中で“これは本当のことなんだ”と受け入れるまでにちょっと時間がかかったこともあって、家族には伝えられずにいたんですが、その後、(殿堂入りを)伝えた時に両親がすごく喜んでくれて、これは感謝を伝えなければと思って、そこでやっと実感したという感じですね。悲願の殿堂入りだったので。
本当に環境に恵まれて、競技生活も35歳までプレーすることができたので、やはり一番に家族に感謝しています。

──そして、アンテロープスでは2022年からヘッドコーチを務めて3シーズン目ということですが、殿堂入りの時のスピーチでは「たくさんのコーチのもと指導していただいた」とおっしゃっていました。
ご自身がヘッドコーチになられた時、それまで選手として接していたわけですけれども、ギャップというか、“こういうところが思っていたことと違った”ということはありましたか?

今もそうなんですが、たくさんあります。
ただ、逆に考えてみたら、私にしかできないこともあるんじゃないかと思っているんです。
指導者の中ではまだ若い方なので、やっぱり選手にしっかり寄り添えるコーチでいたいということは一番に考えています。

──一緒にプレーしていた選手たちもいる環境ですよね。

そうです。トヨタのチームには、私が現役の最後の年に1年間一緒にプレーした選手が2人います。

──やりやすいですか? それともやりにくいですか?

私の考え方はちょっとおかしいかもしれないんですが、人と人の繋がり、 人と人との出会いなので、もちろんヘッドコーチと選手という役割はありますけれども、そこで繋がる対話とかコミュニケーションの部分は(役割や立場は)何ら関係ないと思っていますし、そういうところも考えると、(現役世代に近いヘッドコーチという立場は)ポジティブに考えられると私は思っています。

──選手時代から“こういうヘッドコーチになってみたい”という、信念やモットーみたいなものはありましたか?

私がコーチングの中で一番大事にしているのは、自他共栄。自分も周りの人も一緒に栄えていく、一緒に成長していくということ。あとは、アメリカや中国など海外でもプレーさせてもらう機会があったので、一期一会という、一生に一度しかできない仲間と出会いと縁を大切にして、全員で成長していく。この2つをすごく大事にしています。

──大神さんは日本代表のキャプテンも務められた経験もありますが、キャプテン時代の経験が生きていることはありますか?

“キャプテンだから”というより、“キツい時や苦しい時に戻れる場所があって、それをちゃんと全員が口にできるか”というところは、私が現役中にすごく大事にしていたことですし、そこが勝負の分かれ目になってくると思っています。
それがディフェンスなのか、リバウンドなのか、1本ここでシュートを決めるというところなのかということは、もちろん経験は重ねていかなければいけないと思うんですけれども、そこは自分自身も現役の時から感じてきた部分なので、それをどうやって今の選手たちに伝えたり、環境を作ったり、機会を作るか。そして、そういうところを学んで勝敗に繋げていくかというところが今自分でも課題ですし、チームも今、ここをもがきながら戦っているシーズンになります。

──苦しい時のよりどころを作るということが大事になる?

戻れる場所というものがあるって、すごく大事だと思うんです。じゃないと、何か少しうまくいかない時というのは誰にでもあると思うんですが、その時に、「あれもしなきゃいけない、これもしなきゃいけない、こうした方がいいのかな」と、1人1人が違う場所に行ってしまう。それをキャプテンが中心になって、「戻る場所が必要だよね、自分たちの目的はここだよね」と引っ張っていくことは必要じゃないかなと感じています。

──そういう意味では、大神さんも、今のチームのキャプテンに求めるものがあるということでしょうか?

そうですね。今のキャプテンの山本選手には、「チームカラーはキャプテンカラーだからね」と、「あなたがやりたいことの先に、セルフィッシュにチームカラーを作っていっていいんだよ」と伝えています。
また、コーチ(coach)という言葉の語源をたどると、ハンガリーのコチ(Kocs)という場所の名前が由来で、馬車がすごく有名だったんです。そこから“馬車で人を運ぶ”…“目的地に人を運ぶ”というのが「コーチ」という言葉の語源になったんだそうです。
なので私は、(チームを)目的地にしっかり導くことが(ヘッドコーチである)自分の役割だと思っています。

──大神さんが、選手ではなくヘッドコーチとして、つらかったり嬉しかったりするのは、どういうところですか?

今はシーズン中なんですが、やっぱり今、なかなか苦しい状況が続いているので、勝利にどう導いていけるのかという点は、自分の中でも自問自答を繰り返しています。
ただ、そこも含めて、ヘッドコーチとして、責任の所在…責任を取れるか取れないかという点については、ちゃんと責任を持って今の過程を踏んでいるので、そこに関しては、“苦しいけれど人生ってそういう場所だよね”ということも俯瞰で考えられているかなと思っています。

──いいことばかりじゃない、つらいときもある。だからこそまた嬉しさも倍増するわけですね。

そうですね。やっぱりそんな簡単なものではないし、簡単に手に入ってはいけないと思うんです。じゃないと長続きしないし、それよりもプロセスに全力を注ぐことの方が人としても大事だと思っているので、自分自身もそれを体現したいですし、それをちゃんと続けて選手に伝えることもコーチングの1つだと思っています。

──そんな大神さんがヘッドコーチを務めるアンテロープスですが、昨シーズンからの主力、キャプテンの山本麻衣選手、安間志織選手、平下愛佳選手らを中心に、多くの若手選手を起用するシーズンとなっています。
世代交代というのは常にどんなチームもいつか行わなければいけないことですから、そういう意味で、苦しみもありながら、自分たちのバスケを作り上げている最中ということですよね。

そうですね。 それでも、やっぱり勝負においては勝ち負けというものがどうしてもついてくるので、1シーズン1シーズン、選手だけではなくチームが、もちろんそこ(勝利)に対して向かっていっています。
ただ、1年目の選手に最初から結果だけを求めていくのではなくて、やっぱりラーニングプロセス、学ぶ過程は必ず踏まなきゃいけないですし、近道はないので、そこをちゃんと落とし込む作業は間違えないように、今コツコツやっている途中です。

──ヘッドコーチといっても、国の代表のヘッドコーチとはまた違って、パーマネントにあるチームなので、勝敗もありながらも、若手を育てていかなければいけない。両立させるのはなかなか難しいことですね。

そうですね。ただすごく面白いのが、“チームがこれだけ成長している”とか、“個人の選手がまた上手くなっている”という喜びを感じられるのも、またコーチの喜びなんです。 それを見られることも私には喜びで、(成長して)喜んでいる選手を見ると、やっぱり現場っていいなとひしひし感じる毎日でもあるんです。
自分自身も成長しなきゃいけないと、選手たちに教えられています。

──アンテロープスとして今目指しているバスケはどういうバスケですか?

平均身長は本当に低いですが、若さはありますし、だからこそ出せる、バスケットボールの本来の一番の楽しさ、速さ、スピードトランジション、切り替えというところを見せていきたいです。
見てくださっている方、応援してくださっている方に、「Wow!」という風になってもらいたい。「すごく頑張っているな、私たちも元気をもらった」と思ってもらえるような試合を毎試合展開していきたいですし、毎試合そういうエナジーを持って戦いたいです。

──アンテロープスの今シーズンの目標を教えてください。

やっぱりてっぺんを目指します。
多分、今日お話を聞いてくださっている中で、“この人、負けず嫌いだな”ということは多分感じてもらえたと思いますが(笑)、本当に負けず嫌いですし、選手たちもみんなそうです。だからこそ今厳しい練習、きついトレーニングをしっかりと耐えて耐えて成長しているところなので、やっぱりてっぺんを目指していきたい。ここは本当に変わらないです。
ただ、そこで見失ってはいけないのは、そこの過程をどれだけ楽しめるか、毎日の成長をどれだけしっかりと自分たちで感じられるか。そこに近道はないので、チーム全員でもがきながら挑戦していきたいと思っています。

──さあ、この番組は毎回ゲストの方にCheer up songを伺っています。大神ヘッドコーチの心の支えになってる曲を教えてください。

ネリーの「The Champ」です。
「The Champ」なので、“優勝者”とか、“チャンピオンを獲った!”という歌なんですが、これがまず洋楽だということで、私が海外でもまれてきたこともあって、皆さんに何か感じてもらえるのかなと思いました。
また、「The Champ」なので“優勝”なんですけれども、そのためにどんなことをしてきたのか、何回もプッシュアップを仕掛けて何回も走って往復をして、それでやっとなれたんだという…そんな簡単じゃないけれど、でも成し遂げるにはそれが必要なんだよと鼓舞され続けて、だから優勝できるんだよということを歌った曲だと思います。



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そして今回お送りしたインタビューのディレクターズカット版を、音声コンテンツアプリ『AuDee』で聴くことができます。
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