TOKYO FM & JFN38 STATIONS EVERY SAT.10:00-10:50

SPORTS BEAT supported by TOYOTA

TOKYO FM & JFN38 STATIONS EVERY SAT.10:00-10:50
TOP > SESSION-1
2022.10.15

3種目出場の裏側〜憧れの選手との絆〜

今週の「SPORTS BEAT」は、陸上女子中長距離界のエース、田中希実選手をゲストにお迎えしました。
田中希実選手は、兵庫県出身の23歳。
現在、豊田自動織機に所属されています。
女子1000m、1500m、3000mの日本記録保持者。
昨年の東京オリンピックでは、女子5000mと1500mの2種目に出場。
1500mでは8位となり、この種目で日本勢初の入賞を果たしました。
今年開催された世界陸上では、日本人選手初となる、800m、1500m、5000mの3種目に出場されました。

今回は、リモートでお話を伺っていきました。


──今週は世界陸上のお話を伺いたいのですが、800mも含めた3種目で挑戦された。これは日本だけではなく世界中が驚いたと思いますが、800mも走ろうと思った理由は何だったんでしょうか。

800mに関しては、実は、締め切りまでには800mのタイムも切れておらず権利を取れるようなポイントも稼げていなくて、実際は(3種目出場は)難しくなったので、一旦1500mと5000mで2種目で臨むことの方に気持ちを切り替えたんですけど、そこで辞退者が出たりしたことで結果的に800mの出場権利が入ってきた…という形になります。
その時に改めて“3種目に挑戦するかどうか”というところで、800mの権利を一旦諦めたにも関わらずまた(出場権利を)いただけた、そこの運は大事にしたい。また、出てみて初めて得られるものがわかるんじゃないか…と考えて、「とりあえずやってみよう」ということになり、3種目出場を決めました。

──3種目にエントリーするということは、当然スケジュール的にタイトになると思いますし、それぞれ距離によって求められることは違ってくるんじゃないですか?

そうですね。世界レベルになってきたら、1500mと5000m(の2種目に出場)とかは時々いるんですが、800mと5000mをやっている選手はあまりいないので。そこの部分でやっぱり難しいところは多いかなと思います。

──それぞれの3種目に、目標や目的は設定されていらっしゃったんですか?

やっぱりまだまだ力が及んでいない部分もあったので…。1500mに関しても、去年、一旦5000mで予選落ちして、あとは何も気にすることがない状態で、1種目にかけるのと同じような気持ちで1500mにかけて、やっとの入賞だったんです。そこで3種目それぞれの種目で「これ」という目標を決めたとしても無理なことが多いので、“とにかく経験してみる”ということを考えて今回はあまり目標を決めていなかったですし、振り返ってみたら、東京オリンピックの時も、大した目標は立てずに行って結果も出たので、“うまく波に乗っていければ何か得られるかもしれない”というイメージで走りました。

──9日間で5レースになったわけですよね。やっぱり回復は大変だったんでしょうか。

今まで、合宿中などでは「朝起きた瞬間に体が重い」というような状況はあったんですが、レース期間中は、種目が重なっていてもそこまでヘトヘトになることがあまりなかったんです。でも今回の世界陸上では、5000mの予選が終わったぐらいからそういうヘトヘトな状況になっていたので、ちょっと自分の中で焦ったりとかはありました。

──そして、東京オリンピックで3種目に出場し5000mと10000mで金メダルを獲得したオランダのハッサン選手が、田中選手が今回3種目に挑戦したことを称えられていましたけれども、それを聞いた時はどう思いましたか?

ハッサン選手にしっかり認識されているということがまず嬉しかったですし、そこの部分は3種目に挑戦して良かったなと思っています。
(世界陸上が)終わってからちょっと落ち込んでいたというか、気持ちの整理がつかなかったのですが、その時にハッサン選手の言葉が自分にとって本当に勇気、支えになったと思います。

──5000mの決勝の後、田中選手はハッサン選手に話しかけに行ったように見えたんですけれども、何かお話をされたんですか?

ハッサン選手の「頑張って」というメッセージを、5000mの決勝前にはメディア関係者の方から父を通していただいていたので、そのことへのお礼で(話しかけに行った)。私は英語が全然できなくて「サンキュー」しか言えなかったんですけど(笑)、ハッサン選手は多分わかってくれたのかなと思います。

──しかも、ハッサン選手から何かプレゼントをもらったんですか?

そうですね。テレビに映っていた時は本当にその一瞬のやり取りだったんですけど、トラックから出て荷物を置いている控え所のところでハッサン選手にもう1回会った時に、私が泣いてしまって、ハッサン選手が「あなたのことを誇りに思うよ」となぐさめてくれて、その時にハッサン選手がアップで着ていたTシャツとビブスをくれて、それがすごく嬉しかったです。

──ハッサン選手もなかなか結果が出ない時に大泣きしたという経験があるからこそ、田中選手に頑張ってほしいという思いが心からあったんじゃないでしょうか。

ハッサン選手の昔のエピソードとかを聞いて、逆にハッサン選手にもそういう時期があったんだなということで、ホッとしたりもしています。

──さあ、そしてこの番組では、毎回ゲストの方にCheer Up Songを伺っています。田中選手の心の支えになっている曲を教えて下さい。

私の心の支えになっている曲は、SEAMOの「Continue」です。

──「威風堂々」をモチーフとした曲ですけれども、好きになったきっかけは?

私が小学生ぐらいの時に、「夢をかなえるゾウ」という小説があって、それのドラマ(読売テレビ・日本テレビ系)も観ていたんですけど、そのエンディングで「Continue」が流れていたんです。家族みんなでそのドラマを観ていたんですけど、(「Continue」が)母の心に特に響いたらしくて。
その時は私は小学生で、(母は)ママさんランナーとしてずっとマラソンを続けていて、そこそこの成績も残している中で、母の中で“続けていくことがとても大事”という気持ちがあったんだと思います。それで「(“続ける”という言葉は)すごく大事な言葉だよ」と私に言ってくれて、当時私はまだ小学生だったので、多分、わかっているようなわかっていないような感じだったと思うんですけど、今は改めて、続けることは大事だなと思っています。

──最後に、新型コロナの影響で東京オリンピックが延期になった影響で、来年も世界陸上が開催されます。そして再来年にはパリオリンピックがあります。そこに向けての思いを聞かせてください。

やっぱりここまでいろんな経験をしてくることができたので、だからこそ、来年の世界陸上やオリンピックでは、それを実らせるような何か…もっとしっかりした成績を狙っていきたいと思っています。
具体的な部分はまだ言えませんが、やっぱり(東京)オリンピックの成績は超えたいと思っています。


来週も引き続き田中希実選手をゲストにお迎えしてお届けします。お楽しみに!
そして今回お送りしたインタビューのディレクターズカット版を、音声コンテンツアプリ『AuDee』で聴くことができます。
放送できなかったトークが盛りだくさん! ぜひ聴いてください!
過去1週間分の番組が無料でお楽しみいただけるradikoタイムフリー
番組を聴いて気に入ったら、SNSで友達にシェアしよう!
10月15日(土)OA分の放送はこちら