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2024.08.24

4度目のパラリンピックへ「自分の力がどこまで通用するのかワクワクしている」

今週の「SPORTS BEAT」は、柔道のパリパラリンピック日本代表、トヨタループス・半谷静香選手をゲストにお迎えし、お話を伺っていきました。
半谷静香選手は、1988年、福島県いわき市のご出身。
小さい頃から網膜色素変性症という進行性の目の病気でしたが、普通学校へ通い、中学校からお兄様がやっていた柔道部に入部。
中学、高校の6年間を柔道部で過ごした後、理学療法士を目指し筑波技術大学へ進学。
そこで視覚障害者柔道と出会い、その年の日本選手権で優勝。
2010年からは数多くの国際大会にも出場。
パラリンピックは2012年のロンドン大会から出場し、今回のパリ大会で4大会連続の出場となります。


──半谷選手がパリパラリンピックで出場する視覚障害者柔道ですが、現在、半谷選手はどの程度「見る」ことができているのでしょうか?

一応「J1クラス」ということで全盲の扱いなんですが、みなさんは真っ暗を想像するかと思いますが、私の視界は一応、光、明るさがわかる程度の視力が残っています。
ですから、夜歩いていたら車のヘッドライトが見えたり、花火がなんとなく見えたりということもたまにはあるんですけれども、昼間は真っ白。ただ、白い世界を歩いている、何も見えない、という感じの見え方です。

──柔道をしている時の相手は見えてない状態なんですか?

そうですね。今はもう、相手は全然見えていないです。

──中学生の見えている頃に始めた柔道と、今やっていらっしゃる柔道との違いはどういう部分になりますか?

まず一番大きな違いが、“組み手争いがない柔道”が私たちの柔道です。
見えている人たちの柔道であれば、襟と袖を取り合う、掴みあう、“組み手争い”というものがあるんですけれども、私たちの場合は最初から組んだ状態で試合が始まります。
ですから、見えなくて突き指をしてしまうとか、そういうことがなくなったのは私にとってとても良かったですし、工夫できることが増えたという点で面白さを感じています。

──相手が見えない状態で、相手の技というのはどの程度感じ取れるものなんですか?

私が常に意識しているのは、相手の重心の位置です。
重心の高い低いももちろんですし、右に寄っているか、左に寄っているか、腰を引いているのかということは、持っている手から感じることができます。
ただ、自分が緊張していたり、体の姿勢が真っ直ぐじゃない時は感じにくいので、試合の中で私はそこをすごく意識しています。自分が落ち着いて冷静に試合できているのか、真っ直ぐをキープできているのか、相手の動きに対して感じ取れているのかを自問自答しながら試合をしています。

──想像以上にたくさんの情報が手から伝わってくるんですね。相手の重心の位置がわかるってすごいですよね。

練習がやっぱり重要で。私たちは動画も見れなければ鏡も見えないですし、お手本を真似することもできないので、練習の中でコーチがフィードバックしてくれる言葉を頼りに、あと、自分の手ごたえを重ね合わせて、自分の経験値を深めて高めていく。
失敗と成功を繰り返していく中で、自分の中の重心の位置を作っていく、みたいな感覚です。

──コーチの言葉とのすり合わせというのは非常に大切になってきますよね。

そうですね。私がこだわっていることの1つに、言語化があるんです。
私達の“あとちょっと”“あと少し”が、同じ認識で使われているものなのかというすり合わせから入っていきます。指1本分違うだけで違う動きになってしまうし、違う感覚になってしまう。
なので、同じ優勝というものを目指している中で、どう勝ちたいのか、どういうものを作り上げていきたいのかというところを共通の認識にしないと同じものを目指せないのかな、というところで、今も言語化は意識してこだわっています。


──現代スポーツでも、より高いところを目指すために必要と言われている「空間認知能力」の強化を、半谷選手はルービックキューブを使ってされているとのことですが、いつからやっていらっしゃるんですか?

子供の時は目で見てやっていたんですが、この、手で触って分かるルービックキューブを使い始めたのは、コロナ禍の時です。やることがなかったので(笑)。

──色だけじゃなく、手で触ったら分かる突起物がついているルービックキューブですね。

これでわかるので、だれかの手を借りずに、目を借りずに、自分が楽しめる。そういうオモチャなんですけれども。
このコマを動かすことでどう動くんだろう、という想像を膨らませていく過程が面白くて、最初にハマったきっかけなんです。
それがどう柔道に活きてくるかというと、一試合場の中で、自分がどこに立っているんだろう、どういう動きをすればいいんだろう…というところ、真上から見た時の客観視に役立つというところがまず1つ。
もう1つは、技を教えてもらう時に、触って感じて試して話すという工程を持っているんですが、触って感じて作ったイメージをつなぎ合わせる時に、“内側から見るイメージ”を作るのが、このルービックキューブと一緒なんですね。
“内側から見る”というのが、見えている方々には伝わりにくいところではあるんですが、外側から見られない分頭の中ですべてイメージを完結させる、ということを“内側から見る”と自分は表現しています。

──もともと子供の時になさっていた時は、ルービックキューブを揃えられたんですか?

いえ、全然。子供の時の方がむしろできなくて、大人になって、目が見えなくなってから初めて揃えられるようになりました。

──今ではルービックキューブ、どのくらいの時間で揃えられるんですか?

だいたい3分くらいはかかってしまいますけど…(笑)。

<ここで半谷選手が実際にルービックキューブを実践してくれました!ルービックキューブの達人・藤木さんからのアドバイスも…!>

──見えない世界を言語化して、半谷選手はパリパラリンピックへと挑んでいきます。
パリパラリンピックは今月8月28日に開幕。半谷選手の柔道は9月5日から始まります。現在の心境をお聞かせください。

今、パリパラリンピック出場が決まって、とても嬉しいというのが率直な気持ちです。
2年前に右膝を手術していることもあって、選考レースへの参戦が遅れました。
去年9月から国際大会に復帰したんですけれど、6大会でランキングを上げることができて、間に合ってよかったな、ホッとしたなというところがまず一番最初の気持ちでした。
今回から弱視と全盲がそれぞれ分かれてクラス分けを行って、それぞれの金メダルを目指して行く形になったので、私としては初めての挑戦になるので、自分の力がどこまで通用するのか試してみたいなとワクワクする気持ちが強いです。
これまでは自分の力を出し切れない部分も多くありましたし、今回で4回目なんですが、これまでの3大会は“もうちょっとやれたのに”と思うところもあって、悔しい思いをしてきたんですけれども、パリパラリンピックからのJ1クラスだったら出し切ることができるんじゃないかなという期待が強くあります。

──この番組では、ゲストの方にCheer Up Songを伺っています。半谷選手の心の支えになっている曲を教えてください。

広瀬香美さんの「ロマンスの神様」です。
試合の前のアップに聴くことが多いんですが、クロストレーニングでクロスカントリースキーをしていることもあって、気持ちが上がるし、リズムを取りやすい冬の曲ということで、この曲を選んでいます。

東京パラが終わってからクロスカントリースキーを始めたんですけれど、見た目は全く柔道と似ていないんですが、私の感覚としては似ていて、2つともバランスを保つというところで共通の部分があるなと思っているんです。
柔道は他者、相手によってバランスを崩される競技。
スキーは環境要因によってバランスを崩される競技。
それを効率よく力を逃がしたり、効率の良いフォームを会得したりという点で似てるいるかなと感じて始めました。


今回お話を伺った半谷静香選手のサイン入り色紙を抽選で1名の方にプレゼントします。
ご希望の方は、番組公式X(旧ツイッター)をフォローして指定の投稿をリポストしてください。当選者には番組スタッフからご連絡を差し上げます。

そして今回お送りしたインタビューのディレクターズカット版を、音声コンテンツアプリ『AuDee』で聴くことができます。
放送できなかったトークが盛りだくさん! ぜひお聴きください!
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