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2024.07.27

恩師・長嶋茂雄氏との絆。そして監督代行として挑んだアテネオリンピック

今週の「SPORTS BEAT」は、野球で2004年のアテネオリンピックにヘッドコーチとして参加し、銅メダルに導いた中畑清さんにお話を伺っていきました。
中畑清さんは、1954年、福島県のご出身。
1980年代には読売ジャイアンツの中心選手として活躍し、競技生活から退いたあとは、指導者としてジャイアンツの打撃コーチ、2004年アテネオリンピックのヘッドコーチ、そして横浜DeNAベイスターズの監督などを務められ、現在は野球の解説やタレントとしてもご活躍なさっています。

今回は、なんと高見さんが中畑さんのご自宅に訪問!たっぷりお話を伺っていきました。

──本日は、調布市にあります中畑さんのご自宅にお邪魔しております!調布に住まわれたのは、長嶋茂雄さんの存在があったということですが?

そりゃ、こだわりですよ。常に、長嶋さんに追いつけ追い越せと、背中を追いかけてきている人生ですから。

──それだけ中畑さんにとって長嶋さんは憧れの存在ということなんですね。

今でもそうだね。今でもオヤジ(長嶋さん)の背中を追いながら、1歩でも近づきたいなと。
(長嶋さんは)太陽のような人。どんな人でも喜ばせて笑顔にさせてしまう、そういう存在感がある人ってそんなにいないんですよ。長嶋茂雄はNo.1だと思うし、そういう人間になりたいなということで、ずっと追いかけています。

──長嶋茂雄さんの魅力とは?

「長嶋茂雄が持っている良さって何だろう?」と言ったら、もう、1も2もなく、“太陽”なんだよ。雲がかかっていないような太陽なんですよ。常に明るく、エネルギーをみんなに与えてくれる。元気を与えてくれる。そういう存在なので。
人間って、やっぱりマイナス思考になりやすいじゃない。(長嶋さんは)そのマイナス思考になっている時の姿を絶対に見せない人なんだよね。
その強さって何かな、というところを密かに自分なりに勉強しながら、少しでもかみ砕いて、自分の中でマイナス思考をプラス思考に変えていく努力。それを長嶋さんに教えてもらったしね。
人間はどうしたってマイナス思考になりやりやすい動物なんだから、それをプラス思考にしなきゃいけない。野球人、特にバッターはそうなの。3割しか打てないんだから。あとはみんな失敗している。その時の気持ちの切り替えをどうしていくかということは、仕事なんだよね。それが自然にできているのが長嶋茂雄なんですよ。

──(長嶋さんは)プラス思考にすぐ切り替えられるんですか?

見ていると、本当に引きずらないんだよね。悪いことをすぐ忘れるような、そういう天才的なところがあるんだよね。思ってるんだろうけど、でもそれを出さない。
並大抵じゃないと思う。精神的な強さ、それから周りに対する目配りや気配りがあって初めてなせる業だと思うし、人の真の強さというものを持ち歩いている人なんだなって、俺はもう確信しているので、死ぬまで追っかけて、半歩でも近づく。
…でも、あんまり近づくと「ん~、近過ぎるぞ、清」って言われると寂しくなっちゃうから、ちょっと距離を置いてね(笑)。

──中畑さんと長嶋さんの絆と言えば、2004年のアテネオリンピックですね。
アジア予選では長嶋監督のもと中畑さんはヘッドコーチとして挑み、アテネオリンピックに出場されますが、オリンピック本大会では長嶋さんがご病気のため、中畑さんが監督という立場で出場なさっています。

でも、いい時間を与えてもらえたなと、本当に感謝してます。
あのオリンピックの体験がなければ、私のその後の監督の道とか、いろんな道が開けなかったと思うし、監督代行という肩書だったけど、あのポジションを与えてくれたことには(感謝している)。
命懸けじゃない。監督の辛さとか、難しさ、プレッシャーで、本当に体中しびれて休まる時がないの。(監督)代行が決まってからは、ちゃんと熟睡したって日なんてないもん。ミスターがいたから、ヘッドコーチとしてフォローしてあげたいという気持ちになるけれど、トップに立ってやるっていう仕事じゃないですよ。しかも、代行というポジションでやる仕事じゃない。それをやらせていただいたということで、ミスターには感謝してます。
何かの形で恩返しもしたいしね。それは、監督になって、少しでも野球界に貢献できたかな、ということそのものが恩返しになるだろうなと思いながら。
だって、監督になる時にも、長嶋さんに相談に行ったら、「ん~…君はね、楽しい監督になりなさい」って(笑)。普通、そんなそんな言い方ないじゃない(笑)。

──楽しい監督に?

うん。ミスター自身も、俺に似たものを感じてくれているところがあると思うんだよな。だから、変なプレッシャーをかけるよりも、「とにかく君自身が楽しい、野球観のある監督像というものを作りなさい」ということだったと思うんだよ。
そのことを守って、4年間。勝てなかったけどね。とにかくファンと共に“楽しい野球”というものを目指すことができたので、いろんな意味で、アドバイスをもらったことが実践できているし、恩返しも少しはできているかなという感じがしているけどね。


──アテネは素晴らしい思い出ですね。

アテネの2年間は、本当に、あんなに近くにいられて…本当に参謀というか、そういう意味では、何でも言ってもらいたかったし、また、何でも任せてくれたしね。
長嶋さんはもう、「人生最後のユニフォームだ」と覚悟を決めて着たユニフォームだから。それで、オリンピックの代表として選んだ選手たちが野球界の伝道師になってくれればいいんだ、という覚悟。その強いものを持ちながらやっていたので。
すごいプレッシャーよ。あの長嶋さんが、予選だけで喉が枯れちゃったんだからね。あのミスターが。そのぐらい集中して、絶対に金メダルを獲って日本の野球を世界に知らしめるんだ、レベルアップした日本の野球をアピールするんだ、この場所しかないんだ、という覚悟。

──金メダルへの強い思いが?

金メダルしか頭になかったから。
オヤジが倒れた後でも、やっぱりそれをやらなきゃいけないっていうプレッシャーがズッシリかかってたからね。しんどかったけど、あの期間を体験させてもらったからこそ、その後の俺の今がある。人生を作ってもらったなと。
(監督をする人間が他には)誰もいないんだから。あの時、初めてプロ野球選手だけで作ったチームで、100%金メダルだろうと思われている環境の中でさ。ダメだったけどね。
でも、俺の中でも金メダルな内容の野球ができたし、オヤジに恥をかかせるような野球はやっていないし。それだけは自負がある。
でもやっぱり、金メダルだったな…あの時は。(長嶋さんの)「病気を治すためにも(金メダルを)首にかけてあげたい」というのは、みんなの合言葉になったから。
一番はそこなんだよね。「たかが金メダル」じゃなくなっちゃったんだよね。「ミスターの病気を治すための金メダル」まで、みんなの気持ちが1つになったから、余計にショックが大きかった。「銅メダルじゃダメだ」って…。

──東京オリンピックで野球が金メダルを獲った時は、どうご覧になっていたんですか?

全部観に行った。福島からスタートしてね。予選は苦しいスタートだったけど、最後には金メダルで締めくくってくれたのでね。
ミスターが一番喜んでましたよ。オヤジが一番喜んでくれて、“ああ、やっと念願叶ったんだな”と感じましたね。

──パリオリンピックでは、野球は残念ながら実施されませんけれども。

その次のロスでまた復活するし、ソフトボールも復活する。
金メダルを獲ってほしいし、WBCもあるからね!大谷(翔平)と、ダルビッシュと…あの世界はね、悔しいぐらいカッコ良かったなぁ。もうシビれちゃったもんね。“野球ってすごいな、野球の世界って、何か他のスポーツにはないものを感じさせてくれるな”って…特別なものを感じたね。
やっぱり日本は、もはや完全に野球は国技だね。

──本当に、野球は気持ちを豊かにしてくれますよね。

してくれるね。ホント心を元気にしてくれるしね。
あの時の喜びというのは…日本全国の国民で喜び合ったあの瞬間、国が1つになったよね。
そのパワーがある。野球、スポーツには!

──この番組では、ゲストの方にCheer Up Songを伺っています。中畑清さんの心の支えになっている曲を教えてください。

今、オリンピックの話をしたばかりだから、あの時支えてくれたのは、ゆずの歌だな。アテネオリンピックの応援歌「栄光の架橋」。
あの詞を聴いたら、本当に、どっぷり俺の精神状態そのものなんだよね。彼らはアスリートだったのかなと思うくらい、そういう心理状態を歌ってくれているんだよね。
「栄光の架橋」は、永久に不滅ですよ!
…うまくまとめるなぁ(笑)。

来週も引き続き、中畑さんにお話を伺っていきます!

今回お話を伺った中畑清さんのサイン色紙を抽選で1名の方にプレゼントします。
ご希望の方は、番組公式X(旧ツイッター)をフォローして指定の投稿をリポストしてください。当選者には番組スタッフからご連絡を差し上げます。

そして今回お送りしたインタビューのディレクターズカット版を、音声コンテンツアプリ『AuDee』で聴くことができます。
放送できなかったトークが盛りだくさん! ぜひお聴きください!
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