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2024.06.15

“ルーティンを作る”“否定はせず準備をする”名監督の指導の極意

今週の「SPORTS BEAT」は、プロ野球の選手、そして監督としてご活躍されてきた工藤公康さんをゲストにお迎えし、お話を伺っていきました。
工藤公康さんは、1963年生まれ、愛知県のご出身。
高校卒業後、西武ライオンズに入団。以降、福岡ダイエーホークス、読売ジャイアンツ、横浜ベイスターズなどに在籍し、現役中に14度のリーグ優勝、11度の日本一に輝き優勝請負人と呼ばれ、実働29年プロ野球選手としてマウンドに立ち続けました。
2011年に、正式に引退を表明され、2015年から福岡ソフトバンクホークスの監督に就任し、2021年退任までの7年間に5度の日本シリーズを制覇。
最優秀選手(MVP)2回、最優秀防御率4回、最高勝率4回など数多くのタイトルに輝き、通算224勝、正力松太郎賞を歴代最多に並ぶ5回、2016年には野球殿堂入りを果たしていらっしゃいます。



──あらためて、本当に輝かしい経歴ですよね。

ありがとうございます。

──お子様もスポーツで活躍されていて、長女の工藤遥加選手はゴルフで活躍。去年ステップアップツアーで優勝されましたよね。

ありがとうございます。何とか、やっと勝てたので、今度はレギュラーツアーで勝ってもらえたらなと思っていますけれども。

──そして長男の工藤阿須加さんは、テニスを頑張っていらっしゃいましたけれども、芸能界の世界に進まれました。これは、どの時点で相談をされたんですか?

相談は受けたんですが、妻は大学を卒業してからでも、という話をしていたんですけれども、僕はどちらかというと、その瞬間…その道に進みたいと思った時のその瞬間を大事にしてあげたかったので。
条件はちゃんとつけたんですよ。大学を卒業すること。で、僕が「うん」と言ってしまったので、後で妻に怒られましたけど(笑)。
でも、子供の頃からずっと伝えてきたことなんですが、最終的には全て自分で責任を取らなければいけないし、家族ができたら家族を守っていかなければならないのだから、しっかり責任感を持ってやるのであれば、親として反対するということはなくて、その道に進みたいんだったら、頼るところは頼って、頑張るところはしっかり頑張って、しっかり見せていかなきゃいけない、ということは伝えました。

──選手だけではなく、監督としても輝かしい実績を残された工藤さんですが、監督としての選手の育成と、親としての子育てというのは、共通点みたいなものはあったりするんですか?

“ちゃんと時間を作ってあげる”ということですね。考える時間とか、決断する時間。聞かれてすぐに、親に「こうしたいと思う」とパッと答えるって、なかなかできないじゃないですか。でも、時間が経てば自分の考えがまとまったりする。まとまっているものは、すぐに言えるんですよ。ということは、それは前から考えていたんだろうなと思うんですが、パっと言われてもすぐ動けなかったり、できなかったり、自分の言葉として言えない時もあるじゃないですか。そういう時は、時間を作ればいいんですよね。何も「すぐに答えを出せ」とか、「お前、どうするんだ!?」じゃなくて、「じゃあ考えておこうな」と。時間を作ってあげることですね。

──試合に出られる選手、特にスタメンの選手は9人。DH含めても10人しかいない。そのみんなのモチベーションをずっと保ち続けるというのは、とてつもない作業ですよね。

そうなんですが、1人1人見ていれば、必ず役割があるので。
試合に出られないから、ベンチに入って「やることないんだよ」ではなくて、ベンチにいるんだったら、その状況に合わせて、自分の出番をしっかり選手に考えてもらったり、僕らが「お前はこういうところで行くよ」と言ってあげたり。
出る場面をちゃんと伝えてあげると、選手はそれなりの用意をするんですよ。それがルーティンになっていくと、何も言わなくても勝手に選手が自分で作るようになるんです。代打であったり、代走、守備要員。ピッチャーだったらワンポジだったり、リリーフであったり。ルーティンを作ってあげると、彼らは勝手に自分たちでやるようになる。
ルーティンを作ると、今度は自分のやるべき仕事に集中できるようになるので、成績も残りやすいというところはあります。


──6月23日に出版される工藤さんの著書、『プロ野球の監督は中間管理職である』(出版:日本能率協会マネジメントセンター)。

(笑)。いいのかな?

──(笑)。今の、「いいのかな」というのは、「監督を中間管理職と言っていいのかな?」ということですか?

僕はそう思っているんですが、人によっては違うかもしれない。チームのトップだと思っていらっしゃる方もいるかもしれないですし。
今はシステムとして、球団の社長がいて、当然その間にGM、ジェネラルマネージャーが…今メジャーでは30球団どこもGM制度を使っているんですが、その人が昔で言うと「球団統括本部長」と言われるような人たちで、今は「GM」と(いう肩書きが)ついているんです。ある意味、現場に近い人たちのトップなんです。
それで、その下が僕らになるので、そう考えると、僕は、監督は中間管理職かなと思っています。

──著書には、選手それぞれのシーズンオフの過ごし方も書かれています。今は同じチームだけでなく、いろんなチーム合同で自主トレをしたりしますが、自分のチームとしての育て方や方針と異なっていたりしないかとか、そういう不安とかはありませんか?

でもその不安を、例えば選手にぶつけたからといって、選手が僕らの言うことを聞いてくれるわけではないので。
選手は、なりたい自分がいて“学びたい”という思いがあるので、それを否定したりはしないです。
やりたいことがあるということで、それをオフにやってきて、2月1日にピッチングをすると、全く違う姿で投げているというピッチャーもいるんですよ。あぜんとする部分もあるんですが、かと言って、「お前、それじゃダメだよ」と言ってしまったら、その選手が自主トレからずっとやってきたこと、オフになってやってきたことを全て否定することになってしまうので、否定はしないです。
ただ、やっぱりどうやってもあのままではピッチャーとしての弱点が出てくるので。だから、それを直すために、本人が「やっぱりこれじゃダメでした」と、「前に戻したい」となった時に、ちゃんと戻せるように準備はします。
で、そのための準備をちゃんとしてあげて、その上で彼の結果が出るかどうか。出れば全然問題はないんですが、出なかった時に「やっぱりこれじゃダメなので、戻さなきゃダメですかね」となった時に、「そうだな、じゃあ戻そうか」と。でも、瞬間的に思った言葉だと、やっぱり選手というのは納得しないので、「ちゃんと準備したんだよ」「こういうものを準備しているから、ちょっと考えてみてくれ」というところから始めないと、なかなか選手たちも、「分かりました」と言ってやってくれないので。そういうことだけはちゃんと怠らないようにしています。

──この番組では、ゲストの方にCheer Up Songを伺っています。工藤公康さんの心の支えになっている曲を教えてください。

ラックライフさんの「しるし」という曲です。
息子達が…僕も、たまにアニメとかを観るんですが、『文豪ストレイドッグス』というアニメがあるんですけど、それのエンディングで使われている曲なんです。
僕らの時代って、結構良いアニメがずっとあって。高校の時と言ったら、『北斗の拳』ですよ。最初は、ジャンプ(雑誌)の方ですよ。あと、『ドラゴンボール』とかですね。もう(漫画を)全巻そろえていましたね。『北斗の拳』『ドラゴンボール』。DVDも、『ドラゴンボールZ』から、『GT』から、全部揃えていました。

──お子さんにも見せたりしていたんですか?

そうです! それを残しておくということが、やっぱり大事じゃないですか。「僕らの青春時代にはこんなアニメ(漫画)があったんだよ」みたいなものを残しておいて、子供たちに見せたりしていたので。
僕は古いものも大事かなと。野球も同じですが、古いからといってそれが無駄だとか効率が悪いではなくて、古いものを大切にするということも大事だと思っているので、そういう意味で残したりしていました。


来週も工藤公康さんにお話を伺っていきます。
お楽しみに!


今回お話を伺った工藤公康さんのサインが入った、6月23日に出版される著書「プロ野球の監督は中間管理職である」を抽選で3名の方にプレゼントします。
ご希望の方は、番組公式X(旧ツイッター)をフォローして指定の投稿をリポストしてください。当選者には番組スタッフからご連絡を差し上げます。

そして今回お送りしたインタビューのディレクターズカット版を、音声コンテンツアプリ『AuDee』で聴くことができます。
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