元木博紀(もとき ひろき)選手は、1992年、茨城県のご出身。
高校時代からインターハイの優秀選手賞を受賞し、世代別の日本代表に招集されるなど活躍され、日本体育大学を経て実業団の大崎電気に入団。
2021年には東京オリンピックに出場し、グループステージ最終戦では4得点を挙げ、1988年のソウルオリンピック以来、33年ぶりのオリンピックでの勝利に大きく貢献されました。
現在はジークスター東京に所属し、日本代表としても活躍なさっています。
──バレンタインデーの2月14日がお誕生日ということで、おめでとうございます! 32歳になられた感想は?
ありがとうございます。選手的にはもうベテランになるので、若手に負けないように頑張りたいと思っています。
──元木選手擁するハンドボール男子日本代表・彗星ジャパンのアジア予選1位突破は、1984年のロサンゼルスオリンピック以来の快挙となりました。1990年代以降は、韓国や中東勢の厚い壁にはね返されてきましたが、今回はアジアのナンバーワンとしてパリの地へと向かうことになります。オリンピックの出場枠でいうと、アジアは1枠しかないということですか?
今年は1枠だけだったので、そうですね。
去年の東京オリンピックは、開催国枠ともう1つアジア枠があったので良かったんですが、今回はもう本当に、一発勝負。一発勝負で勝った方が上がれる、という戦いを5試合続けてやりました。
──韓国や中東勢は強いんですか? 世界ランキングで言うと、そこまで差があるわけではない?
カタールのチームは、世界大会で2位を獲ったこともあるかなりの強豪国だったんですが、たまたま準々決勝でバーレーンが勝って上がってきてくれたので、僕らにとっては最大のチャンスでした。
──決勝で、そのバーレーンに勝利したわけですね。
バーレーンも(日本とは)半々ぐらいで勝ったり負けたりのチームだったので、決して油断できないところでもあって。中東の方でも、バーレーンはサッカーや野球よりも有名で、ハンドボールが一番盛んなチームなんです。
会場も、拡声器を持ったバーレーンのファンの方がたくさん来て、もう笛も聴こえない状態にさせられて…(笑)。
──そういう中で試合をするのは、やり辛いですか?
いえ、シーンとしているよりは、僕は騒がしい方が好きなので。(騒いでいる観客は)バーレーン人じゃないと思えば、自分たちへの歓声にも聴こえてくるので。
──ブーイングなどによって審判も影響を受けるんじゃないか、という不安はありませんでしたか?
ありましたね。でも、ヨーロッパから連れて来てくださった審判だったので、そこは(観客のブーイングなどで)どちらに転ぶということはなかったので、日本人がやりやすい審判だったのかなとは思いますね。
──優勝が決まった瞬間、パリオリンピック出場が決まった瞬間というのはどのような思いでしたか?
そうですね。僕の中で、本当に何が起きたか分からない状態になって、もう、本当に泣き崩れて…。
──試合が終わって泣き崩れたのはいつぶりくらいですか?
初めてですかね。本当に初めての体験だったんです。
もともと僕も、高校生の頃から代表に選ばれて、早い段階で呼ばれていたので、それもあったせいか…もうずっと先輩たちの背中を見てきた中で、こんなにも(世界では)勝てないものなんだなと思ってやっていたのが、まさかのここにきて、若手の力も加わって、コロッといつの間にか勝ててしまったので(笑)。
──自分たちのやり方が変わったとか、実力がついたという手応えではなく、なんとなく勝てるようになったな、みたいな感じなんですか?
それもありますし、やっぱり、若い選手で大きい選手が増えてきたことと、若い世代に海外に進出してプレーする選手が増えてきたので。昔だったら(代表の中で)1人(海外に)行っていればいいかな、ぐらいだったんですが、今は(海外に行く選手が)増えて、もう半分ぐらいが海外でプレーしている。
また、中東の方でプレーする選手も増えたので、慣れもあるのかわからないですけど、そういった部分でみんな堂々とプレーできていたので、そこが勝利に繋がったのかなと思います。
──元木選手は、ご自身も海外に行こうとは思われないんですか?
ちょっと考えてはいたんですが、子供がいて家族があるので…。
チャンスがあるなら1年ぐらいチャレンジしてみたい気持ちはありますね。
──東京オリンピックで初めてオリンピックに参加されて、オリンピックに対する意識というものが大きく変わったのでは?
そうですね。その中でも、東京オリンピックの時は、ヨーロッパの強豪・ポルトガルを倒すことができて、そこでみんなも自信がついたというか、“世界と戦えるんだ”ということをみんなが経験したと思うので、次のパリオリンピックで、さらに勝つ、勝利数を増やせるように頑張りたいと思います。
──外国のチームは体格が大きい、フィジカルが強いとのことですが、日本チームの強みや良さはどんなところですか?
小さい分スピードがあるので、そのスピードを活かした攻撃。体力は使いますけど、速い攻撃で、相手が追いつけないように戦っていくというところが僕らの戦術じゃないかなと思います。
──ハンドボールは両端に選手がずっと立っていたりしますが、あれも戦略、フォーメーションなんですよね?
そうですね。基本的に、狭い角度から…僕もそのポジションなんですが、あそこはシュート技術に長けた人がやるポジションでもあるんです。角度が狭い分、決めるのは難しいので。
そういったところでは、安定してシュートを決められていたので、良かったかなと思います。
──攻めていく戦略、フォーメーションやパターンは決まってたりするんですか?
あれは全部決まっています。だから、そこまで見てもらえるようになると結構面白いんじゃないかなと思いますね。
──ハンドボールは展開が速く、サッカーにも似ているし、バスケにも似ている感じですよね。
そこに、ラグビーのようなコンタクトも入ってくるので。生で観てもらった方が面白いかもしれないですね(笑)。
──もっと一般の人に観てもらえる機会が増えてほしいなと思いますし、やはりオリンピックは日本中が注目する大会なので、そこで勝利する、勝ち上がっていくと、もっともっと注目されるようになりますよね。
本当に。オリンピックで結果を出すことが、僕らの目標ですね。
──現在、元木選手の所属するジークスター東京を始め、多くの日本代表選手が競い合っている日本ハンドボールリーグは、レギュラーシーズン真っただ中。このレギュラーシーズン上位4位以内がプレーオフに進出。5月末のプレーオフを経て、リーグ優勝を目指しています。ジークスター東京はどのようなチームなんですか?
最近新しくできたチームなんですが、元日本代表の選手だったり、現日本代表の選手が多くいるチームで、頭脳派の選手もいれば、体格で日本代表に入っているような選手もいれば、色々なタイプがいます。でもその分、“我”がみんな強いので(笑)、監督は大変だろうなと思います。
──いわゆる、“スター軍団”?
そうですね。そう言われていますね。
──日本代表とジークスター東京がやっているハンドボールは、近いんですか?
全然違います。
代表の方はやっぱり集まる期間も少ないので、本当にシンプルで力強い、速いハンドボールという感じなんですが、僕たち(ジークスター)がやっているハンドボールは、大きい選手も機動力を活かして、ディフェンスで高めにプレスしていったり、戦術が全然(日本代表とは)違います。正直、代表より疲れます(笑)。
──所属してるチームの方が、戦術は深めやすいですよね。
細かい部分も多いですし。
──この番組では、ゲストの方にCheer Up Songを伺っています。元木選手の心の支えになっている曲を教えてください。
Ram Head の『やってやんぜ』という曲です。
試合前に「やってやろう」という気持ちになるために、この曲を聴いて、無理やりアドレナリンを出して試合に向かっていく、という感じですね。
──最後に、今年はオリンピックがありますけれども、32歳の目標を聞かせてください。
本当に、(代表の)メンバー選考も激しくなってきましたし、やっぱり若い選手の勢いというものが怖いところではありますが、そういった中でも自分の武器を活かして、ベテランの領域ですけれど、しっかりパリのオリンピックの地で勝利をつかめるように頑張っていきたいなと思っています。
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