田澤廉(たざわ れん)選手は、2000年生まれ、青森県のご出身。
駒澤大学時代には、箱根駅伝に4年連続出場、大学駅伝3冠の立役者、そしてアメリカのオレゴンで開催された世界選手権にも1万メートルで出場するなどの活躍をされ、大学卒業後、トヨタ自動車へ入社。
初めて出場した今年の全日本実業団対抗駅伝競争大会、いわゆる「ニューイヤー駅伝」では、3区を走り、見事、8年ぶりの優勝に大きく貢献されています。
──いよいよ今年2024年はオリンピックイヤーとなりますが、同じ長距離種目のロードの駅伝、そしてトラックの10000mというのは、共通点があったりするんですか? それとも全く違うものなんですか?
人それぞれの意見だと思うんですが、僕は全く違うなと思っていますね。
そもそも、ロードとトラックの練習の仕方はまるで違うので、そういうところからまず違うなと思います。
──トラックの時というのは、いわゆるスピードに特化していくんですか?
そうですね。どちらかというと、距離に対するスピード維持とか、ラストスパートをイメージしたスピードとか、大体、そういうスピード系がメインになってくると思います。
──駅伝の場合は、特に箱根駅伝は長い距離ですけれども、ずっと上りの区間もあれば下りの区間もあるし、それぞれの区間によっても調整の仕方は変わってくるんじゃないですか?
変わってくると思います。根本的な基礎トレーニングというのはあまり変わらないかもしれませんが、やっぱり、特殊区間(5区、6区)とかは、それぞれ平坦とはまた違うわけなので。何か違ったことをするか、元々の適応能力を持っているかの違いだと思います。
──箱根駅伝は注目度も高く、「山の神」とかも誕生しますし、1回ぐらい、(特殊区間を)走ってみたかったな、なんて思いはありませんでしたか?
(大学)1年生のいつだったかは覚えていないんですが、1回、ジョグで行ったんです。もう、ヤバいですよ(笑)。
ジョグで思ったんですが、こんなところをレースペースで登るのは絶対に無理だと思ったぐらい、傾斜がキツいんです。
──でも、(3区の)戸塚の坂も、それと匹敵するぐらいのかなりキツい坂なんじゃないですか?
キツいですよ。あそこが一番キツいです(笑)。
──そして、大学時代から世界に挑戦されてきました。世界選手権に2大会連続で出場して、感じたことはありますか?
1回目の時は、僕の体調のコンディション不足で、ちょっと走る時に腹痛が起こってしまって、あまり自分の思っているレースができなかったり、力を発揮できなかったんです。そこで得た収穫も本当に少なくて、もうただ出ただけ、みたいになってしまったんですけれども、今回のブダペストでは、7000mぐらいまでしっかり走って、そのペースアップのところで落ちてはしまったんですが、あそこで、“こういう感じで(トップグループに)ついて行けば入賞が見えるんだな”という、その感覚みたいなものは掴めました。
──どうしても長距離はアフリカ勢の強さが目立ちますけれども、実際に走ってみて、アフリカ勢の強さはどんなところにありましたか。
(アフリカ勢は)7000mから一気にペースを上げて、また9000mからまたペースを上げて、ラスト400mを53秒とか52秒で帰ってくるんですよ。(400mを)52秒というのは、もうそれは800mの選手とかのレベルなんですよね。
彼らにとっては、多分、9000mまでは(レースではなく)アップ(という感覚)で、7000mぐらいで1回、力がない選手を振り落とそう、という走りをするんですよ。それでまた、9000mから残った選手で勝負、みたいな考えだと思うんですよね。
ラストでそれを発揮してくるというのが、すごいですよね。
──7000mぐらいでついて行けば、なんとか入賞が見えてくるという、手ごたえはあったんですね。
あそこでついて行った選手が入賞するんだろうな、という感じはありました。
──そして、去年、トヨタの陸上長距離部に入り、練習の環境は駒澤大学時代とあまり変えず、駒澤大学の大八木総監督の元で練習をなさっています。チームメイトの太田智樹選手と共に強化合宿をしたそうですが、これは田澤選手の方から声をかけたんですか?
そうです。トヨタの選手はマラソンの選手が多いんですが、その中でも太田さんはまだトラックで勝負したいと言っていて、自分もパリ(オリンピック)は10000mで狙いたいという思いがあったので、「1人で練習するよりは2人で練習して高め合いましょうよ」と誘いました。
──同じ志を持った同士で一緒に練習をされて、太田選手は先日(2023年12月の第107回日本陸上競技選手権大会)、素晴らしいタイムで走りました。その成果が出たのでは?
はい、やられました(笑)。
でも、僕自身も嬉しいですよ。やっぱり、ずっと1人で…常に自分が頂点、じゃないですけれど、チームの中でもずっと一番でしたし、高校も大学も“一番上に立つ者”みたいになってしまっていたので。
なので、同じチームに自分より上の選手がいるということは非常に嬉しくて。やっとそういう環境に巡り合えたということが、悔しいですけど、嬉しかったです。
──田澤選手はスイーツがお好きで、結構食べられるとか。食事制限というのは、皆さん、されないものなんですか?
している人もいると思いますが、僕はしないですね。
普段の食事は、監督の奥様がやってくださっているので、食事は栄養のある食事を摂らせていただいて、土曜日・日曜日は自分で食事をする、みたいな感じなんですが、そういった時は、好きなものを食べようかなって(笑)。
もちろん、ある程度は考えています。好きなものを食べた後、サプリメントを摂ったりしています。
──田澤選手が目指すパリ・オリンピック出場へ大きな影響がある、10000mの第108回日本陸上競技選手権大会が、5月3日、静岡県の小笠山総合運動公園で開催されます。パリ・オリンピックへの出場条件の1つ、参加標準記録の設定は、男子10000mは「27分00秒」を切ること。切れなくても、世界ランキングの上位3名が行けるとのことですが、パリ・オリンピックまでは、どのように考えていらっしゃいますか?
3月にアメリカで1本レースをするので、そこで、記録なのか、ポイントなのか…記録を出せば必然的にポイントも手に入るので、どちらも狙って、3月中旬にレースをして、そこから5月に日本選手権になると思うんですが、その日本選手権で3番以内に入らないと(オリンピック出場は厳しい)、というところがあるので、そこは確実に3番以内に入れるように合わせたいなと思っています。
──5月3日の日本選手権は、どのようなレースになりそうですか?
多分、ほぼ全員思っていることなんですけれど、記録(27分00秒)は厳しいんですよね。
5月だと、この前の12月(第107回日本陸上競技選手権大会)のような、すごく涼しくてコンディションが良い、という状況にはならないと思うので。
前回は、順位というより記録を狙った日本選手権だったんですが、今回は順位が非常に大事になってくる大会になるので、みんな順位を狙ってくると思います。
──順位となると牽制しあってスローな入りになりそうですが、スピードがある田澤選手は、スローな方が有利になるんじゃないですか?
僕は有利だと思うんです。(他の選手たちが)牽制し合って、僕が何もない状態でラストを迎えることができれば、負けないですね。
──カッコいい!
それで負けたらちょっと恥ずかしいので…(笑)。
──3月、そして5月、素晴らしい結果を期待しています。さて、この番組では、ゲストの方にCheer Up Songを伺っています。今週も、田澤選手の心の支えになっている曲を教えてください。
BLACKPINKの「AS IF IT'S YOUR LAST」です。
これはけっこう前の曲なんですが、走る時やゆっくりジョグをする時にたまに音楽を聴くことがあるんですが、そういう時に自分の中で乗ってくる曲なので、走る時に聴いてほしいなと思いますね。
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