吉永一貴(よしなが・かずき)選手は、1999年県愛知県出身の22歳。
スピードを生かした内側からの追い抜きを得意とし、平昌オリンピックでは、ショートトラック男子で史上最年少となる18歳で出場。
2018年ワールドカップの1500mでは、日本男子として17年ぶりに優勝を果たします。
今年の北京オリンピックでは1000m、1500m、5000mリレー、混合リレーと4種目に出場されました。
──吉永選手は、今年の春に中京大学を卒業されて、元々所属していたトヨタ自動車の社員となられたそうですが、これはいわゆる“アスリート契約”ではなく、社員として入社されたんですか?
はい。新入社員として今年の4月にトヨタ自動車に入社して、今はスケートをやりながら業務も行なっています。
──大変ですよね。普段もお仕事もされるということですよね。
基本的にはスケートをすることが業務になるので、会社に出社するのは週に1、2回ぐらいですね。
──アスリート契約をされていた時とそれほど変わらず、練習時間は確保できている?
そうですね。
──トヨタ自動車とは、小学生の頃から関わりがあったんですか?
地元が愛知県ということもあって、トヨタ自動車の先輩方の背中を見て小さい時からずっと育ってきて、ついに4月に入社したという形です。
──トヨタさんのアスリートのプロフィールを見たところ、ちょっと気になる項目がいくつかあったんですが、自慢できる趣味が「フリースタイルラップ」?
そうですね(笑)。ラップはけっこう好きですね。一時期スケート界でラップが流行った時期があって、その時にのめり込んで、他の選手と一緒にラップバトルをしたりとかもありました。
──他の選手もできるんですか!?(笑)
特技には書いてないですけど、できる人も多くいると思います(笑)。
──スケート界、すごいことになってますね(笑)。やっぱり普段から、「この言葉とこの言葉は韻を踏んでるな」みたいなストックを貯めていたりするんですか?
貯めてました。今はそんなにやっていませんが、本当にのめり込んでいた時期は、寝ていたら夢で「これとこれが韻を踏めるな」みたいなことを考えたりとか(笑)。
──(笑)。ショートトラックのお話をお聞きしたいと思いますが、北京オリンピックでは4種目に出場されてハードな戦いでしたけれども、振り返ってみていかがでしたか?
前回に出た時と比べても種目数が多かったので、オリンピック期間中はすごくタイトスケジュールで大変だったと思います。
──18歳で出場された平昌に続き2大会目の出場となった今回の北京オリンピック。やはり臨む上で心境の変化はありましたか?
そうですね。前回は18歳ということもあって、チームの中でも最年少の出場で、とにかく攻める、とにかく挑戦するという形が多かったんですけど、今回は自分が1回経験したことがある立場だったので、やっぱり“他の人たちを背負って”というか、“自分がサポートしてあげながらやっていく”というプレッシャーをより感じました。
──個人種目だけでなく、リレーなど団体種目もありましたね。
そうですね。団体も混合リレーもすごく難しい状況もありましたし、混合リレーに関しては初めてだったので、いろんな戦略などもあって、すごく楽しかったんですが、(もっと良い成績を)狙える種目だったので、勝てなくてすごく悔しかったですね。
──ショートトラックのリレーは、次の選手にバトンを渡すわけではく、次に滑る人達がリンクのコースの内側を併走して、その(交替する)タイミングになったらコースの中に入って、(前走の走者に身体を)押してもらう、ということですよね。
そうですね。バトンでタッチするわけじゃなくて、先ほど言っていた通り、身体と身体で、前に出てきて走者が変更されるので、他にはないような難しさもありますし、目まぐるしく滑っている人が変わるので、見ていても面白いと思います。
──目まぐるしく順位が変わっていく中で、次の人たちも、どのタイミングで入っていくか、(判断が)難しくないですか?
やっぱりすごく難しいです。その分、「こういう時はこういう風に出よう」みたいなパターン分けをしたり、あとは、その上で臨機応変にタッチを半周ずらしてみたりとか、そういう戦略もあったりして、練習の中でたくさんパターン分けをして練習していましたね。
──いわゆる、陸上のリレーのような“バトンゾーン”はないということですか?
ないですね。一応、最後の2周は絶対に「アンカー」と言われる人が滑らなければいけないので、それまでに(アンカーに)タッチしなければいけないんですけど、それ以外は、基本的には1回1順できれば、例えば(1人)10周ずつ、みたいな感じで滑ってもかまわないです。
──やっぱり頻繁に交代した方が疲れないとか、タッチする時に強く押し出したら速くなるとか、そういうことがあったりするんですか?
基本的には1.5周で走順が変更されるんですけど、戦略的に2周にして誰かを温存させるという戦略もありますし、あえて1周にして他のチームとタッチをずらすことで、相手をけん制したりブロックに徹することができるので、戦略は本当に無限大にあります。
プッシュの強さも調整していますが、例えば、先頭にいる選手と自分たちにすごく差ができてしまっている時とかは、追いつけるようにとにかく強く押したりすることもあります。
──やっぱり駆引が重要なんですか? それとも、コーナーが多いのでコーナリングが重要なんでしょうか。
どちらも重要ですね。やっぱりコーナーの速さいうのはレース全体を通してすごく重要なポイントですし、コーナーが速くないと前を滑っている選手を抜かすこともできないですし、置いてかれてしまいますから、やはり速い方がいいです。
そして、ショートトラックは本当に戦略がすごく大切です。むやみやたらに先頭でスタミナを削りながら滑っても最後まで持たないですし、だからといって最後方に徹しているとレースに置いていかれてしまって、最後の一瞬の勝負どころに間に合うことができなかったりするので、相手を見ながら“自分が今どこにいてどうしなければいけないか”とか"次のために1人抜いておこう”とか、すごくたくさん考えながらレースをしています。
──そういう駆け引きは、何か他のもので勉強することもあるんですか?
僕の父は「これを見ろ」と言ってF-1とかを見せたりするんですけど(笑)。
──やっぱり、他の競技を見て参考になることもあるんですか?
あるかなと思います。でもやっぱり、自分はスケートが大好きなので(スケートを見ることが多い)。他の選手のレースを見ると、その選手の癖とかも自分の戦略に組み込むことができるので、例えば、「この選手はコーナーの出口で少し膨らんでしまう癖がある」とか「特定のコーナーでそういう傾向が出てしまう場合がある」とか、それをインプットしてレースに臨んでみたりすることもあるので、やっぱり世界レベルの選手とかをYouTubeとかで見たりすることは多いですね。
──さあ、この番組ではゲストの方にcheer up songを伺っています。吉永選手の心の支えになっている曲を教えてください。
GADOROの「チャレンジャー feat.J-REXXX」です。
──ご自身でやるだけじゃなくて、聴くのもやっぱりラップがお好きなんですか?
すごく好きです。すごく自分のモチベーションが上がったりとか、奮い立つ感じがして、すごく好きです。
──試合直前にも聴かれたりするんですか?
はい。けっこう聴いたりしますね。
──選手村でも他の皆さんとラップバトルをしてたんですか?(笑)
してないです(笑)。オリンピックにはフリースタイルラップができる選手がいなかったので(笑)。
──残念!(笑)
最後に、2大会連続出場を果たした吉永選手にとって、オリンピックとはどのような舞台か、お聞かせください。
オリンピックという舞台は、何よりもすごく大きな舞台ですし、いろんな方に見てもらえる最高の舞台だと思います。だからこそ、自分がスケートをやってきて支えてくれた方へ恩返しできる、一番の機会かなと思います。
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放送できなかったトークが盛りだくさん! ぜひ聴いてください!