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2023.10.14

最後まで自分を信じて、楽しんで戦いたい

今週の「SPORTS BEAT」は、女子フェンシング日本代表の江村美咲選手をゲストにお迎えし、お話を伺っていきました。
江村美咲選手は、1998年、大分県出身。
ご両親がフェンシングの元日本代表選手、そして指導者でもあったことから、幼い頃からフェンシングを始めます。
2021年の東京オリンピックに出場し、翌2022年の世界選手権で、日本の女子個人として初めて金メダルを獲得。
今年の世界選手権でも優勝し、2連覇を達成されています。

今回は、リモートでお話を伺っていきました。


──世界選手権2連覇の快挙!おめでとうございます! 去年と今年、優勝の意味合いは違いましたか?

違うところも、同じところもありました。
実は、去年の世界選手権で優勝してから1年間、国際大会で優勝しきれていなくて、やはり“研究されている”ということも感じましたし、(これまでと)同じフェンシングでは勝てない、難しいなと思っていた中で挑んだ世界選手権だったので、“ディフェンディングチャンピオン”というよりは、“挑戦者”の気持ちの方が大きかったですね。

──今年の世界選手権に挑むにあたって、何か変えた部分があったんですか?

そうですね。フェンシングスタイルが全く変わったというか、引き出しが増えて。
去年は、ちょっと後手というか、“相手を先に動かせてから自分が隙を突く”というスタイルだったんですが、今年は“自分から仕掛けていく”というフェンシングに挑戦しました。

──ガラッとスタイルを変えて挑戦するのは勇気が要りますよね。

要りましたね。
でも、去年優勝した後は、その(これまでの)フェンシングが正解、通用すると思いこんでいたので、同じ戦い方をしていたんですが、やっぱりそれだけでは研究されて通用しなくなって、いろんな引き出しがないと戦えないなと思ってからは、新しいことへの挑戦はあまり怖くなくなりました。

──1対1で向かい合うスポーツなので、戦い方も流動的で、変わっていくものなんですか?

変わり続けないと、勝ち続けられないと思いますね。
相手もいろんなパターンの選手がいるので、どの相手と戦っても勝つためには、たくさんの引き出しがないと難しいなと思います。

──2021年の東京オリンピックでは悔しい結果になってしまったと思いますが、そこから変わった、成長した部分は?

精神的な面も技術的な面もすごく大きく変わりました。
精神的な面では、東京オリンピックが終わった時にはやっぱり悔しかったですし、あと少しで格上のメダルを獲った選手に勝てたのに…という気持ちがあったので、休む気になれなくて。でも、その“あとちょっと足りないもの”が何かわからなかったので、とりあえず身体を動かすというか、“何をすればいいかわからないけれど練習したい”という気持ちだけで練習していたんです。
そうしたら、しばらくして燃え尽きというか、「もうフェンシングがしたくない」という時期があって。それまでは「休み=悪い」というか、人が休んでいる時にやってこそ強くなれると思っていたんですが、休むことの大切さもすごく理解しました。

──休むことで、新たな気付きだったり、切り替えることが出来たということですか?

はい。今は、100%のオン、練習に集中する時期があるからこそ、オフの日も100%休む気持ちになれます。
どちらかが中途半端だと、すごく効率が悪いんです。休みの日に“休みたい”と思えないということは、練習する日に自分が全部やりきれなかったんじゃないか、という感覚があります。

──日本はまだまだ休むことに対する罪悪感みたいなものがあるでしょうから、なかなかそういう切り替えは難しいですよね。

自分では難しかったんですが、2022年の1月から、フランス人のジェローム・グースコーチが日本のコーチとして来てくれて、そのコーチに、「燃え尽きた時には休め」と言われて休ませてもらって、やっと身に付いたという感じですね。

──ジェローム・グースコーチには、戦い方についてもアドバイスされたそうですね。

本当にいろいろ教えてもらって、盛りだくさんなんですけど、最初の頃は、とにかく「楽しめ」と、すごく言われていましたね。
それまでの試合は“生きるか死ぬか”ぐらいの気持ちで戦っていたんですけど、ジェロームコーチが来てからは「楽しめ」と言われて。最初はピンと来ていなかったんですが、ただ楽しむのではなく、全力で真剣勝負に挑む、不安も緊張も含めて楽しめた時にすごく良いパフォーマンスが出来たので、「楽しむ」ってすごく大事だなと思いました。
相手をリスペクトするからこそ、自分も全力を出せる。それもジェロームに教えてもらました。

──パリ・オリンピックでは、個人でも団体でも金メダルを目指しているとおっしゃっていますが、その団体。昨年の世界選手権で、女子サーブル団体は銅メダル、先日の7月の世界選手権でも6位入賞。団体の女子サーブルはどんなチームですか?

今の日本のサーブルは、数年前と比べると世界的な立ち位置も大分変わってきて、どの国からも警戒される存在になったと思いますし、私だけではなく、団体メンバー1人1人が本当に強くて、心強いメンバーがそろっています。

──個人と団体は、戦い方が違うものなんですか?

団体戦は、簡単に言うと、3人対3人で、選手を交代しながら戦っていくんですが、1試合目が、どちらかが5点を獲るまで。2試合目は得点を残したまま選手だけ交代して、10点に行くまで。その次は15点まで…と、みんなでポイントを積み重ねていくんです。
個人戦だと1試合15点ある中で、団体だと5点までしかないので、よりミスを減らしつつ、チームの流れも作りつつ…。すごく難しいんですけれど。

──短いスパンの中でで本領を発揮するということが、難しいんですね。

難しいですね。フェンシングは「スポーツ界のチェス」と言われているぐらい戦術の駆け引きが大事なんですけれど、15点あれば何回も駆け引きが出来るんですが、5点しかないと、相手を分析する時間や自分が手数を出せる時間、機会がすごく減るので、ぎゅっと詰め込まれた中で、いかに正解の選択をするか。すごくいろいろ考えています。

──団体で戦う時はチームとしての声かけだったり、流れとかがあったりするんですか?

団体は特に流れがあります。
交代交代で戦うので、ピスト(試合場)に立つのは1人なんですが、やっぱり、チームでの声掛けであったり、アドバイスと、楽しめる雰囲気作りはすごく大事です。

──この番組では、ゲストの方にCheer Up Songを伺っています。江村美咲選手の心の支えになっている曲を教えてください。

Ms.OOJAさんの「Heroes」です。
こういう生活をしていると、やはり泣きたくなる時って何回もあるんですけど、そういう時に、“無理して前を向こう”ではなく、この曲を聴くと、“1回泣き切ろう!”と思えて、1回泣き切った後は、いつも応援してくれる人の顔が浮かんだり、またこれから立ち向かっていく、厳しい道のりに向かう覚悟が出来るような…ちょっと気が引き締まるような気がします。

──最後に、来年のパリ・オリンピックへ向けての意気込みを教えてください。

目標は個人・団体両方での金メダル獲得ですが、そのための準備だったり過程だったり、自分が後悔のない試合をして、当日は、自分を信じて楽しんで笑顔で終われたら結果は自然とついて来ると思っているので、最後まで自分を信じて楽しんで戦いたいというのが一番の目標です。



今回お話を伺った江村美咲選手のサイン入り色紙を、抽選で1名の方にプレゼントします。 ご希望の方は、番組公式X(旧ツイッター)をフォローして指定の投稿をリポストしてください。当選者には番組スタッフからご連絡を差し上げます。

そして今回お送りしたインタビューのディレクターズカット版を、音声コンテンツアプリ『AuDee』で聴くことができます。
放送できなかったトークが盛りだくさん! ぜひお聴きください!

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