橋本涼加(はしもと すずか)選手は、1993年、三重県のご出身で、子供の頃からハンドボールやインドアのバレーボールに取り組み、高校時代は春高バレーで3回戦進出するなど活躍。
高校卒業後は、Vプレミアリーグのデンソー・エアリーイーズに入団。
2013年にはU23女子バレーボール選手権に日本代表として出場、銅メダル獲得に貢献するなど活躍をなさっていましたが、2016年にビーチバレーボールへ転向。
昨年の年間ツアーチャンピオンで、現在、日本代表として来年のパリ・オリンピック出場を目指されています。
──橋本選手がビーチバレーに転向された2016年頃から、ビーチバレーというものは変わってきましたか?
はい(笑)。真っ黒です。今、シーズン真っただ中で。
そうですね。最初は、海で、砂浜のあるところで開催されることが多かったんですが、今年は特に都市で開催されることが多くて、私もそうですけど、他の選手たちもすごくテンションが上がって試合に挑めています(笑)。
──やはり、いつもと違うところでとか、人が大勢いる場所でやるというのは、選手の方もモチベーションになりますか?
はい。ロケーションも最高ですし、普段ビーチバレーを知らない方も
足を止めて観てくださるので、お客さんもたくさん入って、すごく楽しいです。
──2016年開催のリオ・オリンピックで一番観客数が多かったのがビーチバレーなんですね。
そうなんです。海外では人気のスポーツです。
──いろんな国を転戦されていて、国によって反応の違いは感じられますか?
観客の盛り上がり方も様々で、個性的で。DJが入る試合があるんですが、踊っているお客さんがいたり、自前の応援グッズを持って来ているお客さんがいたり、お酒を飲みながら観ている方がいたり…。とても自由な応援スタイルで、楽しいです。
──海外の大会で、変わった場所でプレーしたこともありましたか?
私は実際にプレーしたことがないんですが、パリのエッフェル塔の前で開催されたり。来年のパリ・オリンピックもエッフェル塔の前で開催されるそうなので、すごく楽しみです。
──それは感動的ですね! そして、2022年に大学院(早稲田大学大学院スポーツ科学研究科)に入学されたんですね。どういうきっかけで大学院に入ろうと思ったんですか?
昨年1年間、大学院に行っていました。
もともと、勉強したり本を読んだりすることが好きで、いろいろ学びたいことがたくさんあって、高校を卒業した時から大学には行きたかったんですけれど、(当時は)バレーボールを優先して。
(ビーチバレーに転向後、出場を目指していた)東京オリンピックが終わって、次にもう少しレベルアップするためには何が必要かなと思った時に、情報や知見が足りないなと感じたので、早稲田大学の大学院で学びたいと思って受験してみました。
──どのような研究をされたんですか?
私の研究は、学術的理論に準拠したメンタルトレーニングを行うことで変化した競技成績や心境の変化などを、スポーツ心理学とエリートコーチングという視点から考察した論文を書きました。
──研究対象はご自身だったんですか?
私自身を研究対象として、1冊の本を書き上げるような感覚で論文を書きました。
──“俯瞰”というか、第三者として自分を見つめ直した時に気がついたことなどはありましたか?
たくさんありました。
フィジカルトレーニングをしてパフォーマンスを上げるように、メンタルトレーニング…精神をトレーニングすることによってもパフォーマンスを向上させることが出来るんだということを、学術的な目線から捉えることが出来て、すごく勉強になりました。
──メンタルトレーニングというと、どんなことをするんですか?
私が実際にやっていて効果が出たものは、「認知行動療法」という手法で、それを使ってメンタルトレーニングをしていました。
「認知」と「行動」があって、その間に「思考」というものがあるんですが、「認知」を感じた後、「行動」に移す前にある、(「認知」と「行動」の間にある)「思考」というものについて、認知行動療法で、メンタルトレーナーの先生と話しながら整理することによって、今まで「認知」した後に起こっていた「行動」が変わってくる、という手法です。
それをうまく取り入れながら技術に結びつけることによって、プレーの安定性が出た、というところを研究しました。
──これはアスリートだけではなくて、一般の人たちにも適用できることですよね。でも、なかなかそういう「思考」って変えられないと思うんですが…。
そうなんです。その「思考」を変えるのはとても大変な作業で、私も厳しい訓練みたいな感じになったんですけれど、諦めずにやり続けていたら、成績も上がっていきましたし、パフォーマンスも良くなってきたことを感じたので、頑張って続けようと思って、ずっと続けています。
──その「思考」というのは、“プラスに捉える”とか、そういう単純なことではないんですか?
そうですね。ただ“ポジティブに”とか、“ネガティブに考えない”ということももちろん大切なんですが、私の場合は、何かが起こった時に悲しい気持ちになっていたものが、(メンタルトレーニングによって)面白味を感じてきたり、そういうところに「思考」が変化することによって、「行動」が変わってきました。
──“悲しみ”を“面白さ”に変えることって出来るんですね。
まず、“悲しい”と思って、思考すること、考えることをやめてしまったり、行動を止めてしまったりしていたことを、そうではなくて、“今やるべきことは何なのか”というところに目を向けると、目の前の1点に対して何をやらなければいけないか、というところの行動につながってきたので、パフォーマンスが上がってくるきっかけになりました。
──パリ・オリンピックまで1年を切っていますが、オリンピックに出場するために、狙っていることは?
アジア大陸予選という大会があるんですが、そこの1枠。オリンピック枠の1枠を狙って、今は戦っております。
──アジアの中で枠が1枠しかないということですか?
アジアの国全部で戦って、1枠です。狭き門です。
──それ以外にも、オリンピックに出場する条件があるんですね?
はい。純粋な、「オリンピックランキング」というポイント制のランキングももちろんあるんですけど、なかなかそこは厳しくて、アジア大陸予選の1枠を狙って、今は頑張っています。
──今、国内で開催されているツアー大会、『マイナビジャパンビーチバレーツアー2023』。これはどんな大会なんですか?
ジャパンツアーは、日本のトップカテゴリーの大会で、トップの選手が集まってくる大会ですね。
──今日開催される青森大会(8/26(土)~8/27(日))に続いて、9月は都城大会(9/1(金)~9/3(日))、そしてトヨタの地元、名古屋大会(9/9(土)~9/10(日))も控えています。意気込みもお願いします。
名古屋大会は、昨年とその前、2年連続で優勝しているので、3年連続優勝を目指して頑張りたいと思います。
──ぜひ3連覇を達成してください!そして、この番組では、ゲストの方にCheer Up Songを伺っています。橋本涼加選手の心の支えになっている曲を教えてください。
Official髭男dismの「FIRE GROUND」です。
Official髭男dismがもともと好きで、よく聴いています。
この曲は、試合の前に絶対に聴く「ヒートアップ」というプレイリストがあるんですけど(笑)、その中の曲はいろいろ変わるんですが、(「FIRE GROUND」は)いつもある、レジェンド的な曲です(笑)。
──(プレイリストは)入れ替えがあるんですね。
はい。選抜に入ったり、外れたりという…気分であります(笑)。
その中で、「FIRE GROUND」はずっと入っているお気に入りの曲ですね。
まず、テンポがメラメラ上がっている感じが、すごく“試合に行くぞ!”という感じがして、心強くて。
あと、曲の最初が「1つとしてアドバンテージなんてない」という言葉から始まるんですけど、“絶対に勝つこともないし、絶対に負けることもない”と言われているような感じがして、“自分がやらなきゃいけないことってなんだろう?”と目を向けられる。ヒートアップするんですけど、少し落ち着けるような曲かなと私は感じています。
──最後に、橋本涼加選手、明後日8月28日に、お誕生日を迎えられます! おめでとうございます! どんな1年にしたいですか?
ありがとうございます。
30歳になるので、プライベートでも、選手としても、1つ大人な感じになれるように、落ち着いた女性になれるように、頑張りたいと思います(笑)。
今回お話を伺った橋本涼加選手のサイン入りキャップを、抽選で1名の方にプレゼントします。
ご希望の方は、番組公式X(旧ツイッター)をフォローして指定の投稿をリポストしてください。当選者には番組スタッフからご連絡を差し上げます。
そして今回お送りしたインタビューのディレクターズカット版を、音声コンテンツアプリ『AuDee』で聴くことができます。放送できなかったトークが盛りだくさん! ぜひお聴きください!