TOKYO FM & JFN38 STATIONS EVERY SAT.10:00-10:50

SPORTS BEAT supported by TOYOTA

TOKYO FM & JFN38 STATIONS EVERY SAT.10:00-10:50
TOP > SESSION-1
2023.05.06

ゲームで柔道の攻略法を学ぶ!?e-sportsと金メダリストの意外な関係

今週の「SPORTS BEAT」は、柔道を特集! 東京オリンピック 柔道男子60キログラム級で金メダルを獲得した、髙藤直寿選手をゲストにお迎えして、お話を伺っていきました。
髙藤直寿(たかとう なおひさ)選手は、1993年生まれ、栃木県出身。
東京オリンピックでは、日本選手団の金メダル第一号となる柔道男子60キログラム級での金メダルをはじめ、世界大会の金メダル数は、ジュニア時代などを含めると20個以上獲得されています。

──金メダルが20個以上。どうしていらっしゃるんですか?

子供がいじってしまうので、世界選手権とかオリンピックのは飾っているんですけど、他のは飾らずに高い場所にしまってあります(笑)。

──髙藤選手といえば、立ち技、寝技といった柔道の全てが得意だそうですが、その中でも“必殺技”みたいなものをお持ちなんですか?

僕は元々、変形の柔道で「髙藤スペシャル」というオリジナルの技もあるんですけど、その中でも僕が一番大切にしているのは、「小内刈り」と言って、基本の技です。
普通は、背負い投げをかけるために小内刈りをかける、“崩し”で使う技なんですが、僕はそれで1本を取れるので、それを必殺技として周りが言ってくれている感じです。

──ルール変更で、自分の技が出来なくなったりということもあったんですよね?

僕が一番それをくらいましたね。「足取り禁止」といって、立ち技で“帯から下は触ってはダメ”というルールになったんですが、僕は、もともと「肩車」といって足を取る技であったり、タックルするような技が得意だったので、その時は、ネットで“髙籐は終わった”と書かれまくりましたね(笑)。

──小さい頃から習ってきて、当たり前だったことを突然ガラっと変えられた。それは身体が動いちゃいますよね。

そうなんですよね。そこが難しいところだったんですけど、“みんなが足取りをしないのであれば、足取りと同じ動きで、足を触らないで投げれば警戒がないので投げやすい”と思って、いろんな技を自分で考えるようにしました。

──めちゃめちゃポジティブですね!

けっこう、ポジティブですね(笑)。“それをしないと俺は終わる”と思いましたね。

──柔道もローマ字の“JUDO”に変わったり、道着も変わってきて、日本人として納得がいかないところや、言いたい部分もあったりしますか?

僕がやっているのは“競技の柔道”であって、柔道として本当に大切な部分というのは日本人の中で持ち続けていればいいのかなと、今はそういう気持ちもあります。
僕たちが見せられるのは、競技の場で、日本人らしい、綺麗な“礼”であったり、しっかりとした“投げる技”を見せることしか出来ないので、今はそこを磨いていこうと思っています。

──「柔道」というスポーツとして結果も出さなくてはならないし、“道”としての柔道も突き進まなければならない。難しいですよね。

本当に、今の子供たちには、“道”としての柔道というものを学んでほしいなと思いますね。

──昨年から、髙藤選手はe-sportsチームのアンバサダーに就任されましたが、これはどんな経緯だったんですか?

ゲームは、オリンピック前から好きでやっていたんです。気を紛らわすためにも、(ゲームを)やらないと、気持ち的にも持たない、というところがあったので、オリンピックの数日前までやっていましたね。
(東京)オリンピックの後に、プロe-sportsの方から、「アンバサダーをやってくれないか」という依頼が来ました。e-sportsはまだメジャーじゃないという部分で、僕は、(e-sportsを)盛り上げていきたいなと思っていたので、「ぜひ!」ということでやらせてもらっています。


──もともと、ゲームはいつごろから?

覚えていないくらい小さい頃からですね。ゲームボーイから始めてファミコンもやりましたね。

──そのゲームが、e-sportsというスポーツに変わったのは不思議な感じがしませんでしたか?

最初に「e-sports」というものを聞いた時には、“いや、ゲームは遊びだから”と思いましたね。“身体を動かさないからアスリートとは違うよ”と思ったんです。けど、今こうしてe-sportsのお仕事をさせてもらっている中で、プロの選手たちの気持ちや、やっていることが見えてくると、僕らと同じようにコツコツ毎日(練習を)して、やりたくもない同じ動作を何回もやったりしているので、“これはアスリートだな”と、今は思っています。

──技を習得するために何度も何度も練習する、という部分もあるんですね?

そうです。そこだけ切り取ってやる、という。柔道で言うと“打ち込み”と言って、最初の形を作る部分なんですけど、それと同じようなこともやっています。指先を温めるためにアップもやっています。とにかく相手よりも早く判断して、一瞬でもミスをすれば負ける世界なので、柔道とも似ているなと思っています。

──判断力と指先のテクニックで生き残っていかなくちゃならないとなると、それはそれで、よりシビアなスポーツという感じですよね。

僕らからしたら、すごくキツいなと思いますね。もっともっとe-sportsが大きくなれば、“朝走って気持ちをリフレッシュすることが大切”とか、そういう部分にも繋がってくると思うので、プロたちがこれから生活習慣とかにも気を使っていく時代が来るのかなと思っています。

──e-sportsから得られたことで、柔道に返ってくるものはあったりするんですか?

僕の中では、e-sportsを含め、ゲームの中で攻略法を学んできたので。柔道って、“背中付けゲーム”じゃないですか。そういう風に考えて、“相手をこっちに動かせると意外と楽に投げられる”とか、1つの攻略本を頭の中に作ってやるようにしたら、本当に金メダルを獲れましたね。

──柔道は、どのくらい攻略方法を立てるものなんですか?

僕は趣味で、海外も含めてほぼ全部の柔道の試合を観ているんです。その中で、他の選手の試合を、“今の判断が良かったのか?”とか考えながら観ているんですけど、それを勝手に道場に持ち帰ってやってみる、という動作を何回もしているので、自分の中ではかなり試合を作る技術があります。

──対戦相手のこともかなり詳しくわかっていて、攻略法がご自身の中で蓄積されているんですか?

そうですね。蓄積されていますし、どんどん追い詰めていって、最後は“相手が絶対に逃げられないシーンを作る”ということを心がけてやっています。
追い詰めているんだけれど、相手が追い詰められている感覚がない、というのが、一番追い詰めているんです。柔道で言うと、“気付かないうちに投げられている”というのが一番だと思うので、殺気を無くしてやっています。
相手は“うまく進んでいる”と思っているけれど、気付いたら僕の戦術の中にハマっている、という形を作っています。

──記憶に新しいところでは、東京オリンピック! 見事な金メダルでしたけれども、もともと、オリンピックというものは描いていた夢だったんですか?

初めてシドニーオリンピックをテレビで観て、その時に、“柔道の大会でこんなにすごいのがあるんだ!”と思ったんです。その瞬間に、「僕はオリンピックで金メダルを獲る!」と言っていたんです。(オリンピックで金メダルを獲って)本当に夢が叶ったなという感じでした。

──リオで初めてオリンピック出場されましたが、リオと東京は違いましたか?

大きく違うのは(東京オリンピックの時は)コロナ禍があったことですが、僕の中ではオリンピックはオリンピックなので、とにかく“オリンピックの金メダルが欲しい”という気持ちは、リオも東京も変わらず、戦うことが出来ました。

──この番組では、ゲストの方にCheer Up Songを伺っています。髙藤直寿選手の心の支えになっている曲を教えてください。

ゆずさんの「栄光の架橋」です。
アテネオリンピックの時に流れていて、その年に、僕が初めて全国大会で優勝したんです。まだ小学生だったんですけど、“本当にオリンピックに行けるかも”と思った時に流れていて(笑)。また、そのアテネオリンピックの柔道がすごくて、金メダルを8個くらい獲ったのかな。
この曲を聴くと、“まだまだ頑張らないと!”と後押しされますね。

──明日5月7日から、カタールのドーハで世界選手権が始まります! 髙藤選手にとって、このドーハでの世界選手権は、どのような大会になりますか?

僕自身、次に優勝すると5度目ということで、日本人男子最多の金メダル数になるので、“どうしても5回目を獲りたい”という気持ちと、また、来年のパリオリンピックに向けて、ここを獲らないとこの先はなかなか苦しい闘いが待っているので、早めに決めていきたいと思っています。
年齢的にも、何戦も試合をすると消耗してしまうので、出来れば少ない試合数でオリンピックの権利を勝ち取りたいので、なんとしても金メダルを獲ってオリンピック出場を決めたいです。

──東京は無観客でした。パリは有観客ですから、そこでの金メダル、味わってみたいですよね。

そうですね。あと、東京オリンピックで、柔道大国のフランスに団体戦で負けているので、僕が初日に出て、ちょっとフランスを黙らせようかなと思っています(笑)。

──明日からの世界選手権、頑張ってください!

はい! 頑張ります!


今回お話を伺った髙藤直寿選手のサイン入り色紙を、抽選で1名の方にプレゼントします。 ご希望の方は、番組公式ツイッターをフォローして指定のツイートをリツイートしてください。当選者には番組スタッフからご連絡を差し上げます。

そして今回お送りしたインタビューのディレクターズカット版を、音声コンテンツアプリ『AuDee』で聴くことができます。
放送できなかったトークが盛りだくさん! ぜひお聴きください!
過去1週間分の番組が無料でお楽しみいただけるradikoタイムフリー
番組を聴いて気に入ったら、SNSで友達にシェアしよう!
5月6日(土)OA分の放送はこちら