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2023.04.22

引退して変化した、妹・美帆との関係

今週の「SPORTS BEAT」は、スピードスケートを特集! オリンピックに3大会連続で出場し、金メダル2つ、銀メダル1つを獲得している髙木菜那さんをゲストにお迎えしました。
髙木菜那(たかぎ なな)さんは、1992年生まれ、北海道出身。
スピードスケートの日本代表選手として、オリンピックには2014年のソチ大会から3大会連続で出場。
2018年の平昌大会では、日本人女子として初めて、オリンピックの同一大会で2つの金メダルを獲得するなど、輝かしい成績を残され、昨年(2022年)春をもって、競技生活から退ぞかれています。


──この4月で競技生活から引退して1年。競技を離れて、生活は、ガラリと変わりましたか?

ガラリと変わりました。今までは、ずっとチームのメンバーとほとんど毎日共に行動していたし、練習でもよく会っていたので、コロナ禍でも寂しくはなかったんです。
でも1人になって、東京に出てきてからは何をするにも1人だし、話す相手もいないというのは、すごく寂しかったですね。

──それまでは北海道に拠点がありましたし、(東京に来て)本当に大きく変わったんですね。

はい。なので、ラジオが始まって、毎週会う人が出来たということはすごく嬉しかったです。

──毎週土曜日・朝6時から、3時間の生放送で、『From Athlete!』というラジオのレギュラー番組が昨年の10月から始まったんですよね。朝6時、かなり大変じゃないですか?

大変ですけど、私は朝に強いので、まだ寝坊はしていないです(笑)。
みんな、(朝から)めちゃくちゃテンションが高いです。萩野(公介)君がずっと喋っているので、みんなそれにテンションを持っていかれる、みたいな(笑)。

──引退会見で、「妹がいたからこそ、ここまでスケートを続けられて、世界で戦うことが出来た。妹が妹で良かったと心から思っている」とおっしゃっていましたが、やはり妹の髙木美帆選手は大きい存在でしたか?

あまり2人でこの話をしないので、2人とも恥ずかしいところはあるんです。
仲はすごく良いんです。でも、同じ競技をやっていたので、ライバルでもあるんですよね。だから、どちらかが落ちたら、それは仕方がないし、「一緒にオリンピックに行こう」なんて話もしたことはないです。どちらかが(オリンピックに)行けて、どちらかが行けなかった時に…「ごめんね」じゃないじゃないですか。努力して勝ち取ったものですから。それはもうお互いがわかっていることだから、そこにあえて執着はしていない。
あとは、お互いがそのぐらい努力してきているのを見てきているので、お互いがお互いをリスペクトしているからこそ、あまりそういう話をしない、というところはあったと思います。


──美帆選手とは2歳年が違っていて、菜那さんは中学、高校と頭角を現して、1位を取っていらっしゃいます。

頭角を現したのは1回だけです。中学校の時に1回だけ全国大会で優勝したんですが、その後すぐ妹がオリンピックに出ているので。私は、高校の時はインターハイも優勝していないですし、なかなか成績が…伸びている時もありましたけど、それでも世界で戦える選手ではなかったので、その時期が一番、妹との関係で悩んでいたかなと思います。

──同じ競技をやっているから、余計に考えてしまうことってありますよね。

そうですね。高校生の時には、オリンピックは夢の舞台だと思っていたので、私たちが行ける場所だとは全く感じていませんでした。
妹が(オリンピックへ)行った時に、オリンピックって、専用のスーツケースとかウェアとかが送られてくるんです。そういうところを見て、“オリンピックのユニフォームじゃなくても、日本代表のユニフォームを着てみたかったな”という思いがあったので、すごく羨ましかったですし、オリンピック会場に行っても、応援はしているけど、心から応援出来ていたかというと、やっぱり、多分、そうではなかった。
そういうところで葛藤があって辛かったんですけど、でも多分、それがあったからこそ、オリンピックに(応援に)行って、“世界はこんなに広いんだ”ということがわかって、夢に向かう気持ちが、ちゃんと出来た。“妹にも勝ちたいし、世界でも戦いたい”という自分の心の原動力があったからこそ、勝てなくても前を向いていけたんだろうなと思います。
多分、妹が妹じゃなかったら、「世界に!」という気持ちがこんなに強くならなかっただろう思っています。

──引退されてからは、美帆選手との距離感は変わりましたか?

もともと仲は良かったんですけど、“超”仲良くなりました(笑)。
今まで、競技している間は、どちらかの家に泊まるとか、一緒にいることがほとんどなかったんです。でも、去年、初めて美帆の家に泊まって、「なんかいいね」とか言って(笑)。

──ようやく、“姉妹”として?

もともと“姉妹”だったんですけど、2人ともアスリートで、アスリートとしてのリスペクトもあって、だからこそしっかり良い距離感を保ちたいという気持ちが2人ともあったんです。なので、関係性が悪くならない、一緒に夢に向かって戦いに行ける良い関係性を保つ距離感を、暗黙のうちに…“このぐらいの距離感だよね”というところを、多分、(お互いに)決めていたんだと思います。
(自分の引退後は)それがなくなったので、より“姉妹感”が強くなったかなと感じますね。

──美帆選手とスケートの話をすることはあるんですか?

前は、私が聞くことが多かったです。世界1位の人に話を聞けることなんて、あまりないじゃないですか。私はそこにプライドはないので、聞いて私が速くなるなら聞きます。もちろん自分で考えてからの、美帆の意見なんですけど、そこにプライドを持っていたら、自分は速くなれないなと思っていたので。
そこはもう、アスリートの1人としてリスペクトしてたからこそ、妹とかではなく、しっかりと聞きに行くということをしていました。

──引退されてからは?

引退してからは、妹が1人になって、“ちょっとうまくいかない”、“今まで出来ていたことが出来ない”ということがあるので、そういう話を聞いて、「でも、あなたは私にこういうこと言っていたよね」と返して、「確かにそう言ってた」と、自分でちゃんと(自分の)考えを思い出してもらったりしています。
やっぱり、何かが出来なくなると、良い時の自分を見つけ直したくなるんですよね。だから「(前に)“昔に戻りたくなるけど、でも、昔には戻れない”という話をしていたよね?」「確かにそうでした」とか、「こんな話をする時が来るとは(笑)」みたいな話を2人でしています。


──この番組では、ゲストの方にCheer Up Songを伺っています。髙木菜那さんの心の支えになっている曲を教えてください。

私が現役の時、特に平昌オリンピックの前後だったと思うんですが、よく聴いていた、wacciの「リスタート」という曲です。
私は、この曲は、(困難に)ぶつかってもぶつかっても、“自分の夢や目標があるなら、そこに向かっていくぞ!”と気持ちを切り替えるために聴いていました。
wacciさんとは、共通の知り合いがいて、ライブに行った時に紹介されて、知り合ったんです。wacciさんはその頃はあまり有名ではなかったんですけど、曲自体はすごく良い曲がたくさんあって、「何で売れないんだろうね」って、美帆と2人で勝手に作戦会議をしていたんです(笑)。

──(笑)。アドバイスとかをされたんですか?

橋口(洋平)さんには、めちゃくちゃ(アドバイスをした)。今もしてますよ(笑)。今は、メンタリティの話を(妹と)3人でしていたりとか。
私もそうなんですけど、自分のやっていることに、自信が持てない。私はずっと妹と比べてきてしまったからこそ、どんなに結果を残しても、自分が速いと思えなかったんです。メダルを獲っても、自分がすごい選手だなんて、1度も思ったことがなくて。
でも、それこそ、辛かった。周りからそんな風に(すごいと)言われるけれど、信じられない自分もいて。最後の最後、親から、「あと1年もないから、残りの数回のレースを、結果とかじゃなく本当に楽しんでほしい」と言われたんです。でも、「楽しむって何?」って。本気でやっているから。
でも、1つ1つのレースを後悔せずに、1本1本全力で行くことが、私にとって一番楽しめる方法かなと思うようになってから、いろんなことが吹っ切れて、“結果とかじゃなく、私が絶対に後悔しないレースをする”と思ったところから、タイムがめちゃくちゃ伸びたんですね。
そこで初めて、ワールドカップで、個人種目1500mで表彰台に乗ることが出来た。
なので、私は橋口さんの心もわかりますし、美帆は美帆で色々な思いがあるから、橋口さんに話しています。

人って、それぞれ、かけられる言葉のタイミングとかがあって、“そこに目を向けるかどうか”だと思うんです。
「楽しむって、何!?」って1回跳ね返したんですけど、それでも、“私にはそれが必要だから”と向き合うことが出来たから、多分、(親の)その言葉が生きてきたんだと思うんですよね。
だから、“向き合う”ということは辛いけれど、向き合わないと進めないことはたくさんありますし、向き合ったからこそ幸せになれることもたくさんあると思うので、嫌がらずにやってほしいなと思います。


──髙木菜那さんのオフィシャルサイトのプロフィールで、座右の銘は、「努力をすることに無駄なことはひとつもない」?

20歳の時に、この言葉を先輩に言われたんです。
自分がうまくいかない時に、いろんな人にアドバイスをもらって、そのアドバイスを聞きながら、自分の滑りを変えようと思っていた時があって。
そうしたら、「考えろ」と言われたんです。「お前、頭を使っていないだろう。自分で考えないと意味がない。人に聞くばかりじゃなくて、まずは自分で考えなければ答えなんて見つからないから」と言われて、“確かにな”と考えるようになったんです。
でもすぐには結果には残らなくて、“今、考えたり、自分がやろうと思って挑戦していることは全部無駄なんじゃないか、結果にならないのだったら、今までやってきたことは無駄だったんじゃないか”と思ったんです。
でも、その先輩に、「今、結果に結びつかなくても、その時やっていたことが5年後、10年後に、この後のスケート人生に絶対に役立つことがあるし、今 自分がやろうとしてやってきた努力には無駄なことはひとつもないから、大丈夫だよ」と言われて。
そう言われたら、自分が努力する意味ってあるんだなと思って。
それがもし結果に結びつかなくても、自分の人生に意味あるものになったり、結果が残らないことって一番辛いんですけど、でもこの努力は私には絶対に意味があると思うと、そこを信じていれば、そこに向けて続けられる。
だから私は、結果が良い時も悪い時も、“私がやっていることは絶対に無駄じゃない”と(信じて)続けてきたことが、ちゃんと結果として残ってくれたと思いましたし、私にとって大切な言葉だなと思っています。

──その先輩は、どなたですか?

私が前の会社に所属していた時の先輩で、バンクーバーオリンピックで銀メダルを獲っている長島圭一郎さんです。
私のスケートの技術とか、いろんなものの原点は長島さんなんです。いろんな言葉や技術を教えてもらって、今の自分があると思っています。


来週も引き続き、髙木菜那さんにお話を伺っていきます。お楽しみに!



今回お話を伺った髙木菜那さんのサイン入り色紙を、抽選で1名の方にプレゼントします。
ご希望の方は、番組公式ツイッターをフォローして指定のツイートをリツイートしてください。当選者には番組スタッフからご連絡を差し上げます。

そして今回お送りしたインタビューのディレクターズカット版を、音声コンテンツアプリ『AuDee』で聴くことができます。
放送できなかったトークが盛りだくさん! ぜひお聴きください!
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