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2023.02.11

小さな身体で真正面からぶつかり続けた18年間

今週の「SPORTS BEAT」は、元関脇の豊ノ島大樹(とよのしま だいき)さんをゲストにお迎えしました。
豊ノ島大樹さんは、1983年、高知県生まれ。
2002年に18歳で初土俵。2004年に21歳で新入幕、2008年には25歳で新関脇となり、通算703勝、殊勲賞3回、敢闘賞3回、技能賞4回、金星は4個。
2020年の4月に現役を引退されました。
現在はタレントとして、さまざまなメディアで活躍なさっています。


──身長は168センチ。相撲界では小柄な方になるんでしょうか。

そうですね。自分の前で言うと舞の海さんが同じぐらいだったんですが、現在は(身長・体重の)規定が下がりまして、今で言うと、炎鵬なども168cmぐらいなんですよね。
(以前、舞の海秀平氏が、新弟子検査規定の際、身長が足りず頭にシリコンを入れたということがあったが)そこまでして入りたいという子がいるならばと、規定が下げられました。
自分が入った時には、“第二新弟子検査”(2001年~2012年まで)というものがあったんです。それは、身長が167センチ以上、体重が67キロ以上(が対象)ですかね。スポーツテストをして、運動能力が長けていれば入れるという規定が出来まして。それで入門しました。

──部屋入りされて、順調に昇進されていった。

そうですね。2年ほどで関取に、十両に上がったので、まあまあ順調でしたね。

──どこかで壁にぶつかったりしなかったんですか?

壁で言うと、入門した時に、“すごいところに入ってしまったな”と感じたんです。
十両の手前の幕下の人に思いっきりぶつかっていっても、ボンってやられたら、一気に羽目板(壁)にふっとばされるような…それぐらいの力の差があったので、自分でも、“こんなところに入ってしまったんだな”と。でも逆に、“この人を倒さないとこの上が見えてこないんだな”“ふっとばされた人に勝たなきゃ”と思って、ターゲットにして。

──その方がそんなにすごいんだったら、横綱って(もっと)すごいんだなと思ってしまいませんか?

横綱がどれだけ強いんだろうと思わないくらい、その人が強かったので。多分、横綱というところまで見えなかったですね。その人が強すぎて。

──その強さは、何の強さだったんでしょうか。

相撲界に入ってすぐのことだったので、自分も、慣れない環境過ぎてビビっている部分もあったんです。相撲部屋の稽古の雰囲気も(アマチュアとは)違いますから。やっぱり、アマチュアでやってるような雰囲気じゃないので、すごくピリピリしている感じでした。
もちろん兄弟子も、新弟子に厳しくやるわけじゃないですか。そこで“うわ~!”と、壁を感じました。

──幕内力士となってから、優勝に対する気持ちは変化しましたか?

常に「優勝は狙う」という気持ちは持っていたんです。でも、“結果に残していかないと、口で言っても…”と思っていたんですが、1度、白鵬関と、14勝1敗で優勝決定戦まで行かせてもらったことがありまして。優勝に対してもう1歩というところまで行ったので、こういうことはちゃんと口にしていかないとダメだなと思って、それからは、場所前に「本場所の目標は?」と聞かれたら、常に「全勝優勝」と口にするようになりました。
自分の中では、「全勝優勝」は大きいことを言っているわけじゃなく、(例えば)初日で負けたとしたら、「14勝1敗」を目指す。2日目に負けたら「13勝2敗」を目指す…という、“15日間の中で負けていい相撲なんてない”という考え方だったんです。そういう意味で「全勝優勝を目指します」と言うようにしていました。
「14勝1敗」の優勝決定戦を経験してからは、優勝というものに対して、余計に気持ちが強くなりましたね。

──1年に6場所しかないと、優勝できる力士は少ないですよね。

特に、自分たちの時代には、白鵬関がいましたので。
いや~、強かったですね。45回優勝ですからね。“1回くらい、(自分が優勝しても)良かったじゃん?”ってすごく思うんですよね(笑)。14勝1敗ってなかなかできないので、(優勝できずに)悔しかったですね。

──白鵬関の強さの秘密って、どこにあるんですか?

わかりやすく言うと、(力士は)みんな、“まわしを四つに組めば強い”とか、“突き放しが強い”とか(得意な分野が)あるんです。それが、(白鵬関は)すべて長けている。全部が超一流という感じなんですよね。今だに、“何が弱点だったんだろう?”と思いますから。


──相撲は、立会い(取組を開始する瞬間)のタイミングを合わせるのも難しいですが、“立合いの変化(立合いでぶつからずに、相手の攻撃を左右どちらかに動いてかわすこと)”って、よく言われたりしますよね。あれは、あまり変化し過ぎてもよくない?

自分が入門して関取に上がる頃、元大関の武双山関が断髪される頃だったんですが、その断髪式で、(武双山関が)「自分が誇れることは、相手から1度も逃げなかったことだ」と言われたんです。
その言葉を聞いて、“ああ、格好良いな”と思って、自分も引退する時には同じことを言えるような力士になろうと思ったんです。
だからずっと、「自分は立会いの変化をしません」と言ってきたんですね。
…言うんじゃなかったって思いましたね(笑)。もう若い時から言っちゃっていたので、「絶対に変化しない」ということで、相手は思いっきりぶつかって来れる。でもそれは、自分が決めてやっていたので。

立合いの変化って、観ているお客さんにとっては面白くなかったりするんですが、変化も必要な時があるんですよね。立合いの変化がひとつあるだけで選択肢が増えるので、相手もぶつかって行きにくくなる。反則ではないので、そこは見ているお客さんも大目に見てほしいなと思います。
でもね、やっぱり観に行ってる以上は、激しい熱戦を期待するので、そこも難しいところではありますが。

──鮮やかにかわしたりすると、見応えがあると思いますが…。

でも、変なもので、小さい人が変化しても許されるんですけど、大きい人が変化すると“あいつ、何してんだ”みたいな(笑)。小さい人は得だなと思います。
“相手に考えさせる”でいうと、塩をまくじゃないですか。自分は、相手の足元にめっちゃ塩をまいていました(笑)。塩ぐらいじゃ、そんなに滑らないんですよ。でも、(たくさん塩をまくと)自分の対戦相手の足元は真っ白になるんです。相手も“滑るかも”ということで、足でならすんですよね。それでいいんです。滑らなくても、向こうが頭の中で“嫌だな”と考えてくれた方が、気持ち的に有利に立ったかなという(笑)。

──そしてこの番組では、毎回ゲストの方にCheer Up Songを伺っています。豊ノ島大樹さんの心の支えになっている曲を教えてください。

ゆずさんの『栄光の架橋』です。
自分は、怪我をして、本当に苦しい時代があったんです。幕下まで下がったことがあって、結婚もしていて、下がれば給料がなくなるんですよ。何度も“もう辞めようかな”と思うことがあったんです。
でも、なんとか幕内まで十両まで戻れたんです。
それまでも何度も聴いたことがあったのに、その時に(この曲を)聴いたら、“自分のことかな”と思うほど(歌詞に共感して)、聴いた瞬間に号泣していたんです。もちろん、それまでもいい曲だなとは思っていたんですけど、思い入れというのはそこまでなかったんです。でも、自分の苦しかったこととかが全部この1曲に詰まっている歌詞だったので、それからはこの曲が特に好きになりました。


来週も引き続き豊ノ島大樹さんをゲストにお迎えしてお届けします。お楽しみに!


今回お話を伺った豊ノ島大樹さんのサイン色紙を、抽選で1名の方にプレゼントします。 ご希望の方は、番組公式ツイッターをフォローして指定のツイートをリツイートしてください。当選者には番組スタッフからご連絡を差し上げます。

そして今回お送りしたインタビューのディレクターズカット版を、音声コンテンツアプリ『AuDee』で聴くことができます。
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