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2023.01.21

W杯を経て見えてきた“日本サッカーが進むべき道”

今週の「SPORTS BEAT」は、先週に引き続き、サッカー元日本代表としても活躍されてきた、石川直宏さんをゲストにお迎えしました。

石川直宏さんは、1981年生まれ。
小学生の頃から地元のクラブチームでプレーし、中学で横浜マリノスジュニアユース追浜に所属、高校からは横浜マリノスユースに昇格。
2000年には横浜F・マリノスのトップチームに昇格し、Jリーグデビューを果たします。
その後はFC東京への移籍を経て、23歳以下で編成されたオリンピック代表、そして日本代表にも選出されるなどの活躍をしてきていらっしゃいます。



──昨年末のワールドカップ、日本中大盛り上がりでしたね。石川さんも観ていらっしゃいましたか?

もちろんです。寝不足でしたね(笑)。

──アジア予選、森保ジャパンは苦労する場面も多かったり、試合内容も含めて、“日本代表離れ”みたいなワードもありましたけれども、いざ本大会が始まったら、ドイツに勝ち、あのスペインに勝ち…で、一気にボルテージが上がりましたよね。

たくさんの重圧を受けるのが代表選手ではありますけど、その重圧を力に変えることができるのも、あのピッチに立つ選手たちの特権でもあるので。その姿を見せてくれたな、一体感を作ってくれたな、日本中を熱狂させてくれたなと思っています。

──FC東京勢でいうと、長友佑都選手。年齢を跳ね返して、と言いますか、大活躍でしたね。

そうですね。ただ、その夏(2022年)の、暑い時期の天皇杯で佑都と話した時に、“正直、精神的にも、身体的もしんどい”ということを初めて聞いたんですよ。

──今まで、そういうフィジカルの不安というのは?

(長友選手は)言ったことがなかったんですよ。どうにかして自分でコンディションを整えて、本当に1日1日を大事に過ごしてトップにチャレンジし続けている選手なので、そういう選手がぼそっと言った言葉だったので、自分の中ではすごく驚きでした。
これからワールドカップもあるという状況、まだ出場もわからない状況で、“じゃあ、どうしていくのか”という。いろんな葛藤があった中で、彼はそれを力に変えて、あれだけのパフォーマンスを出してくれた。チームを1つにしてくれた。そういった頼もしさも、近くにいて感じましたね。

──日本代表としての戦い方というのは、結局、どこを目指せばいいのか。アジアで戦う日本代表の戦術なのか、ワールドカップで勝ち上がっていくための戦術を磨いていくのか。これはどうすればいいんでしょうか?

非常に難しいです。アジアでの戦いというのは、ある意味、日本はドイツやスペインのような立場なんですよね。なので、相手が研究して守ってくるんです。そこをこじ開けるのは容易ではないですし、日本に対してドイツもスペインも非常に苦労しましたが、日本はアジアではそういう(ドイツやスペインのような)立場なんですよね。ただ、“受けて立つ”というよりは、そうされた時に、次の一手、二手を、アジア(での戦い)でもしっかりと持っておくこと。相手に引かれて点を取りに行く、けれど、スペースがない。それをどうこじ開けるかというところがずっと続いている中で、チャンスを相手にモノにされて負けてしまう。そういうシーンも予選でもありました。
ただ、そうされた時に、(例えば)今回のような、スペインやドイツ相手に、二手、三手をしっかり持てる。そういう引き出しであったり、判断、それを実行する力。そのあたりが大事になってくるんじゃないかなと思います。

──相手チームに引かれた時に中々点が取れないという課題が、コスタリカ戦で出てしまった。そこでチームとして、崩し方の引き出しというか、戦術面をもうちょっとブラッシュアップすべき?

そうですね。チームとしてどういう崩しをするか。
例えば、攻撃的な選手、足の速い選手、キープできる選手…いろんなタイプがいますが、“この選手に合わせた戦術にしよう”となった時に、じゃあ、例えばその選手が怪我をしていなくなってしまったら、その戦いができなくなるのか…となると、それはやっぱり違うと思うんですよね。どんな選手がいても、各特徴はありますけど、そのチームが目指すサッカーの中で、より最大限、力を発揮してプラスαをもたらしていく。
ただ、そのベースというものの、さらなる積み重ね、日本がどこを目指すのかというところを含めて大事になってくると思います。

──森保(保一)監督が、4年経って、さらに続投するという話になっていますが、本大会前に、三笘選手が、「チームとしての決まりごとが少なすぎる」と言っていました。この本大会での活躍でついつい見逃してしまいがちな、日本代表がこれから見直していかなきゃいけない部分というのはあるんじゃないかなと思うのですが。

おっしゃる通りで、これから選手もどんどん変わっていきますし、“どの選手をベースに”というよりは、“どのサッカーをベースにして選手をチョイスしていくか”というところになっていくと思います。
三笘(薫)選手の言葉じゃないですけど、ワールドカップの期間の中で、選手同士が一緒にいる時間が、けっこうあったと思うんですよ。その中で相当なコミュニケーションを取ったと思うんですよね。それが大事なんです。
日本代表の選手たちって、海外でプレーをしていて、試合になったらパッと帰って来て2、3日で調整して、試合をして帰る。それは基準も変わるし、求められ方も変わってくるとは思うんですけど、まず、このチームとしてみんながどのようにプレーするかを描けるベースがあって、その中でそれぞれの特徴を活かしていく。そのベースというところを、監督もそうなんですけど、選手たちがお互い歩み寄りながら作っていくということが大事になってくると思います。

──石川さんもいろんな監督の下でプレーされてきましたが、日本人監督の良さ、外国人監督の良さはそれぞれあったりしますか?

ありますね。日本代表でいえば、最初はジーコ監督に選んでいただいて、そして、岡田(武史)監督、ザッケローニ監督。各特徴はあるんですよね。良いところもあれば、“そうじゃない”というか、もう少し選手たちが自立しなければいけないところも…。それも含めてですけど、やはり日本人の特徴を知っている監督というのは、非常に大きいと思います。
日本人って、自由を求められ過ぎると、“どれを目指すの?”って迷いが生まれちゃいますし、逆に、日本人は真面目なので、「これをやるんだ」となったら、それしか出来なくなってしまう。そのバランス感というものは、多分、日本人が一番理解していて、規律をしっかり守りながらも、そこに引き出しを持てるようなチョイスを与えるということを監督がしていく。
だから、正直、「どの国の監督が良い」ということはないですけど、ただ、「日本のことをよく知っている」というところが大事になってくるかと思います。

──森保さんもJリーガーで日本代表でしたが、そのうち、海外でプレーした経験者、もしくは指導者として海外で勉強する人材も増えてくるんじゃないでしょうか。

そうですね。既に、アジアやヨーロッパでライセンスを取りに行っている方も、実際に指導にあたっている方もいます。そういった経験を個人だけで終わらせるのではなく、日本サッカー協会としても、情報をしっかりと、日本にいる指導者などに伝えていく。そういったことが指導者としての新たなチャレンジやエネルギーに繋がりますし、何よりも、日本がどこを目指すべきなのかということを、その情報を元に、それぞれがやっているカテゴリーや地域の中で、基準を作っていく。そういったことの繰り返しで、日本がどう進んでいくべきなのかが明確になってくる。選手だけでなく、指導者の成長やチャレンジというものは大事になっていくと思います。

──さあ、そしてこの番組では、毎回ゲストの方にCheer Up Songを伺っています。今週も、石川直宏さんの心の支えになっている曲を教えて下さい。

Rickie-Gの「Life is wonderful」です。
一番最初に聴いたのは現役の選手の時で、沖縄の石垣島でのキャンプで、行き帰りはバスで移動するんですけど、その時に初めてこのRickie-Gの声を聴いて、この声を聴きながら毎回キャンプに臨んでいました。
実は、自分の引退する試合で、前回紹介したCaravanの曲をかけさせてもらったんですけど、翌日、その当時、FC東京には若い“FC東京U-23”というチームがあるんですが、そこで、オーバーエイジ(枠)で最後に(試合に)出たんですよ。その時に、Caravanと同じように、試合が終わった時にスタジアムに流してもらったのが、Rickie-Gの「Life is wonderful」なんです。

──サッカーのスピード感、テンポ感じゃないじゃないですか。わりとまったりとしていて。こういう感じの曲を聴くことが多いんですか?

けっこうあります。ドライブで海沿いを走ったりした時はこういう曲を聴いたり、夜とかしんみりしながら次へのチャレンジ、なんて時は、Caravanを聴いたり。もちろん、CaravanにもRickie-Gにもいろんな曲がありますけど、(オンとオフで)そういった聴き分けはしていますね。

──最後に、現在の石川直宏さんの「夢」を教えてください。

今は現場に立ってバリバリ指導して…ということはないんですけれど、そこには理由があるんです。
サッカーにも共通していますし、他の競技をやっている子供たちもそうですし、スポーツをしていない子たちもそうなんですが、“感度を高めるような活動”を自分の中で大事にしているんです。
“感度”というのは、伸びしろだと思っていて。吸収力。一言誰かとコミュニケーションを取って話をしている時に、言葉に対していろんな角度でとらえることが出来たり、起きたことに対して、例えばネガティブなことが起きた時に、ネガティブなことをネガティブだけで終わらせるのではなくて、“自分ってこういうこともあるけど、次はこうしていきたい”というエネルギーにする。その吸収を出来るかどうかが、感度の違いだと思っています。
僕は、ネガティブなことが起きた時に、感度って高まると思うんですよ。
例えば怪我とか、試合に出られないとか、ワールドカップで負けてしまった時に、“悔しい”と思うのはもちろんですけど、“じゃあ、次にどうしていったらいいのか”と(考える)、これが感度だったり、次へのエネルギーだと思うんです。
そういった感度を僕は大事にして生み出していきたいですし、感度を生み出すためには、いろんな越境をして、「サッカー×〇〇」だったり、サッカーだけじゃない世界をサッカーに取り込んでみたりしながら、サッカーがどう見られているのか、どう求められているのかということを考えた上で、僕はサッカー界に貢献したい。
そういうことをやっていったら、サッカー界も良くなるし、他と掛け合わせた“他”も良くなっていくだろうし…という、自分の中での夢があるので、感度を高めて、感度の高い人たちを増やして、お互いが協力しあったりリスペクトし合える世の中にして、世の中を幸せにしたいなと(笑)。ちょっと大きい(夢)です(笑)。

──素晴らしいですね。サッカー人生を順調に進みたい、エリート街道進んでいきたい。でもそうじゃない出来事が起こった時に、逆に自分の力になる。

そうなんですよ。それは自分が経験してきましたし、長友佑都選手、久保健英選手、他の選手もそうですけど、そこから這い上がっていく、エネルギーにしていく選手はやっぱり魅力的ですし、応援したくなりますし、自分の人生ではありますけど、そういった人の人生に重ね合わせたくなる。そういう人たちを増やしたいなと思いますね。



今回お話を伺った石川直宏さんのサイン色紙を、抽選で1名の方にプレゼントします。
ご希望の方は、番組公式ツイッターをフォローして指定のツイートをリツイートしてください。当選者には番組スタッフからご連絡を差し上げます。

そして今回お送りしたインタビューのディレクターズカット版を、音声コンテンツアプリ『AuDee』で聴くことができます。
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