石川さんは、1981年生まれ。小学生の頃から地元のクラブチームでプレーし、中学で横浜マリノスジュニアユース追浜に所属、高校からは横浜マリノスユースに昇格。
2000年には横浜F・マリノスのトップチームに昇格し、Jリーグデビューを果たします。
その後はFC東京への移籍を経て、23歳以下で編成されたオリンピック代表、そして日本代表にも選出されるなどの活躍をしてきていらっしゃいます。
──全国高校サッカー選手権大会が終わったばかりですが、今回も盛り上がったんじゃないでしょうか?
盛り上がりましたね。決勝戦は5万人を超えるファン、サポーターの方がいらしてましたし、新国立(競技場)での決勝ということで、見ごたえがありましたね。
──昨年末、サッカーワールドカップが開催され、日本中が熱狂しました。その勢いそのまま、という感じでしたね。
そうですね。PKも多かったですし(笑)、ワールドカップと重ね合わせる方たちも多かったんじゃないかなと思います。
──今回の高校サッカー選手権は、強豪校はもちろんのこと、国見高校などの古豪も出場している中、ベスト4はフレッシュな顔ぶれになりましたよね。
そうですね。まず全体的に力が拮抗していると思いますし、それぞれのスタイルというものが試合に出ていたと思います。
──岡山県勢としては初の優勝となった、岡山学芸館高校。強さはどこにありましたか?
やはり、全員で戦うところですね。リーグで言うと、高校生年代のトップに、「プレミアリーグ(高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ)」というものがあるんですが、(岡山学芸館高校は)そこには所属していないんですね。その次のプリンスリーグというところ(にいる)。
強豪が多くひしめく中でタイトルを獲ったということで、1人1人を比べた時に、正直、他の(強豪)高校に比べたら差がある部分もあったと思うんですけれど、そういうところを、全員攻撃、全員守備(でカバーしていた)。そして何より僕が驚いたのは、監督が“速いポゼッションサッカー”ということを掲げられていた。
ポゼッションは“ボールをキープする”ということなんですが、ポゼッションするとスピードが少し遅れたりするんですよ。
──日本代表でも、ボールを持てる時は、どうしても展開が遅くなってしまいがちですよね。
そうなんですよ。そこに、“速い”という言葉を入れてきて。ポゼッションしながらも速く攻める。だから両方を意識しておくこと。相手の状況に応じたプレーを全員でしていく、という。それが攻守において見られた試合が多かったですね。
──岡山学芸館高校の高原(良明)監督は、ファジアーノ岡山の選手だった時にコーチで入って、監督になられてから15年。だいぶ改革が進んだといいますか。そして、去年の4月からまた、体制が新たになった。高原監督の師匠でもあった平清孝氏を迎えて、そこでメンタルも変わったし、フィジカルコーチも付けることによって、より強さが増したという話も聞きました。
選手だけでなく、監督、コーチ陣…(チームの)一体感というものはこの大会も含めて本当に大事だと思います。
多分、最初は人数も少なくて試合も出来ない状況だったり、監督自らがバスを運転して、選手につきっきりでコミュニケーションを取りながら…というところからのスタートだったと思うんですが、関係性の質が濃密になって信頼関係が生まれて、そして結果に結びつく、ということを示してくれたんじゃないかなと思います。
──高校サッカーの質、レベルは上がりつつあるんでしょうか?
上がっていますし、実際に卒業して大学に行く選手、J(リーグ)に行く選手、海外に飛び出す選手もいます。
高校を卒業して即戦力といえば、例えばFC東京の松木玖生選手。昨年のシーズンは1年目のルーキーでしたけど、34試合中32試合に出てますし、即戦力だった。(高校を卒業して)すぐに活躍できる、そういったベースがしっかりできているなという印象ですね。
──青森山田高校はフィジカル面がすごいと言われていましたし、今回の岡山学芸館高校もフィジカルが強かったなと。トレーニング方法も変わりつつあるんでしょうか。
「身体を強くする」というベースの中で、「いかに強くした身体自体を流動的に、柔軟に対応させるか」というところまで、今、来ていると思います。それが怪我の予防やパフォーマンスの向上につながるので、そういう知識や、それを伝えることができる指導者たちが非常に増えていると思います。
──そして、今回の高校サッカーからも、新たなステージに行く選手が多い。今大会発表されているだけでも、10人がプロ入り予定。石川さん個人として見ても、素質豊かな選手は多かったですか?
多かったですね。例えば、日大藤沢の森重(陽介)選手は、大谷選手のように二刀流。フォワードをやりながら守備もして、セットプレーでも点を取って…と、スペシャルな部分というものがポジションが別でも出来てしまう。そういったレベルは非常に上がっていますし、(チームとしての)戦術だったり個人戦術の理解度というのは非常に高いと思います。
──高校を卒業していきなりドイツ(ボルシアMG)に行く、(神村学園)福田師王選手。これはすごいことですよね。
すごいですね。インタビューを聞いていても、見ているところは日本代表。「日本代表として日本を引っ張っていく」という判断基準なので。
20数年前の僕と比べるのはアレですけど…まずはJリーグに入って、その中でレギュラーを獲って、活躍が認められて日本代表になる、という青写真を描いて自分は入団しましたけど、もうそこじゃないですからね。福田選手は、「自分が活躍して日本を引っ張っていく」という中で、“じゃあ、自分が何をすべきか、どんな選択をすべきか”ということを考える、ワールドワイドな判断力(がある)。そこをサポートする学校だったり、周りの方々の協力だったり、そういったところが本当に世界基準になっているなと思います。
──若くして海外移籍する選手が多くて、今、日本代表も半分以上が海外組。今サッカーを始めた人たちは、まず海外のクラブに行って、そして活躍して日本代表になる、という夢を当たり前に描くようになっていますよね。
基準になっていますし、そういう部分では、Jリーグも全国で58クラブあって地域密着でやっていますから、その魅力もありますし、必ずしも「Jリーグから世界へ」というだけじゃなく、いろんな流れでチャレンジできる選択肢が増えている。ですから、そこは非常にプラスだと思います。
Jリーグでやってきた僕も含めて、Jリーグをもっともっと盛り上げたいですし、Jリーグの魅力、世界にはない魅力というものも、選手と一緒に作っていきたい。その中でレベルアップしていきたいなと思っています。
──やっぱり、早いうちにプロの指導、レベルの高い指導をしてあげることは大事なことですよね。
そうですね。プレーすることと指導することは別物なので、コーチ、監督になった時に、指導者のライセンスもありますので、そこでしっかりと学ぶ。ただ、プレーしていた時の経験、選手での経験というものは間違いなく指導に活きると思いますので、その両方をしっかりと指導者が理解して積み重ねた中で、選手に落としこんでいく。
あとは、社会でのふるまいであったりとか、人間性の向上ですよね。そういったところが高校サッカーの3年間で磨かれるかなと思います。そういう相乗効果の中で、素晴らしい、魅力ある、“サッカー人”であり“人間”が増えてほしいなと思っています。
──今大会で、石川さんが“面白い”と思った選手はいましたか?
今、FC東京でも仕事をしているんですが、昌平高校の荒井悠汰選手。
彼はドリブラーで、身体も強くて、的確な判断もできる。実はゴールもロングシュートを決めている。試合には負けてしまったんですけど、そういう状況判断だったり、自分をどこでどう表現すればいいかということを、非常によく理解している選手なんです。
もう今、沖縄のキャンプに行ってるんですけど、昨シーズン、カップ戦でも既に試合に出ていますし、今シーズンのプレーに期待していますね。
──さあ、そしてこの番組では、毎回ゲストの方にCheer Up Songを伺っています。石川直宏さんの心の支えになっている曲を教えて下さい。
Caravanの『Retro』です。
自分自身は2017シーズンをもって選手を引退したんですが、その時に何度も聴いていた曲です。フレーズの中に、“ひとつの自分の時代が終わるけど、でもその先、また新たな幕開け”というニュアンスがあるので、探しながら聴いてもらいたいと思います。
来週も引き続き石川直宏さんをゲストにお迎えしてお届けします。お楽しみに!
今回お話を伺った石川直宏さんのサイン色紙を、抽選で1名の方にプレゼントします。
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そして今回お送りしたインタビューのディレクターズカット版を、音声コンテンツアプリ『AuDee』で聴くことができます。
放送できなかったトークが盛りだくさん! ぜひお聴きください!