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2022.12.10

W杯に挑んだサムライブルーの戦いを総括!

今週の「SPORTS BEAT」前半は、生放送でお届け! 先週に引き続きスポーツジャーナリストの中西哲生さんをゲストにお迎えして、サッカー日本代表のワールドカップでの戦いを総括していきました。
中西哲生さんは、1969年生まれ。
大学卒業後の1992年にJ-Leagueの名古屋グランパスエイトに入団。
アーセン・ベンゲル監督のもと天皇杯優勝し、1997年に当時JFLだった川崎フロンターレへ移籍。
1999年には主将としてJ2初優勝、J1昇格に貢献。
2000年末をもって現役を引退されました。
引退後は、スポーツジャーナリストとして、様々なメディアでのご活躍はご存知の通り。
現在は、久保建英選手、また、レアル・マドリードの下部組織に所属している「ピピ」こと中井卓大選手などを、パーソナルコーチとして見ていらっしゃいます。


──日本代表の旅、終わっちゃいましたね。

本当に残念でしたが、選手たちは素晴らしいプレーを見せてくれました。僕は1982年からずっとワールドカップを見ているんですけれども、今まで見てきたワールドカップの中で一番心揺さぶられる、しかも、本当に感動した大会でしたね。まだ終わっていないですが…。
日本の戦いぶりに関して言うと、本当にもう、素晴らしかったと思います!

──「ワールドカップとは、負け方を競う大会でもある」。もちろん他の競技もそうですけれども、優勝は1チームしかなくて、必ず、他のチームは負けていくわけですよね。
そういった意味で言うと、日本代表は「good loser」というか…。

まあ、「good loser」という言葉を選手たちは受け入れがたいとは思いますけれども、でも、今やれることは、おそらくやれたんじゃないかなと思います。

──その決勝トーナメントの1回戦目のクロアチア戦、今までと違って、日本が先制しましたよね。

ここも、今までとは違って明らかに日本が成長した部分だと思います。グループリーグ、グループステージの中で、セットプレー…もちろんいろんなセットプレーがあったんですけど、決勝トーナメント1回戦で見せたような形というのは、実は(これまでの試合では)見せていなかったんですよ。だから、そこを見せていなかったというところも、今回、決勝トーナメントで先制できた理由だと思います。クロアチア戦は、頭からセットプレーを結構工夫してやっていたんですよね。

──変化がありましたね。

単純にコーナーキックを中に蹴る、とかいうのではなくて、何人かパスを繋ぎながらクロスボールを入れる、みたいなことをやっていたんですよ。

──これは、隠していた?

隠していたと思います。

──日本代表は、今、セットプレー専門のコーチがいるとか。

はい、います。世界的にもそういうコーチはいますし、極端なところで言うと、スローインのコーチがいるチームもありますから。

──逆に、決勝トーナメントまでそのセットプレーを見せてこなかったということは、余裕があった?

多分、出さなくても良いシチュエーションになったんだと思います。例えば、ドイツ戦の時も、“1戦目にこれを出すのはどうかな?”と思って出していない部分があったと思うんですよね。“まだ取っておきたい”と。それじゃなくても、崩せそうな可能性はあるということで、まず勝負したというところがあると思うので。それで、最終的に逆転できたじゃないですか。
スペイン戦では、もしかしたら出そうと思っていたかもしれないけれど、後半の頭に、2点、ポンポンって(点を)取ってしまったので、もう出す必要もなくなった。

──流れがあって。

そう。“ここぞ”という時に出そうと思ってたところが、“ここぞ”が、今までなかったという可能性もあるんですよね。

──そして、ゴールを決めたのが、前田大然選手。今まで、あれだけ献身的にチームに貢献してくれたので、少し嬉しかったですよね。

そういうところにボールがこぼれてくるということももちろんあると思いますし、吉田麻也選手が、堂安(律)選手からのボールを右のアウトに当てて折り返したんですけど、吉田選手が狙ってやったのか偶然落ちてきたのかちょっとわからないんですが、でも、ちゃんとその場所に居た。左のインサイドのボレーだったんですけど、あれを正確に決められた前田選手の素晴らしさだと思いますね。

──でも、逆に先制してしまったことで、今まで、ドイツ戦やスペイン戦ではビハインドの状態でハーフタイムに入って、そこで戦略を変えたじゃないですか。(クロアチア戦では)日本代表は、延長もあるし、(戦略を)変えられなかったですよね?

仰る通りで、先週、僕は「日本は背水の陣になった時は強い」という話をしましたよね。背水の陣になった時に強くなると僕も理解は出来ていましたし、「1点取った時にどうなるか?」というのは僕もずっと考えていたことなんですが、決して相手の攻撃を受け過ぎてたわけじゃなくて、受け過ぎていたからダメとかではなくて、やっぱりあのクロアチアのゴールは、決めた方を称賛するべきですね。

──あの、浅いところからの。

ペリシッチのヘディングがスーパーでしたね。右足で右側から蹴ってくるボールって、左回転なんです。で、左回転で巻いてくるボールって、頭に当たった時にまた左回転になるんですよ。だから、ペリシッチは多分、キーパーの右側の方にヘディングすると少し回転が掛かってゴールの遠くから巻いて来てゴールに入る軌道になることをわかってヘディングしていたと思います。
僕もそれはずっと前から理解してて、パーソナルで教えている選手に、ヘディングする時は、右からインカーブで来たボールは、キーパーの1mぐらい右側にヘディングすればちゃんと綺麗に外側から巻いてキーパーが手の届かないところから入る、ということはずっと選手に教えていたので。それを完璧にやられたかなと。あれは、相当レベルの高いヘディングですよ。あれは、キーパーは取れないです。

──そして延長でも決着がつかず、PK戦に。これは報道で知って驚いたんですが、(PKは)立候補制だったと。しかも、南野(拓実)選手はその時まで知らなかったとコメントしていましたけれど。

そこは賛否両論あるし、どちらが正しいかはわからないです。監督が、「じゃあ1番目はこの選手、2番目はこの選手、3番目はこの選手」とちゃんと言う時もあるんです。今回みたいに、「挙手制で、蹴りたい人は蹴ってください」というパターンも、もちろんあります。だから、そこはどちらが正しいかわからない。もし挙手制で勝っていたら、それはそれでOKだったわけですよね。結局、全て、結果論です。だから、どちらが良いというのは、まだ言えない状況かなと思います。

──ただ、挙手制になるんだったら、それを前もって知らせておくという方法もあったんじゃないかなとも思いました。プレッシャーがかかるPK戦。

僕もPK戦もやったこともありますし、試合中のPKを蹴ったこともありますけれども、長いサッカー人生の中でも、PK戦は、ちょっと試合中のPKとは違うんですよね。

──やっぱりプレッシャーがかかるものなんですか?

プレッシャーがかなりかかりますね。試合中のPKって、まだ、PKを外した後も、もしかしたらその後またゴールを決められるかもしれないし、取り返す余地はあるんですけど、PKは、もう、その後、試合はないので。
わかりやすい例で言うと、バスケットボールのフリースローと似てると思いますね。「決めて当たり前」ということがネガティブに働く、というところですよね。
近年、今までのPK戦と変わってきた部分があって、それは何かというと、ゴールキーパーのクオリティーが明らかに上がってるんです。あと、(キーパーの)サイズが大きくなっている。今までは速いボールをギリギリに蹴れば入るというイメージはあったんですが、今は、速いボールをギリギリに蹴っても、キーパーのレベルが上がってるので、止められちゃう可能性があるんですよ。となると、よりギリギリを狙わなきゃいけなくなって、ポストに当てて外してしまう。
キーパーの能力がかなり上がっていて、PKにおいて入る確率が少し下がってきている感は、僕はあると思いますね。

──そうですね。今日も、準決勝2試合ともPK戦でしたけれども、意外と止められたりしてましたよね。

止められますよ。もう、キーパーのレベルが本当にすごい。リバコビッチというキーパーが日本の前に立ち塞がったわけですけど、日本がPKがうまくいかなかったというよりは、相手のキーパーが素晴らしかったのだと見るべきだと思います。だって今日もブラジルを相手にリバコビッチは1本目にPKを止めているわけですから。

──あれは大きかったですね。
スペインもPKで負けて、ブラジルもPKで負けて。

例えば、スペインに関して言うと、この1年間で1000本(PKの)練習してきたと監督が言っていましたけど、1000本練習してきたワールドカップ優勝経験国が、3本続けて止められる、外してしまったわけです。1本目はポストだったんですけど、(その後)2本止められて。3分の0ですよ。だから、どれだけ練習してきても補えないものがあるというのがワールドカップのPK戦、決勝トーナメントのPK戦だと思います。キーパーも情報を知っているわけですよ。過去何年間でどっちの方向に何本蹴ったか、みたいなことを全部知っている。

──それぞれのキッカーが出てくる時に、どちらに蹴ることが多いとか?

そう。今回クロアチア戦で、リバコビッチは、「日本のデータはあったけど、最後は自分の勘で飛んだ」と言ってましたから。そこは、「最後は自分の第六感を信じる」みたいなキーパーもいるし、忠実に統計通り飛ぶキーパーもいるし、どちらが正解が分からないです。その瞬間、瞬間の判断なので、そこは、まだ科学では解明できない。
まあ今回、そういうテクノロジーが入って、テクノロジーでは解明出来ない、より判らなくなった部分は実際ありますね。

──そして、久保建英選手。

本当に、本人が1番辛かったんじゃないでしょうか。
本人と直接やり取りしましたけれども、本当に難しい大会だという話をしていました。僕は10年、彼のコーチをしているんですけど、みなさん、彼が順風満帆だと思ってらっしゃるかもしれません。けれど、いつも久保選手は厳しい状況に置かれることが多いんです。かなり苦しい思いをしてここまで成長してきている選手なので。
今回もまた苦しい経験をしたんですけど、この経験をした久保選手が、またさらに大きくなって帰ってくるのが楽しみです。初めてのワールドカップでこういう経験したことは、絶対にまた次のワールドカップに生きてくると思いますし、それを糧に成長できる選手だと僕は思っているので、そういうことができる久保選手のことを僕は本当に尊敬していますし、そういう久保建英選手であってほしい。4年後に、「前回こういうことがあったから今回こういうプレーができました」というのを、僕は期待しています。

──4年後の前に、「パリ・オリンピックに出たい」と言っていましたね。

それは、すごく僕も心に響いた一言でしたね。パリ・オリンピック、アジアカップ。日本代表で何も成し遂げられてないことが嫌だ、自分が結果を出せないことが嫌だということをちゃんと言って、そこに出て行きたいと言っていたので、そこでの戦いも楽しみですよね。

──そして今回、フロンターレ勢の活躍が目覚ましかったですよね。

先週も言いましたけど、中村憲剛さんの薫陶を受けてきて、今回、日本がクロアチアに敗れた理由の1つとして、クロアチアは常に相手を見ながらやり方を変えてこれるチームだったんですよ。

──上手さがあった?

はい。それが、これからのワールドカップで勝つには必須になってくると思うんです。今のまま、日本がやってるサッカー…もちろん今回も素晴らしかったと思いますけど、このサッカーをやっていても未来はないと思います。ちゃんとボールを握れるようにならなきゃいけない。常に相手を見ながらやり方を変えられる、後出しジャンケンができるチームにならなきゃいけないんですよ。
フロンターレは、それをずっとJリーグの中でやってきた。今年は優勝できませんでしたけど、過去2年優勝、この5年で4回優勝しているんですが、それができた理由は、「相手がどうしてきたらこうする」という後出しジャンケンを試合中に何度もやれる。こちらが変わったら相手も変わるわけですよ。向こうが変わったら、またこちらも変わらなきゃいけないんです。何度も何往復しても、また違う勝ちの手を出せるような。
帰ってきた時の会見で、森保監督が、ちゃんとその準備はしてきたと言っていたんですね。ちゃんとA、B、C…といろんな手を用意してきたけど、それが足りなかったと。だからA、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、L、M…ぐらいいかないとダメかもしれないし、それをチームとして、まず監督として持っていなきゃいけないんですけど、プラスα、グループとして…。

──ピッチの上で選手たちが対応しなきゃいけない部分?

そう。ハーフタイムがなかったら途中で変えられないわけです。だから目の前で起こったことに対して後出しジャンケンできるか、みたいなことが、チームでも、グループでも、個人でもできなきゃいけないんですよ。
となると、やるべきことは大体わかってきますよね。「どうすべきか」ということは。

──どうすればいいんですか?

ボールを握ってちゃんと勝てるチームにもしなきゃいけないし、今回のように守備でリズムを作って、そこからショートカウンターでゴールも獲らなきゃいけない。ありとあらゆるバリエーションを使えるようにならなきゃいけないし、それを、みんなが阿吽の呼吸でできないと厳しい。あと、空気を読まない人も必要ですし。それは三笘(薫)選手みたいに“自分で行ける”ということなんですけどね。そういう人がいると、相手も読めなくなったりするので、その組み合わせですね。それは今回、ある程度、みんなわかったと思います。

──中西さんは、先週の番組で「キレッキレ」の最上級が「キュンキュン」だと仰っていましたけれども、今回の日本代表の戦いを振り返って、最も「キュンキュン」した瞬間は?

「キュンキュン」の方ですか? 田中碧選手がゴールを決めた瞬間ですかね。

──ずっと毎日、日記に、「ワールドカップでゴール決める」と書き続けた。

僕にも、いつもそう言ってますからね。直接メッセージが来た時に、「優勝します」とか、「次も絶対勝ちます」とか、「このままでは絶対に終わりません」とか、メッセージのやり取りの中でも、ちゃんとそういうワードが入ってきているということは、言霊じゃないけど、そういうことをしっかり理解した上で発言もしているし、他の選手とだったり、まあ僕ともそうですけど、コミュニケーションを取っているということが、やっぱりプレーに出たんじゃないですかね。
だから、三笘選手が絶対に折り返すと信じてあそこに走ってきているところに、僕はもう何か、胸アツな感覚が生まれましたね(笑)。

──クロアチア戦の延長前半の最後の方に、三笘選手が長いドリブルをして、切り込んでシュート。あれを決めていたら、もう、大ヒーローだった。惜しかった。

クロアチア戦の延長戦の時は、本当にもう、三笘選手の突破が頼りだったので。そんな中でもあれをやってのけられるすごさというのは、本当にびっくりしましたね。

──今回、日本代表の選手はみんな活躍したので、海外の強豪チームから興味を持たれるとか。

それはもちろんあると思います。田中碧選手はドイツ2部にいますけど、なんとかステップアップして欲しいですし、三笘選手はプレミアリーグにいますけど、プレミアリーグの他のチーム、もっと強豪のチームから引き抜かれる可能性もありますし。
久保選手は今のチームで本当にフィットしてるので、ここでさらに進化してほしいなという気持ちは強いですけれども。

──それぞれが悔しさを胸に4年間成長したら、相当、日本代表は強くなるんじゃないかと思います。

今回の大会で何が起こったかというと、ワールドカップ本大会で、ワールドカップ優勝経験国にも勝てるということは、ものすごく大きな自信を掴んだと思うんですよね。今回の経験によって、次回のワールドカップはそのスタート地点が上がりますよね。それが非常に大きい。僕は、そこが、今回のワールドカップで一番大きく掴めたところだと思います。“スタート地点が上がる”ということですね。

──これからの日本代表、楽しみですね。3週にわたる僕たちの旅も終わってしまいましたね。

また4年後、お願いします。
リスナーの方々も本当に、たくさんの応援、ありがとうございました。
この後も、楽しみにしてください。ありがとうございました!

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