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2025.01.25

「自ら考える力を育てる」パリ・サンジェルマンの“育成メソッド”

今週の「SPORTS BEAT」は、元サッカー日本代表、小林大悟さんのインタビューをお届けしました。
小林大悟さんは、1983年生まれ。
清水商業高校からJリーグ 東京ヴェルディ1969へ入団。
大宮アルディージャへ移籍後、当時の日本代表イビチャ・オシム監督に呼ばれ、日本代表デビュー。
その後、ノルウェー、ギリシャ、清水エスパルス、アメリカ、カナダなどでも活躍され、2022年に現役を引退。
現在は、子供たちに指導するなど、さまざまな活動をされています。

──小林さんはJリーグで10シーズン、そして海外で11シーズン過ごされていたということで、今でこそ日本代表というとほぼ海外組になっていますが、小林さんが海外に行かれた時は、サッカー界はどのような状態だったんですか?

僕がプロになりたての時は、代理人、エージェントというものを付けるような世界ではなくて、自分で契約交渉をしたりしていました。
チームに「海外に行きたいです」と言っても、チームとしては、高校から僕をスカウトしているので、海外に出てもらっては困るわけで、当然「NO」なので、チームに来た海外からのオファーは僕に届かないままという時代があったんです。
それが、代理人をみんな付けるようになって、海外との接触もできるようになり、より移籍しやすい時代になりましたよね。

──ある意味、小林さんも“開拓していった組”。

はい。ノルウェーやギリシャとか(でプレーしたのは)、僕が日本人初です。アメリカも、アメリカの大学を出てプロになった選手はいますが、Jリーグを経てMLS(メジャーリーグサッカー)、アメリカ1部でプレーしたのは多分僕が最初だと思います。

──今は海外から日本に来る人も多いですし、指導者も当然経験が豊富になっているでしょうし、早くから海外に行くチャンスも増えてきたということで、日本のサッカー自体も少しずつ変わりつつある?

そうですね。指導者のレベルももちろん上がっていますし、海外の良い部分をちゃんと日本人に合う形で取り入れることができれば、それこそ、生きている間に日本代表がワールドカップで優勝するところを見られるかもしれないという希望に繋がりますけれども。

──そして、Jリーグがいよいよ2月14日に開幕いたします。
小林さんがかつて所属していたチーム、東京ヴェルディは、J1に復帰して、そしてなんと6位に入ったと。そしてJ2では清水エスパルスが優勝してJ1復帰、大宮アルディージャはJ3優勝でJ2復帰と、それぞれのカテゴリーで活躍していますよね。

そうですね。やっぱり嬉しいです。僕は、ヴェルディが2005年にJ2に落ちた時のメンバーなんです。僕はそこで大宮アルディージャに移籍という決断をしたんですが、まず、僕がサッカーを始めた時、ヴェルディの大ファンでして。そのチームに自分いたという…。

──Jリーグといえばヴェルディでしたよね。

なので、ヴェルディはやっぱりJ1にいてもらわないと困るんです。
その上で、よりワクワクするようなサッカーを東京ヴェルディがしてくれたら嬉しいです。

──J2に昇格した大宮アルディージャは、レッドブルとパートナーシップを結んだそうですね。これはかなり大きなことなんですか?

そうですね。レッドブルがグループ化して、“グループとしてリーグで優勝を目指す”ということを掲げていますので、アルディージャは、これから補強をしつつ、J1に戻ってJ1優勝を目指していくと思うので、1年2年でどうこうなる問題じゃないかもしれませんが、必ずそこを目指していくと思いますので、これから変わっていくと思います。

──アルディージャ、注目ですね。
さあそして、J2からの昇格はJ1復帰を果たした清水エスパルス、そして初めてJ1を戦うことになるファジアーノ岡山。やっぱり、初めてJ1に昇格するというのは、選手や監督も嬉しいと思いますが、サポーターの皆さんは嬉しいでしょうね。シーズンパスがクラブ史上初完売したというニュースもありました。
そして、小林さんの現在について伺いたいと思いますが、今は子供たちに指導をされているんですね。

そうです。僕も自分自身が小学校3年でサッカーを始めて、この時期の“本当にサッカーが大好きで夢中になる”というところに携わりたいということは現役時代からずっと思っていました。
そんな中、パリ・サンジェルマンの日本アカデミーが2年前に開校して、そこのテクニカルディレクターという役職をいただいたんです。なので、運がいいことに、引退してわりとすぐ、自分がやりたいものが目の前にありまして。
フランスのアカデミー年代のメソッドというものが特に注目されていて、たくさん本が出ていたりするんですが、メソッドを聞いた上で“これは本当にやってみたい”と思ってすぐオファーを受けたのが、2年前。

──パリ・サンジェルマンと言ったら、名門中の名門じゃないですか。

そうですね。若い選手が下部組織からちゃんとトップチームに上がってくるので、ずっと良いサッカーをする、良いクラブなんです。


──そのメソッドというのは、技術的なことなのか、体力的なことなのか、それとも、いわゆる戦術、“サッカーIQ”みたいなものなのか。どういうものなんですか?

「戦術」ですね。技術的なことは、僕らの昭和の時代は、みんなが集まってコーンを並べてドリブルやリフティングを30〜40分延々とやらされるという時代があったんですが、(そのメソッドでは)そういうことは一切しないんです。「それは自分で家でやってきてください」という感じで、個人的な技術は一切やらないですね。

──戦術的な教えというのはどういう教えなんですか?

戦術の一番最初の段階というのが、例えば“2対1の局面”といいますか、“数的優位”。もちろん1対1でドリブルという場面はあるんですが、“2対1になった瞬間も戦術である”という捉え方をしていまして、「じゃあ、2人で1人の相手をかわすためにどういう距離感でどのタイミングでパスもらおうか」みたいなところから始まるんですが、コーチ陣は決して「ああしろ、こうしろ」とは言わないんです。“どうやったらうまくいくと思うか”をいつも考えさせる。

──「こういう考え方でやりなさい」という押しつけではなく、そういうものを提示して考える力を育てる。

それがまずコーチングである、ということですよね。
良くも悪くも、日本はやっぱり「先生」がいまして、正解を教えてくれる。でも、海外のメソッドというのは「コーチング」なんですね。寄り添いながらいろんな可能性を提示してあげる。それだけで、(日本と海外は)けっこう大きく違うと思います。

──結局、フィールドでは自分たちでやらなきゃいけないし、練習の時からそういう風に育てているということなんですね。より早い段階でその練習というか、メソッド、教えを請うた方がいいと。

はい。僕はそう考えています。
小学校1、2年生を相手に、最初は子供たちも「あれ、大悟コーチは何を言ってるんだろう」みたいな感じなんですが、それも繰り返し続けることで、「こういうことなんだ」と(自分で理解して)身につけていく。その成長過程を見ていて僕もすごく幸せですし、大事なことだなと思っています。
そして、必ずしもプロサッカー選手になることが全てではないじゃないですか。なれない人がほとんどなわけですから。でも、社会に出た時に、サッカーを通して物事の判断というものを培っていたり、例えば会社に入ったとしても、会社のために今自分には何ができるのか、するべきか、そういうことを自分で考えられる大人になってほしいなという願いもあります。

──小林さんのもとで育った選手がこれから日の丸をつけて戦ってくれたら、それは熱いですよね。

そうですね。それは嬉しいことですね。

──この番組は、毎回ゲストの方にCheer up songを伺っています。小林さんの心の支えになってる曲を教えてください。

清水翔太さんの「HOME」という曲です。
歌詞にある通り、自分から町を飛び出して、「俺、やってくるから!」と強気で出たものの、行ってみたら辛いこともある。でも今さら帰るのもかっこ悪いな…とか、そんなことがけっこうあるんです(笑)。ノルウェーへ行った時なんか、まさにそんな感じでした。

──やっぱりホームシックになりましたか?

なりましたね。最初にノルウェーに到着したのが2月の頭ぐらいだったんです。マイナス20度で真っ白なんですよ。僕は何も気にせずに革ジャンとジーパンとコンバースを履いて、そうしたら街中をおじいちゃんたちがスキーの板を履いて歩いている(笑)。全部が間違えてました(笑)。
僕、そういうところがあるんです。あまり気にせず(行動してしまう)。

──でも、そういうホームシックになった時にふと触れる日本語の歌って、すごく沁みませんか?

これを聴きながら、めちゃくちゃ泣きました。

──でも、いつしかそうやって海外での生活が当たり前になっていったわけですよね。

そうですね。こんなに、11シーズンもやると思って出ていかなかったので。気づいたら最後9年はアメリカにいましたし。
自分が思い描いた夢が勝ち取れたのかも最後までわからないまま…。でも、その場に飛び出してその町でサッカーを通していろんなこと頑張れたのはいい経験だなと思います。



今回お話を伺った小林大悟さんのサイン入り色紙を、抽選で1名の方にプレゼントします。
ご希望の方は、番組公式X(旧ツイッター)をフォローして指定の投稿をリポストしてください。当選者には番組スタッフからご連絡を差し上げます。

そして今回お送りしたインタビューのディレクターズカット版を、音声コンテンツアプリ『AuDee』で聴くことができます。
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