小澤琴巳選手は、1998年生まれ。
大学在学中にパデルと出会い、最年少での日本代表選抜、世界大会出場、アジア・アフリカ・オセアニア予選優勝を果たしています。
大学を卒業後、大学病院で看護師、助産師としてフルタイム勤務する傍ら、パデル選手として二足の草鞋で歩んでいましたが、スポーツの道で世界に挑戦したいと、現在は仕事を退職し、パデル選手として世界へ挑戦していらっしゃいます。
──小澤選手が挑戦していらっしゃる「パデル」という競技はどのような競技なのか、説明していただけますか?
パデルはラケットスポーツの中の1つになりますが、テニスコートの半分ぐらいの大きさで、周りが透明な強化ガラスで囲まれています。つまり、箱の中に入ってテニスをしてるようなイメージですね。
なので、前からもボールは来るし、横や後ろからも跳ね返ったボールを利用して相手に返すスポーツになっています。
ダブルスのみなので、コートの中に4人の人間が入ってネットを挟んでプレーします。
──一見テニスコートに近いですが、スカッシュのように壁を利用した攻撃ができるのが特徴ですよね。
そうですね。おっしゃる通りで、立体的にコートを使うので、空間能力がすごく問われるスポーツかなと思っています。
スカッシュは隣に人が立って前に壁があって、壁に向かって交互に打ち合うようなスポーツなんですけれども、パデルは4人なので、2対2で駆け引きをしているようなイメージになります。
──今日は実際にパデルのラケットを持ってきてくださっていますが、やっぱりテニスとはだいぶ違うものですよね。形的には、テニスラケットをちょっと短くしたというか…。
半分くらいの長さですかね。テニスでいうガットの部分はないです。このまま使います。
──ガットの部分が板状になっていて、速く振れるように空気の通る穴をいっぱい開けてありますね。
はい。板状の中はスポンジのような生地をカーボンやゴムでカバーしているんですけれども、空気の抵抗をなくすように穴が開いています。
パデルの場合、ガットで強さを変えることができないので、ラケットの種類によって調整します。例えば、ゴムの種類だったり、中のスポンジの生地だったり、穴の場所だったり、バランスなどですね。どこに重さが来ているかを変えて個体差を出しています。
もう1つ面白いのが、パデルは、特に日本だと屋外のコートの方が多いんです。そうすると、天候によって、ガラスからの跳ね返りとか、ボールの重さとかラケットの当たった感じが(変わってきて)、寒い時は硬くなったり、力が必要になったりするんです。逆に暑い時はガラスからすごく跳ね返ってきたりするので、季節によって違う楽しさがあるところも面白いかなと思います。
──パテルは、ヨーロッパでは既に人気のスポーツなんですよね。
はい。競技自体は1960年代後半ぐらいに始まったんですけれども、スペインではサッカーに次ぐ競技として知られています。
世界的には爆発的に(競技人口が)伸びていて、ヨーロッパを中心に、スウェーデンやデンマークなどの北欧と、あと中東、UAEやカタールで今すごく伸びてきています。追いかけるように今アジアも伸びてきていて、日本だと50コート弱ですね。
──2024年に初めて長期間の世界遠征に行かれたそうですが、それまでは看護師と助産師との二刀流だったわけですけれども、パデルに専念できたというのはどうでしたか?
最高でした。もちろん難しいことや苦労することも多いですが、“今しかできない”という想いと、“アジアで初めて世界のトップに入りたい”という気持ち…もちろんアジアではまだ発展途中なので、“パデルをもっと知ってほしい”という気持ちもありますが、まだやっていないこと、誰もできていないことに挑戦してみたいという想いで頑張っています。
──実際、海外を転戦してみて手応えなどどうでしたか?
日本をベースに世界大会に行ったり、個人で1年に1回や2回海外に行くのに比べて、今回はほぼ1年間(を通して)いろんな国に行けたので、トップ中のトップや、今発展し始めているところのレベルなど、世界各国のレベルを実感できて、実際に“(自分も)いけるんじゃないか”と思うところも多くあったので、来年に向けて頑張りたいと思っています。
──先ほど小澤選手がおっしゃっていましたけれども、パデルはダブルスのみ。パートナーは日本の方なんですか?
今年はほぼ海外の方とペアを組んで試合に出ました。
──いつもペアが決まってるんですか?
決まっていないんです。
──パデルという競技自体がペアを決めない、それとも小澤選手があまり決めていないということですか?
そうですね。ここがまたパデルの難しさであり、面白いところなんですけど、トッププロでも、例えば半年間はこのペアで一緒にやりましょう、1年はこのペアでやりましょうと決めて始めるんですが、オンコートでもオフコートでもずっと一緒に過ごしますし、すごく仲が良くてもコート内で意外と相性が合わないとか、やり取りがうまくできないとか、うまくいかないこともあって、逆にコートではすごく良いけれどコートの外ではあまり合わない、みたいな人もいたりするので、(オンコートでもオフコートでも)全てが姉妹や兄弟、夫婦みたいな近さでできる人と出会うことが一番大事なんです。
──競技として真剣に向き合っているところの相性と、普段一緒にいられるかどうかの相性、2つ大事なものがある。それが合う人に出会うのはすごく難しくないですか?
めちゃくちゃ難しいです。しかも、言語や国籍を超えて出会っていくので。
より高いレベルを目指す時には、より近しい人と出会って一緒に練習もできる環境を作っていけることが一番望ましいです。
──最後に、小澤選手の今年の目標を聞かせてください。
今、選手としては、アジアランキング1位で世界ランク195位になりました。なので、ランキングをキープ、もしくは150位以内に入れるように頑張りたいということと、やっぱりもっと日本でパデルを知ってもらったり、「初めてやりました」とか「もっとやりたい」と思ってもらえるような競技に成長してほしいと思っています。
──世界ランキング195位。世界の中で順位付けされているのはすごいですね。
実は、アジア人で初めてなんです。スペインやアルゼンチン、南米にも優秀な選手が多いので、
──パデルが盛んなところには、そういう選手が出てきやすい土壌がありますからね。
そこをアジア人として突き抜けたいなと思っています。
──この番組は毎回ゲストの方にCheer up songを伺っています。小澤琴巳選手の心の支えになってる曲を教えてください。
レイチェル・プラッテンの「ファイト・ソング」です。
試合前にいろんな曲を聴きますが、この曲は、挫折や難しいことがあっても挑戦し続けよう、夢に向かって頑張ろうと勇気付けてくれる曲なので、この曲を聴くことが多いです。
──大学の時にはアフリカに行かれて医療に携われていたんですよね。
はい。学生団体でアフリカ医療研究会というところに入っていて、アフリカのザンビアに行きました。そこでストリートのチルドレンや保護者に向けて健康教育をしたり、ラオスや他の東南アジアにも訪れて同じように健康教育をしたり、あとは世界機関に訪問したりして勉強していました。
──ものすごくアクティブというか、看護師・助産師も目指されていて、そういう海外での医療にも挑戦されて、さらにはパデルでアジア1位としてランクインされている。だからずっと戦い続けているんだなと。今回お話を伺った小澤琴巳選手のサイン入り色紙を、抽選で1名の方にプレゼントします。ご希望の方は、番組公式X(旧ツイッター)をフォローして指定の投稿をリポストしてください。当選者には番組スタッフからご連絡を差し上げます。そして今回お送りしたインタビューのディレクターズカット版を、音声コンテンツアプリ『AuDee』で聴くことができます。放送できなかったトークが盛りだくさん! ぜひお聴きください!