2011年夏、女子ワールドカップドイツ大会決勝。
なでしこ達は、日本中を歓喜の渦に巻き込んだ。
ここまで、全ての試合が苦しかった。
勝利してもなお、自分のふがいないプレーへの悔しさのあまり、泣き崩れる選手もいた。
奇跡が起こるのには理由があるのだとしたら、なでしこ1人1人の勝ちたいという想いの強さと結束が、奇跡を呼んだのかも知れない。
試合は、アメリカに先制され、なおもアメリカの猛攻が続く。
1点を取らなければ負ける。
追う後半36分、キャプテン宮間がクリアボールを奪うと、左足アウトで叩き込み同点。
執念で延長戦へと夢をつないだ。
延長前半14分、アメリカのエース、ワンバックがヘディングシュートを決める。
アメリカにとっては、完璧な勝利への筋書きである。
残り3分、なでしこはコーナーキックのチャンスを得た。
ほとんどの選手が水分補給を求めたインターバルに、宮間は澤と阪口のもとへ駆け寄った。
「ニア」…3人の狙いは刹那に一致した。
キッカーの宮間が速くて低いボールをニアへ放り込む。
合わせて澤が相手ディフェンダーと競り合いながら、ニアサイドへ走りこんだ。
右足のアウトサイドでダイレクトに蹴りつけられたボールが、アメリカのゴールネットを揺らす。
のちに澤が、サッカーの神様が近くに降りてきたような感覚だったと語る、
まさに劇的なゴールで、流れは一気に日本へ。
PK戦を3対1で制し、なでしこジャパンは、過去24回一度も勝ったことのないアメリカを破り、初優勝を果たした。
絶対にあきらめない心とチームワークで世界一へと駆け上がった21人のヒロイン、なでしこジャパン。
あれから4年、カナダのスタジアムにも、なでしこたちの勝利への熱いビートが鼓動している。