トップゴルファーが熱い戦いを繰り広げ、21歳の新鋭、ジョーダン・スピースの優勝で幕を閉じたマスターズ・トーナメント。
開幕前日に行われた、恒例のパー3コンテストでホールインワンを達成し、観客を総立ちにさせた男がいた。
「帝王」ジャック・ニクラウス。
圧倒的な強さを誇り、史上最多のメジャー通算18勝、マスターズでも最多の6勝という金字塔を打ち立てた。
中でも、1986年のマスターズは最も印象深いとニクラウスは語っている。
「帝王」と呼ばれながらも1980年の全米プロを最後にニクラウスは優勝から遠ざかり、長い不振にあえいでいた。
メディアはニクラウスの限界説を唱え、多くの人がそう思い込んでいた。
しかし、この大会で見事に復活、最年長記録となる46歳でオーガスタを制したのだ。
マスターズまで1か月に迫っていたある日、ニクラウスは、少年時代からのコーチにスイングをチェックしてもらった。
手首に頼りすぎていることと、スウィングのテンポが悪くなっていることを指摘され、残りの期間にスウィングのズレを修正することに全力を尽くした。
3日目を終了した時点で首位はグレッグ・ノーマンの6アンダー。ニクラウスは2アンダー。
しかし、最終日にニクラウスが猛チャージを見せる。
首位に2打差と迫った15番のパー5。
会心のドライバーを放ち、セカンドショットでピンそば3・5メートルの地点に落ちたこれを沈めて見事イーグル。
続く16番、17番は連続バーディ。
なんと、後半9ホールを30というスコアで回って、ノーマンを逆転し優勝。
6枚目のグリーンジャケットに袖を通した。
大方の予想を覆したニクラウスの優勝に、オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブには、観客の声がこう響き渡った。
「ジャック・イズ・バック」