Legend Story
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15.03.28
ダルビッシュ有

日本が世界に誇る右腕、ダルビッシュ有。
彼が甲子園出場のために選んだのは、東北の名門、宮城の「東北高校」だった。

彼の記憶に深く刻まれた大会がある。
高校三年の春に出場した第76回選抜高等学校野球大会だ。

東北高校は優勝候補の筆頭。
しかし、大阪桐蔭戦で肩を痛めていたダルビッシュは、準々決勝の愛媛県「済美高校」戦のマウンドを、2番手の真壁に託す。

東北の先発を任された真壁は、ダルビッシュの影に隠れながらも、二枚看板と謳われるほどの実力派の投手でもあった。

6回から8回まで三者凡退で抑え、尻上がりに調子を上げていた真壁だったが、
9回、最後の意地を見せる済美打線に捕まり、2点を返される。6対4。

ツーアウトランナー無し、1番甘井。
取っていれば試合終了というファウルフライを、セカンドが落球。
そこから2連打で、塁上に2人のランナーを置いて、3番キャプテンの高橋という、一発逆転の場面。
マウンドの真壁は、苦しい表情を隠せない。
レフトを守っていたダルビッシュは、その場で「俺はいつでもいける」と、
アピールするかのように、ピッチングの動作を繰り返した。

見逃しと空振りで、簡単に追い込むが、真壁の表情は依然苦しかった。
ストライクは要らない場面。
外を狙うが、ストレート、スライダーともに制球を乱して中に集まり、ファウルで粘られる。

迎えた5球目、キャッチャーのサインは外角ストレート。
外に構えたキャッチャーミットよりも、ミット1つ分中に入った球を、高橋が打ち返す。
打球は、風に乗ってレフトスタンドへ。
まさかの、逆転サヨナラスリーランだった。
その時、一番近くで、スタンドに突き刺さる打球を見送っていたのは、レフトの守備についていたダルビッシュだった。

1球の怖さ。最後まで何が起こるか分からない野球の怖さ。
甲子園の魔物は、今や日本が誇る世界の右腕となったダルビッシュの活躍を支えている。