1996年7月21日、アメリカフロリダ州マイアミ。
青空が広がり、気温は35度を超えるなか行われた試合は、日本サッカーにとって忘れられないものとなった。
アトランタオリンピック男子サッカー予選、日本対ブラジル。
これが勝負の恐ろしさなのだろうか…。
ブラジルが放ったシュート28本、日本はわずか4本。
しかし、後半に放った1本が、奇跡的な勝利につながった。
0対0で折り返した後半、選手を入れ替えたブラジルが圧倒的にボールを支配。
ほとんどの時間、日本ゴール前で試合が展開された。
ロベルトカルロスの低いセンタリングにベベトが頭で合わせる。
ジュニーニョの強烈なフリーキックが日本のゴールを襲う。
卓越した個人技と、スピードあふれるコンビプレー。
いつ点をとられてもおかしくない展開だった。
しかし、日本はブラジルの波状攻撃からゴールを徹底的に守った。
守護神・川口のファインセーブ、ディフェンダーの鈴木、田中らが身をていして執ようなタックル。
城、服部も相手が持ったボールを執念深く追い掛けた。
そして27分、運命の瞬間が訪れる。
路木がカウンター気味に長い縦パスを城に送ると、城の動きにつられてブラジルのゴールキーパーとディフェンダーが交錯。
この千載一遇のチャンスを、詰めていた伊東がけり込んだ。
1対0で日本が歴史的な勝利。
スタンドの日本人応援団は総立ちで歓声を挙げ、観客席の大半を埋め尽くしたブラジルサポーターは「信じられない」という表情で天を仰いだ。